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冒険者

 しばらくして、僕たちは件の川までやって来ていた。


「ここじゃちょっと日当たりが悪いか…。」


『そうなの?』


「ああ、上流の方に行きたいんだが…。」


『どうかしたの?』


「いや、空から探すのもありと言えばアリなのだけど…それだと味気ないしな。」


『味気ないって…早く見つかるに越したことはないんじゃない?』


「そうと言えばそう。だけど、僕は珍しいものが好きだからね。歩いていきたい。」


『変わってるね。』


「さて、そこでだよ。」


『?』


「君、身体大きくない?」


『なっ!?竜なんだから当たり前でしょ!!』


「歩きで行くにはすごく不便だと思わない?」


『まあ歩いていくなら。な、何企んでるの?』


「ずばり、君も人間に成らないか?」


『…はい?』


「要は人間の姿欲しくない?ってこと。案外そっちの方が便利だぞ?」


『べ、別に私はこのままでもいいし!』


「うまい手料理が食えるぞ?」


『うっ…。』


「うっかり尻尾を大木にぶつけるとか無くなるぞ?」


『そ、そんなこと言ったって。』


「雨風にさらされること無く眠れるぞ?」


『………お願いします。』


 良かった。懐柔成功だ。実際、こいつと共に行動していたらすごく目立つ。真っ黒なワイバーンとか普通恐怖の対象でしかない。そんなところを人に見られたら………僕は間違いなく人かどうかを怪しまれることになる。まあ、こんな森の中に住んでる時点でヤバイか。


「さて、じゃあ始めよう。」


【変化術式】


 その竜の足元に巨大な魔方陣を構築する。


【分解】


 その詠唱でまずは竜の身体が光に包まれる。


【再構築】


 それと共に今度は人の形へと、姿を変えていく。物の数分とかからない内にそれは終えられた。

 その姿に目を奪われる。白い髪に赤い瞳。透き通った肌。


「おお…!」


「お、おう。」


 しまったな。


「すごい!すごいな!これ!!」


 ぴょんぴょんと跳び跳ねながら喜ぶ《《彼女》》。それと共に大きなそれもぶるんぶるん…おっけ、服作ろ。


 さて、見繕った今風のそれっぽい簡素な服。


「人間も大変なんだね。」


「他人事だな…。」


「事実そうですし。」


「まあいいさ、とりあえずはな。」


 まさかメスだったとは…。いや、声やら口調で判断できたな?僕のミスだ。何より服のことも考えてなかった。これから術式組むに当たってそこも考慮しなくては。にしても...……。


「どうしたの?じろじろこっち見て。」


「いや、わりと顔整ってんなって思って。」


「…へ?」


「どんな声だよ。ほら、さっさと行くぞ?」


「え?ちょ、ちょっと待ってよ!」


 そうして、彼女と2人川沿いを歩く散歩道。綺麗だ。水も、草花も...何もかも。待ち望んでいたスローライフと言うやつである。さてさて、ここから例の薬草を見つけれるかどうかだ。そんでもって、家の周辺環境に適応させなければならない。まあ、そこん所はどうにかしよう。


「そう言えばさ、君は名前とか無いんだよな?」


「そうだな。」


「なんて呼んだらいい?」


「ワイバーン?」


「まんま過ぎるし、他の奴と混ざるだろ。」


「えー、じゃあイールが決めてよ。」


 ワイバーン…名前…赤い瞳…。


「ルージュ…。」


 そう呟いた。


「ルージュ…?」


「別のが良かったか?」


「ううん!ありがとう!!」


 そう言って彼女は笑って見せた。心なしか、少し頬が赤くなって見えた。まあ、喜んでくれたなら僕としてもありがたい限りだ。


 そうして、川沿いに登り続け数時間。


「無いね。」


「無いな。」


 僕らは木陰で休憩をしていた。まあ、あると言う確証はなかったし当然か。


「低木が多くなってるからもうそろそろ見つかってもよさげなんだがな。」


「まあ、そんなに焦らなくてもいいんじゃない?」


 そう言うと彼女は僕の肩に頭を預ける。


「まあ、それもそうか。」


 しかしどうしたもんかな…どうやって人間らしい生活をしていこう。なんて考えたときだった。


「おい、あんたら!!ここをどこだと思ってるんだ!?」


 そちらを向くと、それなりの装備を備えた男女数名から成る集団。さてと、どう乗りきるか。


「じ、実は僕たちは駆け出しの者で…ある薬草を取りに来たんだけどなかなか見つからなくて…紫色の花を咲かせる薬草って生えてないですかね?」


 さあ、苦し紛れだがどうだ?


「紫色の花を咲かせる…?ああ、魔力回復薬を作るあの薬草か。それならもう少し上流にある。なんなら、案内しようか?」


 よし、乗りきれた上に有益な情報も手に入れることが出来た。


「いいんですか?お願いします!!」


 その誘いを断る理由もなく、僕たちはそのパーティに一時的ではあるが加わるのだった。

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