カササギさんの武器屋
コメントの需要次第でCatch and Releaceの改討版になるかもしれない、試作品です。
*連載するかもしれない作品の番外編。
RPGでありがちな『武器屋さんが仮にこんな奴なら最悪だ』ということに加え、この世界では武器屋は希少な存在であることを頭に踏まえた上でお読みください。
目線は『カササギの武器屋』の店主・カササギさんの元で働いてる、長い金髪が綺麗なエルフのエリシアさんの目線から始まります。
「さて、今日のお求めは何かな?当店・『カササギの武器屋』は最初のステージにて、いきなり序盤ではあり得ない火力を持つ、武器を扱っている。値段は他のところと違い、小生の店は比較的良心的な値段で取り扱っているよ」
私の職は『武器屋店員』。
この世界において、少なくなってしまった『武器・防具屋』で働いてる。
巨大大型モンスター、『ラグナレク』が100年前に姿を現したのとほぼ同時期に自然界には本来は存在するはずもなかった、モンスターが現れた。武具の需要が高まりだし、『武器・防具屋』が大繁盛する中、事件は起きた。
10年前に起きた、『武器・防具屋一斉襲撃』である。
全世界の小さな店から大きなギルド規模の店まで、すべての店が何者かに襲われた。事実、武器・防具屋は元々、強盗とかに職業柄襲われやすいものであったが、その年は『武器屋狩り』と言うものまで行われたという。
武器の生産を独占しようとした、セレスト王国国王アルスバルド四世の仕業だとか言われてるけど、その辺はよくわからない。
モンスターが出現したり、荒れた世に乗じて盗賊やらが増えた世界で、『最も危険な人物』がいるからである。
「……ほう、'変換の杖'を気に入ったのか。そいつあ、良い。通常の何種類物レパートリーがあるからね」
「普通のヤツは何種類くらいなんだ?」
先端が星の形をしている杖を眺める、旅人風の細身の戦士と口端を釣り上げながら、ニヤニヤして商談しているのは、変人だけど恩人のカササギさん。
奇抜な黒い帽子に黒いローブ、燃え上がる炎のように真っ赤で長い髪は目元を隠していて、表情が分かり辛く、先端が尖ったブーツは道化師を思わせ、両手の長い爪は彼に人間離れさせた雰囲気を与える。
軽薄かつ人を舐めているような口調、気まぐれで動き、決して周りに流されることなく、誰が死のうとカササギさんは動揺することがない。
『あんたは血も涙もない!』なんて最初に会った時に言った気がするけど、今となって不思議に思うことがある。
なぜ,私を助けたのかと。
エルフと言う種族は希少で魔力が高く、美しい容姿をしていて、金持ち連中はそんな私たちを愛玩動物のようにする為に捕らえていく。
カササギさんとは私が売られていた市場で出会ったが、私を『盗みに』来た日の夜に聞いたことを今でもよく覚えている。
『どうして、助けに来たの?』
『ん?あぁ、丁度、店員が欲しくてね。なに、そんなに悪いもんじゃないよ?君には看板娘にでもなって貰おうってね。
まぁ、『ハンター』とか『ウォリアー』とかが使う武具の店だが。武器とかは小生が作ればいいし、基本的に君は何もする必要はないよ、ただレジ打ちすりゃいいから。あと、そうだなあ、客に対する接し方云々は口出ししないこと』
『大体わかりました。けど、レジ打ち?なんですか、ソレ』
『あ、すまんすまん』
こんな会話だったはず。
事実、確かに楽な仕事だ。
客が来たら、それをカササギさんに言いにいけばイイし、私は金貨とかを数えればいいし。
……ただ、店番私にやらせて、昼寝するのはどうかと思いますが。
「で、おいくらだ?店主さんよ」
「ああ、買うのかい?……'変化の杖'は無しで、'ミスリルソード'にするのかい?」
カササギさんがそう言うと、銀色の刃光る大剣に触れながら、旅人風の細身の戦士は言う。
確かにミスリルは魔法攻撃やブレスを防げるので、その判断はいいかもしれない。
戦士ならば、だが。
「おいくら?ハッハッハ、ワロスワロス。値段とかねーよ?」
「こんなにも良い武器をタダでくれるのか?」
カササギさんがケケケ、と笑うと細身の戦士の目が輝く。見た限りでは戦士になって、数ヶ月くらいだろう。
まだ幼さの残る顔がソレを告げているし、なによりも目に淀みがない。
次の瞬間、とんでもないこと言い出すカササギさんに比べたら。
「小生はさ、君が果たしてそれにふさわしいか試す義務がある。小生を倒す事ができたら、ソレは君の物だよ、ビギナー戦士くん。小生はね、優しいからさ、初めのダンジョンからでも君達にラクして欲しいから、良い武器とかを揃えてるわけだけど、値段はあえて決めてない。ここで一つ、ゲームをしよう。
勝てば'ミスリルソード'は君の物。負ければ、そうだなーーーーーーーーーー」
「有り金全部置いていけや。もちろん、ゲームだから互いに殺し合いは無しな」
腰から鎖でぶら下げてる鍔のない細身の剣を抜きながら、プレッシャーを放ちつつ、ビギナーに向かってトンデモナイことをサラリと言う、我が店主。
どうやら、今日も日常は変わらないらしい。
『会計』ははじまった様だ。