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傷ついた私は、治癒魔法で思い出す

最終エピソード掲載日:2026/01/04
ひとりだと思っていた。

 理由はわからない。ただ、そう感じていた。
 誰かがそばにいるはずの場所で、いつも心だけが少し遠くにあった。

 優しい声。
 あたたかい手。
 名前を呼ばれる安心感。

 どれも確かにここにあるのに、胸の奥だけが、かすかに冷えていた。

 ーーーどうしてだろう。

 エリシアは幼い頃から、その問いを持って生きてきた。

 夜になると、時々、理由のわからない不安に包まれる。
 何かを失ってしまう予感。
 誰かがいなくなる気配。

 けれど、思い出そうとすると、霧の向こうに溶けてしまう。
 形のない怖さだけが残って、名前も理由も見つからない。

 だからエリシアは、それを「気のせい」だと片づけた。

 ーーー私は、幸せだもの。

 優しい両親がいて、知的で頼れる兄がいて、
 不自由のない暮らしがあって、
 そして、生まれつき少しだけ魔力が強い。

 恵まれている。
 間違いなく。

 なのに、心のどこかで、
 「ひとりになってしまう」 という恐怖感だけが、消えなかった。

 
 ある日、傷付き瀕死の状態の妖精の少女と出会い、治癒魔法を目覚めさせた。

 けれど、このとき確かに起きていたのは、
 傷を塞ぐことや痛みを消すことだけではなかった。

 
 エリシアは、まだ気づいていない。

 この小さな妖精が、
 この出会いが、
 そしてこの「そばにいる」という行為そのものが、

 ——忘れていた自分自身へ、
 手を伸ばす第一歩だったことを。
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