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06.初めての戦闘

<メッセージ>『戦闘支援モードを開始します!【身体能力MAX】【動体視力MAX】【全魔力解禁】【全魔法自動発動許可】!!!』


 ロキアの右前脚が、俺の顔面を狙って振り下ろされる。

 

 俺は後方に跳んだ。


 ロキアの鋭い爪が、俺の鼻先をかすめるのが見えた。


「ずざざざざぁーーーーー!」

 空中でトンボを切り、ロキアから10メートル程離れた位置に、低い体勢で着地した。


 休む間もなく、ロキアが俺との距離を詰める。


 牙と爪の連撃で、俺を仕留めようと荒れ狂う。


 全ての攻撃を回避しながら、俺はリリスの姿を探す。


(おまえの紹介の仕方が悪かったせいで、こんなことになっちまったんだぞ! 早く、どうにかしろよ!)


 いつの間にか、俺とロキアから離れた木陰にイスとテーブルが用意されていて、リリスが優雅にお茶を呑んでいた。

 傍らには、黒いドレスアーマーにロングソードを身に着けたオークニーが立っている。

 シャルロットは、ティーワゴンの後ろで、心配そうに戦況を見守っていた。


(あの悪魔がぁああああああああ!)


「魔王ともあろうお方の全力が、それ? よけてるだけじゃ、ボクを倒せないよ!?」

 ロキアが、ナメきった口調で言う。


「確かにな……」

 俺はボソッと呟く。


 リリスは俺たちを止める気はない。

 というより、戦闘が起こるように仕向けていた。

 俺の能力を見極めるためだろう。

 それならば……。


能力(ちから)なんて、自分でも把握してねぇんだよ! どうなっても知らんぞぉおおおおお!!!」


 今度は、俺が一気に距離を詰めた。

 待ち受けるように、正面から噛みつこうとしたロキアの牙を躱し、こめかみに拳を叩きこんだ。


「――っ!!!」

 ロキアが声にならない声を上げる。

 前脚の膝が、ガクンッと折れる。

 たった一撃で動きを止められたことが信じられない、という目をしている。


(心配すんな、おまえだけじゃない! 俺だって信じられねぇええええええええ!!!)


 ロキアの鼻先に蹴りをぶち込む。

 眉間、瞼、頬、アゴに拳と蹴りを入れ続けた。


「――っ調子にのるな!」

 ロキアは地面を転がり俺から離れると、高く跳び上がる。

「死ねぇえええええええええ!!!!!」


 大きく開け放たれたロキアの口から、巨大な火球が放たれた。


『防御障壁を展開します!【アイギスの盾】!!!』


(――!? アテナの防具の名前なんかつけて大丈夫? 怒られたりしない?)


 ネーミングの問題はさておき、火焔は魔法障壁によって阻まれ、俺に少しの熱すら感じさせることなく消滅した。


「……そんな、ありえない!」

 一切のダメージを負っていない俺を見て、ロキアが呟く。


「もうこの辺にしないか? これ以上やったら、本当に死ぬぞ」


「ふざけるな! 誰がお前なんかに……」


『せっかく作った農地がこれ以上、荒らされないよう捕縛します。【グレイプニル】!』


 地中から幾つもの鎖が出現した。

 ロキアの四肢、胴体、頚に絡みつき、動きを完全に封じる。

 

「――いくらもがいても、その魔法の鎖は切れない。かつて、フェンリルの始祖を拘束するために神々が作り出した魔法の紐の進化版だ。【猫の足音】【女の髭】【山の根】【熊の腱】【魚の息】【鳥の唾液】という元々の素材に加えて、紐に絡んでいた【フェンリルの体毛】が使われてる」

 頭の中に流れてきた解説を、そのまま口にした。

「……てか、お前ってフェンリルだったんだな」


「そこまでじゃ!」

 いつの間にか、リリスが俺の横に立っている。

「ロキアよ、お主の負けじゃ。いい加減、認めよ」


「――くっ!」

 固く閉じた目元から涙がこぼれている。

 動物愛護団体が見たら、きっと俺を八つ裂きにするに違いない。


「確かに、俺は元人間だ。そんなヤツが魔王だなんて認めたくない気持ちはよくわかる。だから、俺の配下にならなくていい」

 ロキアを拘束している鎖を消した。

「俺は、ルシファー様に『魔族が幸せに暮らせるようにして欲しい』と頼まれて、ここにいる。規格外の力も授けてもらった。でも、俺一人の力で出来ることなんて、たかが知れてる。だから、友人として協力してほしい。全ての魔族が幸せになれるように……」


 ロキアの身体が小さくなっていく。

 それと同時に、濃い霧のようなものが全身を覆う。

 

(――??? えぇえええええええ!!!)


 白い靄が晴れた時、そこにフェンリルの姿はなく、中学生くらいの短髪女子が立っていた。

 狼のような耳に白銀のふさふさとした尻尾、ハーフブーツにショートパンツ、タンクトップの上にボレロを羽織っている。


(お、女の子だったのか……)


「……ふ~ん、そういうことなら、まあ……協力してあげてもかまわないかな。……あっ、だからって! ボクはキミを魔王様だなんて認めてないからね! そこんとこ勘違いしないでよね!」

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