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よよぼう ~あの世とこの世の冒険譚  作者: 真鶴あさみ
精霊たちの舞う空に
96/112

◇95 再会は雪の街角

「よよぼう」第六章までのあらすじ


 RPG同好会を設立した中等部二年の西原詩音にしはら うたねは、個性的な仲間たちと親交を深めていく。そして、もうひとつの詩音の願いは、担任教師の佐伯十三さえき じゅうぞうとの恋の成就だった。


 季節は巡り、晩秋の体育祭で先輩の神楽楠葉かぐら くずはとの勝負に負けた詩音は、それでも気丈に自身の努力を続けるが、その裏で樟葉の計画が着々と佐伯先生を追い詰めつつあった。

 一方、詩音に想いを寄せるクラスメイト、越谷漣こしがや れんの存在も明らかになり、詩音の周囲の恋模様はさらに混迷を極めていく。


 クリスマスを目指して、詩音たちRPG同好会の仲間たちは、各自の胸に秘めた想いの実現に向けて、いよいよ本格的に行動を開始する…。




主な登場人物

□女性/■男性


《RPG同好会の面々》


西原にしはら 詩音うたね

 担任の佐伯先生に想いを寄せる中等部二年生。RPG同好会の会長だが、威厳の欠片もない引っ込み思案娘。

 何故かトラブルに好かれる体質で、意地と気合で難題に立ち向かう、出たとこ勝負の精神的ハリボテ勇者。


白岡しらおか 彩乃あやの

 詩音のクラスメイトで、ホビーショップ『Colline Blancheコリンブロンシュ』の看板娘。明るくマイペースなボクっ娘で、根っからの商売人気質。

 店に集う年下の子供たちからは人気の高い姉貴分だが、従兄の謙佑に初恋のリベンジを誓う乙女でもある。天邪鬼な鉄砲玉トラブルメーカー。


香坂こうさか 夢莉ゆうり

 詩音の幼馴染みで隣のクラス。体操部の期待の星でもあり、男女問わず人気の高いスタイリッシュ女子。

 毒舌系百合剣士といったクールな雰囲気ながら、人情に脆い苦労人。実質的な詩音たちのストッパー兼防波堤。


島本しまもと 涼太りょうた

 詩音と夢莉の幼馴染み。夢莉のクラスメイトで家もお向かいさん。夢莉にあからさまな挑戦を続ける残念トリックスター。

 夢莉にいいように使われつつ、思慮深く陰ながら支える縁の下の力持ち。自称、ジョナサンの兄貴分。


山科やましな 美雅みみや

 中等部一年の体操部員。夢莉を目標に鍛錬を欠かさぬ努力家。気分屋で周囲から孤立しがちな人見知りツンデレハリネズミ娘。

 複雑な家庭環境のせいでかなり達観した言動も多い。戸籍上は笹嶋ささしま姓となったが、学校内では山科で通している。


神楽かぐら 樟葉くずは

 図書委員の中等部三年生で、地元名家の一人娘。完璧主義で融通の利かない修道女的性格も、詩音たちの影響で丸くなりつつあり。

 実際は、次期当主としての境遇と自分自身の目標に悩む年相応の少女であり、渾名の「鋼鉄の冷嬢」とは程遠い温和な性格。詩音のライバル?を公言中。


■ジョナサン ウェリントン

 樟葉の遠縁の金髪男子。美雅のクラスメイト。明るく陽気な爽やか系男子で、編入早々から女子の注目度も高い。涼太とは凸凹コンビの間柄。

 偶然か必然か、詩音の遭遇するトラブルの救世主的な存在で、詩音にとっては微妙に気になる存在。



《その他の人物たち》


□メアリー ウェリントン

 樟葉の遠縁の金髪女子。初等部六年生の快活児童。ジョナサンの妹で、かなり偏りまくった日本文化に憧れている。

 次世代RPG同好会の予備軍として、詩音たちに帯同することも多い。容姿も年齢以上に早熟可憐で、詩音や彩乃のコンプレックスの源になることも。


佐伯さえき 十三じゅうぞう

 詩音と彩乃のクラス担任の国語教師。RPGの造詣も高く、心理描写重視の演劇スタイルが得意。なし崩しにRPG同好会の責任者となる。

 詩音の憧れの存在であり、生徒からの評判も良好の好青年だが、環との経緯から生徒との距離感に戸惑いを感じる一面も。


鷹取たかとり 謙佑けんすけ

