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#丁寧な暮らし  作者: SACK
3/7

Day.3 食品ロスの削減と、少しでも環境にいい生き方

PM.5:30

「ふぅー、おしまい」

仕事がひと段落した。

パソコンをシャットダウンし、疲れた目元を指でマッサージする。

日中は部屋の照明を付けずとも、陽の光が差し込み明るかったが、気付けば窓の外は暗くなり部屋の中も真っ暗だ。

仕事に没頭していてそんなことも気付かなかった。

暗い中でパソコンの画面と向き合い続けていたら、それは目も痛くなるはずだ。

強い爽快感ですっきりする目薬を両目に差し、隼人はヘッドフォンからエプロンへ装備品を切り替えた。


キャベツとにんじんを冷蔵庫から取り出し、軽く流水で洗う。

キャベツは1/4だけ使おう。芯の部分もまとめて大きめの荒微塵に切った。

ピーラーで皮を剥いたにんじんも同じような細かさになるまで切る。皮は捨てず、別皿へ。

細かく刻んだキャベツとにんじんは、ボウルに入れて塩をまぶし軽く混ぜて放置。

その間に大根の皮を剥いて、いちょう切りに。桂剥きにした大根の皮もにんじんの皮と同様別皿に置いておく。

片手鍋に大根と、冷蔵庫にたまたまあったしめじを入れた。しばらく一緒に煮込み、大根がうっすら透明になってきたあたりで火を止め、味噌を溶き入れる。味噌の酵素が死んでしまうため沸騰は厳禁だ。

「味噌汁オッケー」


放置していたボウルを見ると、キャベツとにんじんからだいぶ水分が抜けてしんなりしてきた。

ぎゅっと絞りよく水を切ったあと、マヨネーズと粉チーズ、顆粒のコンソメを適量掛けて混ぜる。

コールスロー風サラダが完成したところで、エプロンのポケットに入れていた携帯が震えた。

[今駅着いた!何か買うものある?]

最寄駅に到着した果穂からだ。

[ないよ。気をつけて帰ってきてね]

返事を送信し、携帯をポケットにしまった。


続いて冷蔵庫から牛肉を取り出した。タッパーの上で塩胡椒をして軽く下味をつける。

牛肉に味がつくのを待ってる間に、先程別皿に乗せておいたにんじんと大根の皮を細切りにし、胡麻油をひいたフライパンで炒めた。

胡麻油の香ばしい香りが充満する。これだけで白米が食べれそうだ。

そこに下味をつけた牛肉も入れ、表面の色が変わってきた辺りで醤油、砂糖、みりんを目分量投入。

計量も味見もしていないが、匂いだけで美味しく出来ていると分かる。

大皿に盛り付け、上から白胡麻をパラパラと振りかけた。

炊飯器を開け、炊き立ての米をふんわり混ぜていると玄関のドアがガチャリと開いた。

「ただいまー」

「おかえり。お疲れ様」

「隼人くんもお疲れ様!いい匂いー。急いで手洗ってくるね」

パタパタとスリッパの音を立てて、果穂が洗面所に向かった。


PM7:00

コールスロー風サラダ、大根としめじの味噌汁、炊き立ての白米、大根とにんじんの皮と牛肉の炒め物がテーブルに並ぶ。

「果穂、ハイボールでいいよね?」

「うん。あ、私氷入れるよ」

隼人は冷蔵庫から水のタンクを取り出し、ソーダストリームで炭酸を作った。果穂が氷とウイスキーを入れてくれたグラスに炭酸を注ぐ。シュワシュワと泡が音を立てている。

「「乾杯!」」

グラスを軽く合わせ、乾いた喉を潤す。

「はぁー、美味い!」

隼人も果穂もハイボールが好きで、以前はペットボトルの炭酸水を毎日のように購入し、ハイボールを作っていた。

炭酸水代だけでかなりの出費になるのと、何よりペットボトルのゴミが大量に出てしまうのが大変だった。毎週プラごみの日は両手にペットボトルが入ったゴミ袋を持ち、マンションのゴミ捨て場に向かっていたのを覚えている。

ソーダストリームを購入してからは、炭酸水代の節約に加えプラスチックごみの削減が出来ていることが少し嬉しかった。

SDGsを高く意識しているわけではないが、やはり少しでも地球に優しい暮らし方をしたいと、隼人は思う。

「サラダ美味しい。これさパンに乗せても美味しいよね絶対」

果穂がコールスローを食べながら目を大きく見開いてる。

「パンに乗せるのいいね!明日の朝やってみようか」

キャベツは芯まで一緒に刻むことで全部食べられる。芯独特の甘みがコールスローに合うのだ。

「この炒め物もめっちゃごはん進んじゃうよー。やっぱ皮って美味しいよね」

「皮に栄養があるっていうもんね。捨てるのは勿体無いからさ」

にんじんと大根の皮は、味が濃くて食感もよく、こうやって炒め物にするのにとても適している。牛肉の旨味にも負けない存在感だ。 

「お味噌汁も美味しい…染みるわー」

味噌汁は、味噌を入れる前にしっかり煮込んで素材の旨味を出すのが隼人のこだわりだ。旨味が出た後に味噌を入れることによって、塩分が少なくても素材の味で美味しく飲める味噌汁になるからだ。

「今日帰りの電車でね…」

ハイボールを片手に果穂が今日の出来事を報告してくれる。

果穂はよく食べ、よく飲み、よく喋る。

表情をコロコロ変えながら喋る果穂は、見ているだけで楽しかった。

「隼人くんは仕事どう?曲できた?」

「うん、1曲仕上がって今日送ったところ。すんなり採用してもらえるといいんだけどね」

「そっかー。取引先厳しい人って言ってたもんね。あ、私ね今日薬局で暖かくなるアイマスク買ってきたの。今夜付けて寝てみて!」

「マジで?ありがとう」

2杯目のハイボールがなくなったタイミングで、皿の上にあったものも全てなくなった。

「ご馳走様!今日も全部美味しかったよ。隼人くん、ありがとう」

「いっぱい食べてくれて、こちらこそありがとね」

「いえいえ、それしか出来ませんから」

隼人が食器をシンクに下げてる間、果穂がテーブルを拭いた。ここに引っ越してからずっと使っているダイニングテーブル。買った時と比べると、だいぶ色も変わり傷も付いてしまったが、その傷も思い出で、愛おしい。


PM10:00

シャワーを浴びた後、2人でテレビを見ながらアイスを食べた。

「コンビニ、もうカボチャとか栗のスイーツが出始めてたよ」

「秋だなぁ」

それから2人で並んで歯を磨き、隼人は寝室のベッドで横になると果穂が買ってきてくれた暖かいアイマスクを装着した。

「おお、暖かくなってきた」

「隼人くんいつも目酷使してるからさ。疲れ取れるといいね」

「これは良さそう。ありがとね」

「どういたしまして」

瞼の周りの筋肉や目の奥が、暖かさでじんわりほぐれていくのを感じる。ほのかに香るラベンダーの匂いも良い。

「おやすみ」

ブランケットの中で果穂の手を探し、そっと握った。眠たいのか果穂の手も温かくなっている。

「おやすみ」

優しく握り返してくる、その手の温度がとても心地よかった。




To Be Continued…

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