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よよぼう ~あの世とこの世の冒険譚  作者: 真鶴あさみ
聖なる鐘が響く夜に
80/112

◇79 爆弾投下の衝撃波

「よよぼう」第五章までのあらすじ


 突然の思いつきでRPG同好会を立ち上げた、中等部二年の西原詩音にしはら うたねは、様々な伝手で強烈な個性の仲間たちを集めていく。しかし、その隠されたもうひとつの目的は、憧れの担任教師佐伯十三さえき じゅうぞうとの縁を深めることにあった。


 波乱の夏が過ぎ、秋も半ばを迎えるころ、RPG雑誌編集者の道脇環みちわき たまきが、かつての佐伯先生の教え子であり、詩音同様の想いを抱いていたことが判明する。過去の環を継いで決意を新たにした詩音は、もうひとつの将来の夢を胸に抱き始める。

 同じころ、後輩の山科美雅やましな みみやは、複雑な家庭事情を巡って悩んだ末に、ついに実父と暮らすことを決意し、笹嶋ささしま美雅となる。


 秋の終わりが近づく中、それぞれの想いと願いが次第に明らかになっていく。と同時に、その入り組んだモザイク模様のパズルはより一層複雑さを増していく…。



主な登場人物

□女性/■男性


《RPG同好会の面々》


西原にしはら 詩音うたね

 担任の佐伯先生に想いを寄せる中等部二年生。RPG同好会の会長だが、威厳の欠片もない引っ込み思案娘。

 何故かトラブルに好かれる体質で、意地と気合で難題に立ち向かう、出たとこ勝負の精神的ハリボテ勇者。


白岡しらおか 彩乃あやの

 詩音のクラスメイトで、ホビーショップ『Colline Blancheコリンブロンシュ』の看板娘。明るくマイペースなボクっ娘で、根っからの商売人気質。

 店に集う年下の子供たちからは人気の高い姉貴分だが、従姉弟の謙佑に初恋のリベンジを誓う乙女でもある。天邪鬼な鉄砲玉トラブルメーカー。


香坂こうさか 夢莉ゆうり

 詩音の幼馴染みで隣のクラス。体操部の期待の星でもあり、男女問わず人気の高いスタイリッシュ女子。

 毒舌系百合剣士といったクールな雰囲気ながら、人情に脆い苦労人。実質的な詩音たちのストッパー兼防波堤。


島本しまもと 涼太りょうた

 詩音と夢莉の幼馴染み。夢莉のクラスメイトで家もお向かいさん。夢莉にあからさまな挑戦を続ける残念トリックスター。

 夢莉にいいように使われつつ、思慮深く陰ながら支える縁の下の力持ち。自称、ジョナサンの兄貴分。


山科やましな 美雅みみや

 中等部一年の体操部員。夢莉を目標に鍛錬を欠かさぬ努力家。気分屋で周囲から孤立しがちな人見知りツンデレハリネズミ娘。

 複雑な家庭環境のせいでかなり達観した言動も窺える。戸籍上は新たに笹嶋ささしま姓となったが、学校内では山科で通している。


神楽かぐら 樟葉くずは

 図書委員の中等部三年生で、地元名家の一人娘。完璧主義で融通の利かない修道女的性格も、詩音たちの影響で丸くなりつつあり。

 実際は、次期当主としての境遇と自分自身の目標に悩む年相応の少女であり、渾名の「鋼鉄の冷嬢」とは程遠い温和な性格。詩音のライバル?を公言中。


■ジョナサン ウェリントン

 樟葉の遠縁の金髪男子。美雅のクラスメイト。明るく陽気な爽やか系男子で、編入早々から女子の注目度も高い。涼太とは凸凹コンビの間柄。

 偶然か必然か、詩音の遭遇するトラブルの救世主的な存在で、詩音にとっては微妙に気になる存在。



《その他の人物たち》


佐伯さえき 十三じゅうぞう

 詩音と彩乃のクラス担任の国語教師。RPGの造詣も高く、心理描写重視の演劇スタイルが得意。なし崩しにRPG同好会の責任者となる。

 詩音の憧れの存在であり、生徒からの評判も良好の好青年だが、環との経緯から生徒との距離感に戸惑いを感じる一面も。


鷹取たかとり 謙佑けんすけ

 ホビーショップ『Colline Blancheコリンブロンシュ』のアルバイトの大学生。彩乃の従兄。RPGのほか、様々な玩具に詳しい。

 相応にイケメンだが、かなりアバウトな性格で、一見掴みどころがない存在。彩乃の良き相談相手であり、目下の攻略目標。


赤木あかぎ 風歌ふうか

 詩音のクラスメイトで。クラスを引っ張るまとめ役的なさっぱり系。小麦色が健康的な姉御肌。お祭りやイベントが大好きでとことん楽しみ尽くすタイプ。

 体育祭の男女混合騎馬戦で詩音や越谷、吉川と組んだことで、思いがけず詩音と越谷の、というより詩音の相談相手になっていく。



◇79 爆弾投下の衝撃波



 気まずさここに極まれり、といった雰囲気に包まれたバーガーショップの一角。広々としたグループ席にぽつりと二人きりの詩音と越谷は、いよいよ核心的な話題に触れつつあった。