 ホビーショップ『Colline Blancheコリンブロンシュ』のアルバイトの大学生。彩乃の従兄。RPGのほか、様々な玩具に詳しい。

 相応にイケメンだが、かなりアバウトな性格で、一見掴みどころがない存在。彩乃の良き相談相手であり、目下の攻略目標。


道脇みちわき たまき

 RPG雑誌『月刊TTMテーブルトーク・マンスリー』の編集部員で、謙佑の先輩。気さくなゴスロリ美女。本名は「大路おおじ まどか」。

 過去の自分に似た境遇の詩音に、分不相応な過大な期待を抱いているようで、半ば世話焼きのお節介お姉さんと化している。


宮津みやづ 綺夏あやか

 美雅のクラスメイトの明朗少女。クラスで孤立しがちな美雅を気にかけ、様々な変化のきっかけを作る。やがて美雅にとってかけがえのない親友となる。

 美味しいものと可愛いものに目がない現代っ子で、アクティブな行動派のわりに細部はかなり大雑把な性格。躊躇する人の背中をそっと押すのが得意。


越谷こしがや れん

 詩音のクラスメイト。突然詩音に大胆告白をした、もう一人の勇者。

 落ち着いた穏やかな性格だが、詩音に関してはかなりの情熱家で、涼太やジョナサンを仮想敵に考えている模様。

 洞察力に優れ、佐伯先生より早く詩音の長所に気付くなど侮れない存在。


吉川よしかわ ひびき

 詩音のクラスメイトで、越谷の友人。詩音の事になると見境のない越谷の手綱を握る役目。口調は荒いが常識人で善人ではある。

 小学生の妹のおかげで、女子に対する希望的感情は希薄。風歌とも仲間感覚でのフランクな友人関係にある。


赤木あかぎ 風歌ふうか

 詩音のクラスメイトで。クラスを引っ張るまとめ役的なさっぱり系。小麦色が健康的な姉御肌。お祭りやイベントが大好きでとことん楽しみ尽くすタイプ。

 体育祭の男女混合騎馬戦で詩音や越谷、吉川と組んだことで、思いがけず詩音と越谷の、というより詩音の相談相手になっていく。


□ヴィスラーン(bi slàn)

 駅前広場に時折出没する謎の占い師。道脇みちわき たまきこと大路おおじ まどかの双子の姉を自称している。

 環以上に謎が深く、よく似た性格ながら更に掴みどころがない。環と対照的な白系のドレスが好み。本名「大路おおじ みちる」。

◇95 再会は雪の街角



 思いもかけず、雪の降り積もる駅前広場で出会った詩音と佐伯先生だったが、詩音を呼び出したはずの環の姿は何処にも見当たらなかった。


 「その環さんって人に、お前はメールで呼び出されたっていうわけか…」


 「そう、ですね。結構焦ってた感じだったんで…」


 何故ここにいるのかという理由を佐伯先生に問われた詩音は、僅かに小首を傾げながら説明を始める。


 詩音の話によると、自宅へ帰り着いたタイミングを狙ったような間の悪さで環にメールで呼び出され、渋々この駅前に舞い戻ってきたのだという。


 せっかく暖かな我が家に帰宅して、おまけに雪でも降りだしそうな空模様だというのに、仕方なく詩音が家を出てきたのは、その慌てたような様子の文面が気にかかったからだ。


 この場所まで戻ってくるまでの間も、詩音は脳内に幾つもの疑問符を浮かべ、いつもより気持ち足早気味に、そして同時に足下には細心の注意を払いながら、小走りに通い慣れた道を駆け抜けてきた。


 「騙された、っていうのはつまり、その環さんが先生と詩音を会わせるために企んだ、って言いたいのか?」


 「まぁ、可能性としては…?」


 そう考えると、一見深刻そうだったメールの文面も、詩音を引っ張り出して佐伯先生に会わせるための作戦とも思えてくる。あのお茶目な人の事だ、十分にあり得る話だ、と詩音は疑心暗鬼になりながらも腑に落ちる気がする。


 そう、佐伯先生は環の正体を知らない…。


 正確に言えば、気がついていないだけなのだが、目の前の生徒以外には無関心というか、そこに誰か人がいるという以外に、細部の枝葉については殆ど興味を示さない性格の佐伯先生なのだから、気付きようもないというのが正直な本音だ。


