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死と再生

『我ならば、この森の魔物の大半を使役することが出来る。それを利用すれば貴様が王になる未来もあるやも知れんぞ?』


 姑息な竜だ。だけど、一理ある。私がこの竜を悪役に仕立て上げることが出来れば、皆私を敬う。そうすればきっとあの人も...。


「………解りました貴方と―――――。」


 その時だった。


「何をしている?貴様ら?」


 どこから現れたのか…その少女の声は響いた。直後、本能が上だと叫んだ。


『「!?」』


 見上げると同時に、目の前の巨体は潰れる。何が起きているのかさっぱり解らない。


「バカ兄貴…ついに人を誑かすところまで来たか。そこまでして力が欲しいとは…貴様こそ本当の蜥蜴だな。」


『くっ…。』


 少女は空から舞い降りてくる。目の前のそれは悪魔か何かか…そうして思い出す。ルージュの存在を。


「この女がルージュ…。」


「ほう、小娘…私を恨むか…いや、恨んでいるのはこの世界その物か。」


 そいつは私の心のなかを見透かしたように聞いてくる。何者なのだろう?竜のことを兄と呼んでいるが…明らかに人間の少女。


「ワイバーンさん…あれは?」


『我の妹だ…奴が来る…。』


 奴とは誰だ?まさか…。


 久しぶりにその男の声を聞いた気がした。私を守ってくれた私の王。私の希望。


「また暴れてんのか…お兄さん。」


 その希望と悪魔は…並び立っていた。


「と、言うか普通の人もいるし…離れた方がいいぞ?」


「あ、ぁあ…。」


 嬉しかった。再び会えたのが。言葉にもならなかった。


「さて、私が話があるのはおまえだよ。なんでまだここにいるんだ?」


『そ、それはおまえが心配で…。』


「バカが。おまえは私に1度も勝ったことがないだろ!!」


 魔力を帯びた怒号。耳が壊れそうだ。だけど、私にそんなことは関係ない。ああ、この高鳴りは今から起こるとてつもないぶつかり合いによるものなのか、それとも希望に恋したが為のものなのか。


「イール様…私のお願いを聞いていただけますか?」


 か細いながら叫んだ。辺りはただのカオスであった。でもそれももう終わる。


「なんで僕の名前を…?」


「この世界を…滅ぼして!!」


 そんな願いを口に出した。

 思えば、私に自由など無かった。ならばいっそ、世界を1度滅ぼして…私の思うがままに作り替えればいいのだ。それこそが私の希望。それをなし得るのがイール様ただ一人。


 竜の喧騒は止んでいた。イール様はただこちらを見下ろしている。


「いやぁ、何を言われるかと思えば………6000年経っても人の愚かさってのは変わらないね。本当…。」


「え…?」


「世界征服だの世界平和だの、突き詰めればそれは人を根絶やしにすること。そうやって僕は兵器になって道具になって。」


 6000年…?


「今まで…どれ程の命を消してきたことか…それに縛られないためにここまで来たのにさあ…がっかりだよ。お嬢さん。」


 私を見下すその目は明らかに怒っていた。


「まあ、もう僕は自分のためにしか力を使わないって決めているんだ。君なんかの言いなりにはならない。」


 なんてまた笑って見せる。私が呆けていると、イール様はルージュの方を向いた。


「さて、ここも離れた方が良さそうかな。」


 振り返り様に、イール様はこちらを睨んだ。


「僕らに害を成そうって言うのなら僕は殺しも厭わないよ。」


 私の希望はその言葉で絶たれた。私はどこまで行っても孤独なのだ。


「なら…私は…。」


 いつも言っていることだ。手に入らないのであれば、私は死ぬ。

 いつも欠かさず携えている短剣を手に取る。


『ば、馬鹿!』


 反応したのはその黒竜だけだった。だけど、その言葉も虚しく私はその短剣を首に突き刺したのだった。


―――――――――――――――


 傲慢な人間の気配は消えた。だが、その時知ることとなる。そのなかに潜んでいた更なる欲の塊を。背後で感じるだけでも解る。あいつはとてつもない魔力を封じられていたのだ。


「…暴走か?」


 いいや、違うだろう。チラッとそちらを振り向く。

 首に突き刺さった短剣。人間であれば死んでいる。なら何故、その娘は血の涙を流し立っている?それにこの魔力量は?


「ちょっとこりゃ不味いな。」


 放っておけば僕らの生活どころの話ではなくなる。


『だからやめろと…。』


 お兄さんにはあれの中にいた何かが見えていたのだろう。


「あれは…何…。」


 おおよそ人の物ではない膨大な魔力。ルージュも解っていない様子だ。

 人智を越えたそれは僕に向かい地を蹴ったのだった。

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