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戦争の話

 俺には心が読める。もう少し正確に言うと、表情、動き、状況、その他の要素がうまく合わさると、たまにだが思考が読める。


 読んだ相手の思考に返事する癖がなければ、便利な特技なんだが。まあ、すべての特技に代償があるのは森羅万象の摂理というものだろう。


 この癖が原因でよく嫌われていた。そうだ。少し話がそれた。


 まずは開戦の理由を説明せねばなるまい。俺らメイーギ国は、そこら中の国に攻め込んで、資源、領土、等々を強奪しているよくない国だ。


 だが、メイーギ国には強大な軍事力がある。弓と剣が主流のこの時代、鉄砲と大砲を扱う数少ない国だ。そんな兵器に、弓矢で逆らえるはずもない。


 ここには大量の鉄鉱石が埋まっていて、メイーギ国はそれに目を付けた。鉄鉱石からとる鉄を使えば、鉄砲や大砲だけでなく様々な物が作れる。


 そうしてこの戦争が始まった。くだらない理由だろう。好きに笑え。


「これは勝ったな。ラタ、どう思う?」


 隣にいたクレイという名の兵士が俺に声をかけた。ちなみに俺の名前はラタだ。まあ、戦場で名乗る余裕なんてないが。


「やあやあ我こそは」のセリフから始まる戦争も『宣戦布告』なんて上品な紙を突き付ける戦争も終わったんだ。


 今敵に突きつけるものはただ一つ。銃口だけだ。


 この木と鉄を組み合わせた棒のような形をした鉄砲を応用して、俺と一緒に大砲を発案した作戦指揮と発案の得意な兵士だ。


 更に、射程内に入ってないとはいえまだ敵が弓を放っていて、剣を持った兵士がせめて一矢報いんと特攻してくる中で、隣の兵士に話しかけることができる肝の座ったやつだ。


「さあな。こうやって陣形の奥深くまで誘いこんで全滅させる作戦かもしれない」


 俺は、最悪のパターンを考えすぎだとよく言われる。そして今回も言われた。


「お前は最悪のパターンを考えすぎだ。しかもそうなったら後ろから大砲が雨あられと降り注ぐよ。攻撃してきた兵士は全員まとめて、なんかよく分からない目を背けたくなるような肉の塊になるだけじゃないか?」


「俺らの仲間の何人かも一緒に肉の塊になるぞ」


「砲手を信じろ。今まで何度も助けてもらっただろう」


「戦争の前に砲手の一人とけんかしてきたんだ」


「なんで喧嘩したんだ?砲手は職業柄、結構気が長いぞ」


「トランプで五回ほどイカサマしちまって・・・。」


 これは本当だ。四回までは気づかれなかったが、五回目で流石にバレた。一銭もかけていなかったからよかったが、かけていたら俺の頬は今頃腫れていただろう。


「四回許してくれたのか・・・。自業自得だな。体の破片を拾ってやる」


 こんな時に砲手とけんかするとは俺はつくづく運が悪い。もしそんなことがあっても、こいつは俺を助けるつもりはなさそうだ。あと、「骨を拾ってやる」というセリフは知っているが「体の破片を拾ってやる」なんてセリフは初めて聞いた。


 確かに、大量の砲弾で吹っ飛ばされたら体の破片ぐらいしか残らないかもしれないが、それでも拾うのは兵士全員が持っている犬の鑑札のような形の認識票だけだ。


 体は自然へと返される。


 そんなくだらないことを歩きながら考えていたら俺の足から数センチのところにに矢が刺さった。


「おっと。弓の射程内に入ったな」


「歩くときは前を見ていないと危ないな。気を付けないと」


 クレイが、俺の心臓に向けて矢を放とうとしていた兵士の額をピンポイントで撃ちながら冷静に言った。


「助かったよ」


 俺が礼を言うと弾を込めながら


「どういたしまして。もう少しずれてたらお前の足や心臓は地面に縫い付けれられて敵のいい的になっただろうな。そうなったらハリネズミになれるぞ」


 と、クレイが言った


「面白くないジョークだ」


「ジョークのつもりではない」


 俺も剣を構えて突っ込んできた兵士の剣を横に跳んでかわして、そのままの姿勢で相手のこめかみを撃ちながら返答した。


「その通り。くだらない特攻はしないほうがいい」


 最後の瞬間、俺が殺した剣士の考えに返事をした。もう一人か二人殺ってもあんまり意味なんてないんだが、突っ込んできたなら仕方ない。


 そんな感じでどんどんと進撃していく。


 何かの気配を感じてあたりを見渡した。


 いつの間にか、半円状に隠蔽されたバリスタが並べられていた。見事なカモフラージュだ。近づかないと分からない。そして、こっちをいくらでも撃てる。


 いくら砲に劣っても、バリスタの威力をなめてはならない。鉄板も打ち抜くし、矢の速度は早い。しかも本体は丈夫で、銃で撃っても、当たり所が悪ければびくともしない。


「ちょっとまずいな」


 クレイが言った。

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