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おてんばの行方

 城下が騒がしいと気がついたのは、私がメイ様を探し回っている頃のことだ。日もかけてきた辺り、彼女が城を飛び出し数時間が経過していた。


「なんだ…このざわめきは。」


 少し嫌な予感がする。騒ぎのする方へと急ぐ。念のために、あの本を取り出しておく。だが、仮に本命イールと対峙でもすれば…意味はないだろう?


 群衆を掻き分け進む。そこに居たのは…メイ様を抱えた男の姿だった。この男はいったい…それよりもメイ様はどうなった?


「メイ様!!」


 呼び掛ける


「ああ、あんたがこの子の知り合いか?」


 雰囲気で感じ取る。ただ者ではない。まさかこいつが…。


「いやぁ、急に倒れられたもんでどうしようかと思ってな。多分しばらくすれば起きるさ。」


「多分では困るのだが…。」


 敵意はないようである。


「ともかく、知り合いが居て助かった。」


 そう言うとその男は、メイ様をこちらに預けた。その男の言う通り、眠っているだけのようで安心する。


「あぁ、少し聞きたいのだけど…こいつはいったいどこで手に入れたんだ?」


 そう言うとその男は1本のナイフを取り出す。


「それは…?」


「そこのおてんばが持ってた。」


「メイ様が!?」


 私も見たことのないナイフだ。いったいどこから…それに少し禍々しい魔力を感じる。


「まあ、知らないなら知らないでいい。良ければちょっと預かろうと思ってな。」


「なぜおまえが…?」


「出所を知りたくてな。こいつは下手をすれば世界を終わらせる代物だ。」


「ならなおのこと看過はできん。」


「そうか…ならひとつだけ、これだけ守ってくれ。こいつを使って人を殺すんじゃないぞ?」


「どういう忠告だ…私は殺しなんてしない。」


「あんたもそうだが、そこのおてんばにもな。そいつ、破滅願望があるみたいだ。」


「はあ、何かやらかしたか?」


「まあ、盛大にな。」


「それはすまないことをした。」


「それじゃ、僕はこれで―――――。」


「待て、おまえ、名前は?」


「ああ…イール。」


 イール…やはりこいつが。


「もう少し、お話をしたいのだけど、よろしいかしら?」


「おや、急に態度が変わったね。」


 下手をすればこの世界が今、終わる。


「僕について…何を知りたいのかな?」


「ここだと少し一目が多い。」


「それもそうだね。」


「了承と見ていいね?【心界顕現】」


 こいつと話をするのであればここしかない。そうして、私はイールをその世界に持ち込むことに成功したのだった。



「いや、しかし...酷くないかい?」


「何がだ?」


「どうして僕が縛られなきゃならんのさ?」


 捕縛し、吊り上げられた彼はそう言う。


「いいか、君は我が国において最も危険と見なされている人物だ。私の心理世界と言えどこのくらいはする。」


「心理世界ねぇ…まあ、いいさ。何を知りたい?」


「単刀直入に言う…おまえは世界を滅ぼす気はあるのか?」


「あるわけねぇよ。人殺しはもう勘弁だ。」


「…今まで何人殺した…?」


「さあ?」


「…呆れた…。」


「まあ、君も知らんだろうから僕の全てを話してやろう。突拍子もない話だが信じてくれるかい?」


「…話せ。」


「まず、僕は6000年前の世界から来た。」


「な、なんだと!?」


「まあ、そんな反応になるだろうね。何せこの世界では1000年前以降の文献はほとんど残っていない。それは1度文明が滅んだから…らしい。」


「そんな…。」


「まあ、これは僕も先ほど知ったことだ。それで6000年前、僕は魔術の神と呼ばれていてね。いろいろな宗教の派閥に捕らえられては偶像にされ、兵器として扱われてきた。」


「兵器だと?」


「ああ、それでいくつもの命を消してきた。」


「…。」


「無論耐えられる話じゃなかったんでな。こんな未来まで逃げてきたと、そう言うわけだよ。他に質問は?」


「…い、いやいや、情報が多すぎる…。」


「だろうな、まあ、信じようが信じまいがそれは君たち次第だ。僕は好き勝手生きるって決めたんでな。誰の味方でもない。」


「ま、まあ、事情は解ったが…にわかには信じられん。」


 いや、でも冷静に考えれば私も異世界転生してるし…6000年前の神みたいな人が居てもおかしくは無いのか…?


「それでいいさ。」


「…なら、もう1つ聞いていいか?」


「何なりと。」


「先のナイフ…あれはなんだ?」


「何でも1000年前の戦争の残骸らしいな。あれだけはきちんと保管しておけ。とんでもないことになるぞ?」


「わ、解った。忠告感謝する。」


「さて、君が聞きたいのはこの辺かな?」


「あ、ああ…。」


 終始圧倒である。これがイールと言う男か…。


「まあ、また何かあったら言ってくれ。僕らは飛竜の森の奥に居るから。」


 そう言うと、イールはまさかの一言を呟いた。


「【解除】だ。」


 呆気に取られたが…私の心理世界はそれにより解除された。これがイールと言う男の実力…圧倒的強者。


「あれは勝てないな…。」


 メイ様を抱えながら、彼の背中にそう呟くのだった。

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