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いざ、遥かな未来へ

 僕のためだけに作られた神殿。誰も僕には逆らえない。だからと言って、僕はそんなことは望んでいない。

 イール·マギア。今を生きる魔道の神と称される存在。実際はただの人間である。僕だって普通に生きたい。もう普通には戻れないんだろうけどな。

 僕がこの時代、この世界でやっていることなんて恐怖支配の魔王でしかない。

 それもこれも、この世界から争いを失くすため。皮肉だよね。それを突き詰めていったら結局人類の選別をすることになっちゃったんだから。

 力を手にするって言うのも大変なもんだよ。正直疲れたし、何より飽きた。

 神として崇められるとか御免なんだよね。性分じゃない。何より、結局のところ僕はただの人殺しだ。きっと、後世に悪名を残すことになるだろうな。


「…後世行くか!」


 こんな荒んだ生活とおさらばすることが出来るのであれば、それが1番だろう。それに何より、僕の持っている知識が一般普及した時代まで行けばちょっと優秀くらいに見られるんじゃ無いだろうか?


「我ながらこれは天才だな。」


 そうと決まれば即行動。それが僕と言う人間だ。


「大体………6000年くらい先でいっか。」


 適当に決めたけど…まあ、大丈夫やろ。僕の周りに魔方陣が展開される。


「ではでは、ほんのちょっとの間おやすみ世界。」


 閃光がほとばしり、その時代から僕と言う存在は消滅したのだった。


―――――――――――――――

――――――――――

―――――


「あ、あれ~…?」


 転移のしどころが悪かったな。民衆のど真ん中。警戒されにされまくっている。だが何より思ったことがある。文明の進み具合がいくらなんでも遅すぎる。確かに、僕がいたのはこう言った整備された路も無いような荒れ果てた時代であった。だが、家の作りや街並みの変化が乏しい。幾分かマシと言う程度。衣服は随分と変わったようだが…それは僕らの時代のものがあまりにも簡素だからであって…6000年と言うのはこの程度の時の流れだったのか?

 まあ、考察はあとだ…ともかく今は。


「お、お構い無く…。」


 逃げの一手である。とりあえず姿を消した。さて適当な人混みにでも紛れ込むか。服もこの時代のものに再構築してしまおう。そんなことを走りながら考える。

 途中、僕が現れた場所に向かう鎧に身を包んだ集団にであったが…あれがこの時代の自警団なのだろうか。追われる身か…幸い、顔は割れていないだろう。あの路地裏で透明化を解くとしよう。


「やめてください!!」


 路地裏に入って1番、そんな声が聞こえた。見てみると、女の子が服数人の男に絡まれている。


「ちょっとくらいいいだろう?」


 うわぁ、最低。ま、どの口が言ってんだって話か。


「あんたら、何してんの?」


「あ?なんだてめぇ?」


「質問してんのは僕だ。答えろ。」


「なんだっていいだろ?邪魔だからどっか行ってろ。」


 リーダー格の男がそう言う。


「まあまあ、そんな怒んなって。その娘、嫌がってるじゃん?」


「チッ、ごちゃごちゃうるせぇな?お前らやっちまうぞ!」


 なんとまあ血の気が多いこと。ま、罪滅ぼしにもならんか。こんな人助け。


「5対1、ねぇ…。」


 そう呟いて、僕はその眼前まで迫った拳を受けた。


「っ~~。いいねぇ、いいの持ってるねぇ。」


「てめえ、わざと受けたな?」


「どうだかな。」


 そこから先は、殴られ蹴られの集団リンチだった。まあ、返り討ちにしてもよかったのだが生憎と対人と言うのは非常に苦手なのだ。そう言うわけで特段死にもしないので、受けることにした。


「はァ…こんなとこにしといてやるよ。あぁあ、気も失せちまった。」


 随分と強気なことで。実際、僕がゾンビみたいに立ち上がるから死ぬほどビビってたくせに。そして、その集団は去っていった。


「あ、あの…大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫だ。怪我の内にも入らん。」


 実際、僕は傷を受けたそばから回復していたので無傷だ。


「そうは言っても...。」


「なら、今度会ったら酒でも奢ってくれ。あれが1番の薬だ。」


 そう言って僕は立ち上がり、その路地から離れようとする。


「え、え?あ、あの、名前は?」


「ん?ああ。イールだ。」


「イール…。」


 まあフルネーム伝えなきゃ大丈夫だろう。そうして僕はその場を立ち去るのだった。

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