11.最後の四天王、古代龍・アモン
戦闘訓練を初めて十日が経った。
<メッセージ>『【カラドボルグ】!』
俺の掌が発光――。
光は剣の形となり実体化する。
しっくりと俺の手に馴染む。
まるで自分の躰の一部かと勘違いするほどに。
『神龍の爪とオリハルコンによって作られた魔剣です。伸縮自在の刀身、魔力伝導率が高いので、炎・雷・氷・闇などの魔法を付与した攻撃も可能です』
「ゴァアアアオオオオオオ!!!」
地竜が威嚇の咆哮を上げる。
白亜紀の恐竜、トリケラトプスみたいな外見だ。
体長は15メートル以上か?
ベルゼブブ曰く『毒息に注意』らしい。
「【身体能力MAX】【動体視力MAX】【全魔力解禁】!」
相手の出方を伺いながら、少しづつ距離を詰める。
威圧感がハンパない。
地竜が一気に動いた。
魔剣・カラドボルグを、地竜の前脚めがけて一閃する。
伸びた刀身は、何の抵抗もなく丸太のような2脚を切断。
地竜は大地に顔をメリ込ませるようにして倒れた。
立ち上がろうとするが、前脚の下肢を失った状態では不可能だ。
苦しませないよう、どどめを刺そうとした時――。
閃光が地竜に向かって降り注いだ。
『【全魔法自動発動許可】【アイギスの盾】!!!』
俺の全身を包むように、防御障壁が展開される。
「ズゴォオオオオオオオオーン!!」
雷が地竜に直撃。
衝撃波、爆風、土煙が俺を襲う。
魔法の盾のおかげでダメージはない。
「【第三の眼】!」
透視能力で土煙の向こうの景色を見る。
地竜は黒焦げになり、ブスブスと煙をあげていた。
「貴様が噂の新魔王か?」
威圧感のある声が、上空から問う。
見上げると、地竜の倍はあろうかという巨龍が射るような眼で俺を見ていた。
「アンタが噂のアモンだな?」
沈黙。
そして、睨み合い……。
「【飛翔】!」
俺は12翼をフルに動かし、一気に上昇した。
「ドゴォオオオオオオオオーン!!」
さっきまで俺がいた場所に火柱が上がる。
とてつもない威力の火球だ。
「落ち着け、アモン! まずは話し合おう!」
「笑止! 話し合いで、どちらの力が上かが分かるとでも?」
巨体に似合わず、アモンの動きは素早い。
だが、脅威を感じる程でもない。
俺はアモンの腹の下に回り込むと、カラドボルグを突き上げた。
伸びた刀身の切っ先が、アモンの腹から背中へと突き抜ける。
「グッ……!」
うめき声を上げて、アモンが全身をよじる。
圧倒的な力に耐えきれず、俺の手からカラドボルグが引き剥がされた。
魔力の供給が途絶えた為か、カラドボルグの刀身が短くなって、アモンの躰から抜け落ちる。
落下する剣をキャッチした俺に、尻尾の鞭が飛んできた。
「【アイギスの盾】!」
アモンの尻尾が、俺を覆う球体の防御壁もろとも吹き飛ばす。
(……えっ? 俺、凄いスピードで弾き飛ばされてる?)
『いまのケースでは、球体型ではなく壁型の障壁を発動すべきでした。壁型だと、地中深くにまで障壁が展開され、それがアンカーになりますので、アモンの一撃も完璧にブロックできました。しかし、空中での球形障壁はどこにも固定されていないので、自然界の法則に則り、力が加えられた方向に弾かれます』
「そういいう大事なことは、早く言えェえええええええええ!!!」
『マスター、これも勉強です』
「ドォオオオオオオオオーン!!」
山の岩肌に叩きつけられ、ようやく止まった。
(もしかして、死んだか?)
と思ったけれど、ダメージはない。
防御結界の中の空気が、エアバッグのようなクッションとなり、俺を衝撃から守ってくれていた。
『追撃が来ます! 回避してください!』
防御結界を解除し、急上昇する。
「ゴォオオオオオオオオ!」
山頂が業火に包まれる。
特大の火球を放ったようだ。
「――かかったな! これで終わりだ!!」
アモンが言う。
俺の動きを読んでいたのだろう。
頭上から雷が降ってきた。
俺の腕が勝手に反応した。
カラドボルグで雷を受け流して、軌道を変える。
「【雷霆】」
雷と、雷で造られた無数の槍がアモンの全身を貫いた。