 環さんこと道脇環こそが、かつての教育実習中に佐伯先生に熱を上げていた女子生徒、あの大路円本人なのである。


 環のほうはとっくの昔に気付いていたものの、自分の姿を見てもまったく反応を示さない佐伯先生に対して、今さら何か言うわけでもなく、かつての自分と良く似たような境遇の詩音に対して、呆れながらもあれこれと助言をしてくれていた。


 まぁ、お似合い世代の環が目の前にいても、気にも留めない佐伯先生には、さすがに過去の焼け木杭にすら火がつかないということなのだろう。


 そんな佐伯先生の性格もどうなんだろうか、とは思いつつ、詩音にとっては都合のいい話なので、とりあえずは良しとしていた。


 「その環さんって、文化祭の時の飛び入りマスターの人だろう? お前たちと随分仲が良いんだな…」


 佐伯先生は結局その程度の認識なのだ。本当のことを知ったら、いったいどういう顔をするだろうか、と詩音は少し意地悪な疑問を持ち始める。


 「謙佑さんの紹介でRPGイベントに行ったときに、私のテーブルのマスターさんだったんですよ。なんでも、雑誌のライター兼編集者とか…」


 謙佑というのは、彩乃の家のホビーショップ『Colline Blancheコリンブロンシュ』 のアルバイト店員、鷹取謙佑たかとりけんすけという大学生のことである。


 目下、彩乃と美雅の間で繰り広げられている争奪戦の作戦目標であり、幾度となく佐伯先生とも面識はある人物だ。


 「いわゆるプロゲーマー、ってやつかぁ…」


 呆れたような感心したような絶妙のニュアンスで佐伯先生が呟く。詩音はここぞとばかりに追加情報をリークしてみる。


 「昔、憧れの人?に初めてRPGを教えてもらって、以来ずっと嵌ってるみたいなんですよね…」


 「そう言うやつって、案外多いんだよなぁ…。幼気な若者をその手の趣味の道に引きずりこんおいて、自分だけとっとと卒業しちゃう…みたいな…」


 「はぁ、まぁ、あはは…」


 あなたですよ? わかってますか、あなたなんですよ? そう詩音は心の中で佐伯先生へのツッコミを呟きながら、苦笑いの表情を浮かべる。


 「彼氏彼女で仲良くイベント参加…とかゲームオタクの永遠の夢だからなぁ…」


 あぁそうか、と詩音は思い至る。


 環がその昔、佐伯先生に夢中でアプローチしていた頃、佐伯先生自身は別に本命彼女さんがいて…、と表現すると語弊があるが、とにかく鈍感にも環…いや、当時中学生だった女子生徒の円には、ちっとも興味を示さなかった佐伯先生は、本命彼女さんとゲームイベントの中心的メンバーとして活動していたのだ。


 そういう意味では、佐伯先生の語った「ゲームオタクの夢」はとっくの昔に既に叶っていたということなのだろう。


 円にいろいろバレて、大騒動に発展するまでは…。


 「私は…、私も憧れの佐伯先生と是非、RPGイベント行きたいです…。別に私、ゲームオタクってわけじゃないですけど、私の夢には違いない…ですからっ!」


 詩音はどさくさ紛れにもう一発、渾身の一撃を打ち込んでみる。環の作戦だろうが知ったことか。便乗できるものにはとことん便乗してでも、クリスマスの前には佐伯先生を射止めねばならない。


 そうでなければ…。


 佐伯先生は恐らく樟葉先輩と一緒に何処か遠いところに行ってしまうのだろう。


 物理的にも勿論だが、心理的精神的にも中学生女子では絶対に手の届かない、そんな遥かな世界へと、佐伯先生は旅立ってしまう。


 女同士の真剣勝負に負けるというのは、そういう事なのだ。


 「お前はもう十分、その資格ありだろ? 今さら何を…」


 「えっ? あの、それって…」


 予想外に佐伯先生から投げかけられた言葉に、詩音は目を丸くして驚きの表情のまま固まってしまう。


 「お前は十分に、ゲームオタクを名乗って問題ないだろう。中二女子にしておくには勿体ないくらいだ…」


 「あー、そっち、ですか…」


 期待満面の詩音の顔が、一気に冷や水を浴びせられたように引き攣り笑いに変わっていく。


 勝手に期待したのは詩音なのだが、ここでそれを言うのか、この人は…、という落胆の思いは大きく、詩音の気分はまさにジェットコースターのように、最高地点から奈落の底めがけて一直線の急降下だった。


