引継ぎ
よう。ドロル星へよく来たな。いやー、長旅だっただろ、ご苦労さん。
まあ飲み物でも出すから、中に入って宇宙服を脱いでゆったりしなよと言いたいところだが、おれはこのままこの星を出るからな。さっそく引継ぎをしなきゃならん。悪いな。まあ、小さい星だしな。そう覚えることは多くないから安心しろ。観測と採掘調査はコンピューターがやってくれるし、まあ気楽にな。
それで引き継ぎなんだが……まずここから東の方にある紫色の星は見るな。眼が潰れるぞ。もし見てしまった場合は冷蔵庫にある人工眼球を急いで取りつけるんだ。じゃないと脳までやられるからな。
ああ、元々のはスプーンかなんかで取り出せばいい。指でもいいな。麻酔を打っている時間はないぞ。どんどんひどくなるからな。
ははは、まあそん時には焼けつくような痛みと凄まじいかゆみがあるから目玉をほじくり出すぐらいどうってことないさ。気にしてなんかいられない。さっさと出したくてたまらなくなるぜ。他の星は見ても安全だからな。楽しむといい。綺麗だぞ。
で、お次はジャクの実だ。この星で唯一の植物、その実。ナスを小さくした見た目でな、最高に美味いんだ。そのまま食べてもいいし、煮てもいいし焼いてもいい。宇宙食に飽きたらオススメだな。
ああ、ないとは思うが、万が一腹を下しても心配するな。すぐに治まる。まあ、なにかあってもメディカルルームがあるからな。切開が必要な手術はみんなあそこでやってくれる。任せてりゃいいさ。
で、最後はドポッギョだな。この星に存在する甲殻類に似た生物で地球のペットのあいつ、ダイオウゾクムシみたいなやつさ。まあ、もっと素早いがな。あいつらはホント人懐っこくて可愛くてなぁ。退屈になったら何匹か基地の中に持ち帰るといい。
素手で尻の辺りを撫でてやると喜ぶぞぉ。ひひひひひひ。
それからそう、うん……? お前、さっきからなんか妙だな。んー? ああ、そうだ瞬きをしな……あぁ!? なんだよお前、アンドロイドかよ! なん、え? 今回からそういう方針に? クソッ! クソッ! クソッ! 地球の糞どもが! クソッ! あーあ! あ、おい、今のは記録するなよ。それとさっきの説明も忘れろ。全部間違いだ。あーあクソッ! 正しいデータは引き出しにしまってあるから探してそれを確認しとけ。あーあ! クソッ! ……おい、ちょっとあの、そう、あそこの水色の星を見ろ。三秒以上な……クソッ! やっぱり効かねーか! アンドロイドだもんな! あーあ!
あ、ちょっと待ってろ…………よし。じゃ、おれは宇宙船に乗って地球に帰るから、あとはしっかりな、ん? これか? 別にいいだろ……お土産だよお土産。綺麗だろぉ? マントマイマム。この星、一番の貴重な鉱石さ。まだ分析途中だがな、へへへ。これだけ一足先にな。
ん? なんだよ。疑ってるのかよ。いいからさっさと行けよ! 放射線? 危険レベルを遥かに超えて? うるせぇな。俺とお前は平気なんだからいいだろうが。なんて言われてここに来た? ん? 問題を起こすな。それとそうそう人間と仲良く! 俺らもう、お仲間だろ? な? よ-しよしよし! 引継ぎ完了!