27.魔王城にて①
その日の朝、炊き立ての白いご飯に大根の味噌汁、牛のしぐれ煮に卵焼き、そしてキュウリの漬物という幸せな食事をいただいていると、不意にベルゼブブが言った。
<メッセージ>『海洋都市国家アルデバランで大規模地震が発生。被害は甚大。助けを求めて、国王が悪魔を召喚中。応じることを推奨します』
(どうしてだ? ……いや、助けに行くのがイヤとかじゃなくて、ベルゼブブが推奨している理由が知りたい)
『現在、ジャングリラで消費されている塩は、霊峰ゴモラから採掘される岩塩ですが、人口の増加などを考えると、遅かれ早かれ枯渇するでしょう。アルデバランは塩田で塩を作っています。助けておいて損はないでしょう』
たしかに、ほとんどの生物にとって塩は必要不可欠。
ジャングリラの為にも被災地支援に向かうことにした。
大急ぎで食事を平らげ、席を立つ。
「ちょっと出かけてくる」
卵焼きは甘い方がいいか、しょっぱい方が正義かで論戦を繰り広げいたリリス、ロキア、緋魅狐、アモンが一斉に俺を見る。
「サタンくん、ゴメン……。ちょっと五月蠅かったかな? これからは静かに食べるよ」
ロキアがシュンとする。
「ちがう、ちがう!」
俺は慌てて否定した。
「五月蠅くなんてなかったし、みんなでワイワイ食事するほうが楽しくて俺は好きだ」
「……では、どちらに?」
と、アモン。
俺は事情を話した。
4人は神妙な面持ちで、フムフムと耳を傾けている。
何故だか嫌な予感がした。
そして、それは的中した。
「よし、妾も行こう! サタンは悪魔の契約のやり方を知らんじゃろ? 妾が代行してやる」
「私も同行いたします! 海沿いの国であれば、クラーケンやシーサーペントが現れるやもしれません。その場合、空からの攻撃が効果的です。ドラゴンである私ならば、きっとお役に立てます」
「そんなレアな魔獣、そうそう出現するわけないじゃん! 警戒すべきなのは、絶対数の多い半魚人だよ。そいつらが陸に上がってきた場合、地上最凶の機動力と恐れられたボクの出番さ。瞬殺してみせるよ!」
「大地震が起こったということは、怪我人も大勢いるんでありんしょう。魔王様の契約が少しでも有利に運ぶように、アチキが治癒をいたしんしょう」
(……な、なんか大事になっているんですけど!)
一刻を争う案件かもしれないので、押し問答を避け、全員を連れていくことにした。
転移魔法で海洋都市国家アルデバランを目指す。
ウィンドウの地図上に、赤いピンマークがあった。
<メッセージ>『召喚魔法が行われいる場所です。選択すれば、召喚者のいる部屋へ転移できます』
「みんな、俺の側に来てくれ」
四人が俺にピトッとくっついてきた。
「……いや、そんなに近付かなくても大丈夫なんだが……」
「ごちゃごちゃ言わずに、さっさと転移せぬか! 助かるはずの命も、手遅れになるぞ!!」
リリスの言う通りだ。
俺は転移魔法を発動した。




