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バッドランズ・グレイアウト/モブ社畜、呪物を売る裏社会企業に転職し社長(♂)に恋をした結果、屍人転生する  作者: 梅屋凹州
一章

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1章6話・1

 東雲十三は、地獄をさまよう。


「……また、死体……」

 十三は、呻いた。口を出た言葉には絶望も恐怖もなく、ただ疲労だけが滲んでいた。


 十三の進路上、廊下の先に、焼けた遺体が転がっている。


 炭化した完全な黒焦げではなく、赤く生焼け状態になった遺体だ。片腕が上へ伸びているのは、身体が縮むことによる焼死体の特徴だと、映画かドラマで見た覚えがあった。


 遺体の下には、赤い絨毯よりもさらに濃い色の赤が広がっている。

 血だ。


 ミディアムレアのステーキみたいに、死体の下に広がっている濁った血。生きながら焼かれた死体にも血は出るのだろうか? 


 ──こんな状況で、益体もない疑問が十三の頭に浮かんでいた。きっと、脳みそが現実逃避を始めているのだろう。他人事のように、十三はそう思う。


 遺体は、服も髪も焼け焦げて、性別の判別がつかないが、腕時計だけは焼け残っていた。十三が、賞与を貯めていつか買おうと夢見ていた、海外ブランドの高級腕時計だ。


 ──どんなにカネ稼いでも、どんなにブランド品を着ても、死んじまったら、意味がないんだな。


 そう思ったきり、十三は死体から視線を外した。それ以上、死体への興味はなくなっていた。死者を悼もうという気持ちさえなくなっていた。ここに至るまで、あまりに多くの遺体を、十三は目にしてしまっていたので。


 十三は遺体を避けながら、廊下にあるドアの一つを、すがるような思いで開いた。


 そこは倉庫らしい簡素な小部屋だった。掃除用具や工具などが無造作に置かれているだけで、窓もなければ他の部屋へと続く戸もなく、完全な行き止まりになっていた。


 ここも、階段ではない。


 地上への出口は、まだ、見つからない。


「…………ハズレか……」


 十三は落胆してドアを閉めた。


 もつれるような足取りで、ひとり、また廊下を歩きだす。あるかないかもわからない出口を、探すために。


 ──あの騒ぎから、一体どれほど時間が経っただろうか。


 ひとりの男を発端とする、怪異殺戮劇。


 オークション会場で突如として始まった怪異は、多くの人を無差別に殺めはじめた。


 男も女も老人も外国人も、みな平等に殺された。


 多くの人々は、逃げ惑うばかりだったが、なかには抵抗する者もいた。隠し持っていた銃器や刃物、会得していた護身術、ありとあらゆる手段を駆使して、異形のダルマへの抵抗を試みた。そこらにあるテーブルや椅子を投げつける者もいた。みんな、生き残ることに、懸命だった。


 だが、あの怪物には、すべて無駄なことだった。


 村田マサオと呼ばれたダルマ姿の怪物は、抵抗した人間を嘲笑うかのようになぶり殺し、噴出した自らの血で、人間を生きたまま炎へと変えた。


 炎に巻かれた人々は、物言わぬ死体と化す者がほとんどだったが、新たな化け物に変わる者もいた。吹き飛んだ首元から炎を吹き出した、さながらトーチ人間となって、新しい犠牲者を求めてさまよった。ありきたりなゾンビ映画みたいに──起こっていることは、ゾンビ映画と遜色ないぐらいに悲惨だったが。


 その光景を目の当たりにしていた十三は、とうとう進退窮まり、必死の思いでオークション会場から逃げ出した。出口を探して、必死に走り続けた。


 だが、どれだけ探し歩いても、出口は見つからなかった。


 非常口の緑色の灯りすら見つけられず、いくつもの扉を開いても、地上に繋がる階段が見つからない。どういうワケか、脱出口が、どうしても見つからないのだ。


 出口を探して歩き、また探しては、見つけらず。


 そしてまだ、十三はここにいる。

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