 だが、そんな詩音の様子はまったく眼中にない様子で、佐伯先生はふとあることに思い至る。


 「待てよ…まさか、『もうひとつの忘れられた楽園』って…」


 「何ですか、それ?」


 佐伯先生の独り言、唐突なや呟きに、詩音が疑問を抱くのも無理はない。傍から聞いていれば、意味不明この上ない単語なのだから。


 佐伯先生はベンチに座った姿勢のままで、駅前広場の一角を指さしながら、噛み砕いて説明を始める。


 「あそこの占い小屋のヴィス…ルーン? レーン? とにかくそんな感じの占い師に言われたんだ。『もうひとつの楽園』っていう場所に、将来の道標?があるとか…。さっぱり訳がわからなくてなぁ…」


 「あー、それで雪の降る中、一人で悩んでたんですね…。っていうか、占い小屋なんてありましたっけ? うーん、記憶にない気がするんですが…」


 詩音は佐伯先生の指さしている先、ついさっき自分が通ってきた駅前広場の一角を眺めながら、さらに首を傾げる。


 「は? あそこにあっただろ、変な造りの小屋っていうか、怪しいテントっていうか…。如何にも魔女がやってます、って感じのやつが…」


 「雪が降ってきたから、撤収…しちゃったんですかねぇ…? 私、全然気がつかなかったけどなぁ…。そう言われると、何かあったような気もするかなぁ…」


 そんな馬鹿な…、とばかりに佐伯先生はベンチから腰を浮かして、先刻自分がいたであろう方向、自分の指が今も指し示す方向を凝視する。


 仮に天候悪化を受けて撤収をしたにしても、そう簡単に忽然と、跡形もなく消え去ってしまうなどという事があり得るだろうか? 小規模とはいえ、若い女性が一人きりでは撤収も難しいだろうと思える。


 「そんな馬鹿な…」


 唖然として中途半端な中腰姿勢で凍りつく佐伯先生に、詩音は心配そうに声をかけ続けたが、呆然自失の佐伯先生の反応はなかなか返ってこない。


 何度目かの詩音の必死の呼びかけで、ようやく我に返った佐伯先生は、再び力なくベンチに逆戻りしてしまった。


 まさに狐につままれたという気分で、二人は雪の降る寒さの中、さらにいっそう背筋を凍らせた。



挿絵(By みてみん)



 微妙な距離感で見つめ合う担任教師と女子中学生。降り積もる雪の中で、まるで時が止まったかのように微動だにしない。


 そんな二人の姿を、駅前ロータリーを周回する車のヘッドライトだけが、きらきらと照らし出す。シチュエーションだけなら最高ともいえる、恋愛映画のワンシーンのような雰囲気満点の状況だった。


 「あれぇ? お二人さん、こんなところでいったいどういう状況ぉ? 雪の中の密会デートぉ? こんな寒い中教え子を連れ回すとかぁ、佐伯先生ってば『相変わらず』、お気に入りの女子生徒を引っ張り回してるんですねぇ?」


 どのくらいの時が流れたのだろうか? 沈黙を破ったのは、突然聞こえてきた明るい女性の声。


 暫くの間無言で見つめ合っていた二人は、頭の上に疑問符を浮かべたままで、声の主の方向へと振り返る。


 明るく詩音たちに声をかけてくる目の前の環は、特に切実そうな問題を抱えているようには窺えない。


 「環さん!…って、今まで何処にいたんですか!」


 ぺこりと頭を下げつつ詩音が挨拶すると同時に、更なる大きな疑問符を浮かべる。


 「あらぁ、意外ねぇ…。何で『お気に入りの女子生徒』ってのはスルーなのかしらねぇ…」


 「それはいいですから! そんな事より急用だったんですよね?」


 「あー、それはねぇ…。ちょーっとばかりエルザ西原の手が借りたくて呼び出したんだけどぉ、タイミングよく別の親切な助っ人が現れてねぇ…」


 エルザというのは詩音が環と出会った時の詩音のキャラクター名だ。何故か環は詩音をこう呼びたがる。


 「誰が、親切な助っ人なんですか! 通りすがりの大学生にいきなり肉体労働を強要するとか、正気の沙汰じゃないですよ、まったく!」


 環の後ろから、さらに見知った顔が現れ、不満たっぷりの抗議の声を上げる。


 「こんばんは、うたちゃん。今日はこっそり、佐伯先生とデートかい?」


 一転、詩音に対しては優しい笑顔で声をかけてくるのは、謙佑である。


 「あぁ、謙佑さんが助っ人だったんですね。っていうか、たぶん…デートなんかじゃない…と思うし…、気にしちゃダメです。彩乃にも内緒です。…で、結局、何の用だったんです?」


