プロローグ
今回は最後の展開までちゃんと考えて書き始めたので!頑張ってサクサク進めます٩( ᐛ )و
ひとりだと思っていた。
理由はわからない。ただ、そう感じていた。
誰かがそばにいるはずの場所で、いつも心だけが少し遠くにあった。
優しい声。
あたたかい手。
名前を呼ばれる安心感。
どれも確かにここにあるのに、胸の奥だけが、かすかに冷えていた。
——どうしてだろう。
エリシアは幼い頃から、その問いを持って生きてきた。
夜になると、時々、理由のわからない不安に包まれる。
何かを失ってしまう予感。
誰かがいなくなる気配。
けれど、思い出そうとすると、霧の向こうに溶けてしまう。
形のない怖さだけが残って、名前も理由も見つからない。
だからエリシアは、それを「気のせい」だと片づけた。
——私は、幸せだもの。
優しい両親がいて、知的で頼れる兄がいて、
不自由のない暮らしがあって、
そして、生まれつき少しだけ魔力が強い。
恵まれている。
間違いなく。
なのに、心のどこかで、
「ひとりになってしまう」 という恐怖感だけが、消えなかった。
その理由を、エリシアはまだ知らない。
ある日、森で出会った小さな光が、
彼女の人生を、静かに変えていくことになる。
それは、羽の破れた妖精の少女だった。
血に濡れ、呼吸も弱く、
今にも消えてしまいそうな、淡い輝き。
エリシアは考える前にその妖精の少女に手を伸ばしていた。
怖くなかったわけじゃない。
けれど、見捨てるという選択肢だけは、最初からなかった。
自分の胸に、そっと抱き寄せる。
——だいじょうぶ。
そう心の中で呟いた瞬間、彼女の中で、何かが静かに動き出した。
それが「治癒魔法」だと知るのは、
もう少し先のこと。
けれど、このとき確かに起きていたのは、
傷を塞ぐことや痛みを消すことだけではなかった。
ただ——
そばに、いた。
それだけだった。
エリシアは、まだ気づいていない。
この小さな妖精が、
この出会いが、
そしてこの「そばにいる」という行為そのものが、
——忘れていた自分自身へ、
手を伸ばす第一歩だったことを。