 次々集まる奇妙な仲間たちに、引き攣り笑顔で愛想笑いを浮かべる詩音は、当然の質問を返す。


 「それは、アレよ…。ザ・撤収ぅ?」


 詩音の質問に答えたのは、さらなる追加の登場人物だった。


 その声に弾かれたように、詩音と佐伯先生はまたしてもぐるりと視線を巡らせると、そこには環と瓜二つの顔をした白いコート姿の女性が、ニコニコとこちらに微笑んでいた。


 「え? えええっ! 環さんが二人…? 分裂? ドッペルさん?」


 「ヴィス…なんとか! ということは、さっきのはやっぱり夢じゃなかったってことか…」


 「ヴィ・ス・ラー・ン・よ! 早速かわいい女の子とデートとか、佐伯先生も少しは、外の世界に気が向くようになったのかしら?」


 ヴィスラーンという女性は、聖母のような微笑みを崩さずに、詩音と佐伯先生のやり取りを見つめていた。


 真っ白なコート姿と、その下に覗く純白のロングドレス。環に瓜二つのその女性は、まるでポジとネガのような不思議な関係に感じられた。


 「本当だったのか、双子姉妹の話は…」


 「ええ、もちろん本当よ? っていうか、さすがに疑り深過ぎってもんじゃないですか? ご覧のとおり、私たちは双子の姉妹…」


 なおも疑う佐伯先生を一蹴して、ヴィスラーンはコートの上からでもわかる女性らしいナイスプロポーションの胸を張ってみせた。


 「双子…」


 「僕も今日初めて会って、驚いたよ…」


 詩音と謙佑も、驚きながらも納得の表情になる。


 「…ところで、環…さん? 久しぶりで唐突な質問なんですが…」


 何処か戸惑いと躊躇いの混じった複雑な表情の佐伯先生は、頭の天辺から足の爪先まで、詩音と同じく完全防寒の重装備の環に幾度となく視線を走らせる。こちらはヴィスラーンとは反対に、黒一色といった印象である。


 「はい? ご無沙汰ですね…、で、私に何か?」


 じろじろと見つめられ少し頬を染めながら身を捩る環は、視線を詩音から佐伯先生へと移して、次の言葉を待った。


 だが、その言葉は環の…円の予想外の言葉だった。


 「さっき君は『相変わらず』と言っていたよな…。つまり君は、その…大路円本人なのか? もしそうなら…」


 僅かに驚いて大きく目を見開いた環だったが、すぐに平静を取り戻してそう切り返す。


 「もし、もしも、そうだったなら…? 今さらの話、いったいどうする気なんですか、佐伯先生…。まさか現役の生徒の前で、私を…かつての教え子だった私を口説くつもりなんですかね…?」


 「それは…」


 さすがに佐伯先生はその先の言葉を紡げずに言い淀み、辺りは静寂に包まれていった。



挿絵(By みてみん)



◇96 再出発は銀世界から に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください


●ご注意

 この小説は、原則的に毎週月曜日の10:00に更新する、連載形式の作品です。

 現在は、第七章を2024/9/30より掲載中となります。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。

 ずるずると続いているこの作品もついに七章まできました。もう暫くは続きますので、これからも是非よろしくお願いします。


 近頃は、少しずつTRPGという趣味も復活しつつあるようで、様々な趣向を凝らしたシステムをショップで見かけるようになりました。

 奥が深く、一見とっ付きにくい世界ではありますが、見ているより体験するほうが簡単なものなので、ご興味を持っていただければ嬉しいです。


 挿絵画像は相変わらずの、KISS「カスタムオーダーメイド3D2(COM3D2)」で作成しています。シーン適合率が低いのはお許しください。

 AIイラストも現在試行錯誤中ですが、なかなか絵柄とキャラが安定しないので困っています。

 ご意見ご感想、AIイラスト他、お寄せくださると嬉しいです。



■「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にてAIイラストを試験公開中。「よよぼう」関連以外もあります。

■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、只今、絶賛放置中

■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定

■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)


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