 クライマックス到来である。幸か不幸かギャラリーは皆無だが、それは詩音にとってはありがたい状況ではあった。


 越谷の真剣な瞳に真っ直ぐに見つめられて、詩音はその視線を逸らすことができずにいた。


 まるで睨めっこといった状況だが、ハリボテ根性の勇者の端くれとしては、ここで視線を逸らしたらこちらの負けだ…と、良くわからない理屈の無意識の意地っ張りさを発揮してしまう。


 「西原さん、突然で驚くと思うけど、真面目な話だから聞いて欲しい…」


 「は、はいっ!」


 何だこれは? どうしてこうなった? いろいろな感情がぐるぐると詩音の脳内を駆け巡る。いっそこの場から逃げ出してしまいたくなるが、それはそれでものすごく気まずい展開だ。


 「実は前からずっと、そう、一年の頃から気になってて…、その…西原さんのことが…不思議と気になって…」


 「一年の…頃?」


 「あ、うん。やっぱり憶えてなかったんだ。同じクラスだったんだよ、去年も…僕と西原さん」


 「あー、ごめん…」


 ―そう言われてみれば、そんな気も…―


 詩音にとってはその程度の認識である。


 越谷には限りなく申し訳ないと思うが、正直に言うと、詩音の認識としては、いわゆるその他大勢、モブキャラクラスメイトの一人でしかなかった。


 そう考えると、モブキャラの村人に言い寄られる自称勇者…という、かなりおかしな展開が繰り広げられていることになる。


 「うーん、でも、越谷君、何がそんなに気になったのかな? 私、どっちかっていうと、クラスでも目立たない地味なほうだったと思うけど…」


 詩音にとっては当然の疑問である。自分で言うのも何だが、けっして人目を惹くような長所というか、魅力というか、そういうものにはとにかく無縁であり、逆に周囲に対するコンプレックスを募らせているくらいなのだ。


 「そこは自分でも良くわからないんだけど、何ていうか…、そう、声? 話し方? そういうのが自然で不思議と心地良いっていうか…? な…突然何言ってんのかな、僕は…」


 「え?」


 それは詩音にとっての追い撃ち、そしてもう一つの衝撃だった。


 「あれは何時のことだったか良く覚えてないけど、授業中に西原さんが読んでた教科書の話がね、とても感情たっぷりに心をこめて、まるでその登場人物そのものみたいに語りかけてくる気がして…。その瞬間、西原さん…っていうか、西原さんの声に一目惚れ…一耳惚れ?しちゃって、もういきなり大好きに…、あっ、好きって言っちゃった…」


 そう、その言葉は全て、佐伯先生の初めての授業で、詩音が最初に褒められた言葉と瓜二つだった。


 『うーん、何というか、あれだな…。西原の言葉の抑揚や間の取り方は、何処か不思議な説得力と臨場感みたいなものがある気がするな…。その世界に引きこまれるような、とても良い声質と情緒溢れる緩急のリズム感だと思う。一種の才能なんだろうな。なにより、授業だから仕方ない、読まなくちゃ…と手を抜かずに真剣なところも良いな…。うん、先生はかなり良いと思うぞ。その調子でこれからも頑張れ、西原…』


 まぁ、褒められたというのは詩音の主観であって、よくよく考えれば大したことは言っていないのかもしれない。


 単にアニメやゲームを見慣れていたせいで、知らず知らずのうちにいつの間にか癖になっていた、いわゆるなりきり主人公体質の朗読姿勢、簡単に言えば中二病の範疇ともいえる症状だろう。


 まぁ、夢想家、空想家としての素地はあったかもしれないが、誰でも一度や二度は思いつく程度のことだ。詩音は何も特別な中二女子ではない…はずだ。


 しかし、普段クラスの他の生徒たちに埋没して、けっして目立つことはない凡庸な地味生徒である詩音の、そんな取るに足らない個性の一面を、佐伯先生は最初の授業で見出してくれたのだ。


 詩音自身でも気づくことのなかった才能? いや、才能とも呼べないほんの些細な素質の欠片を、佐伯先生は詩音に自覚させてくれたのだ。


 もちろん、佐伯先生としては、さほど大袈裟に褒めちぎったつもりはないはずだ。適当に生徒たちの長所を見つけては、そこを褒めて伸ばそうとしているに過ぎない。当然、その生徒の短所に気づけば、やむなく説教をする羽目にもなろう。詩音が勝手にどう思いこもうと、実際にはただそれだけの身も蓋もない話なのである。


 ところが、である。


 そんな詩音の秘められた素養に、佐伯先生の指摘より一年近く先駆けて、言うまでもなく詩音が自覚する以前から、しっかりと気付いてくれていたクラスメイトの男子がいたのだ。


 もし、この事実を先に知っていたなら、詩音の恋慕の矛先は果たして誰に向かっていたのだろうか。そんな、もしもの世界もあり得たかもしれないのだ。


 「で、そんなことに気づいてから、僕はずっと西原さんの何気ない会話を耳にするのが毎日楽しみだったけど、ある時を境に急にその明るい声が沈みがちになってきて…」


 「あー、それは、その…」


 たぶん越谷の言っているのは、詩音の兄が亡くなった事故の頃の話だろう。


 あの頃は、詩音だけではなく、家族全員が心にぽっかりと穴が開いたように、言いようのない喪失感と非現実性を抱えて、悶々と日々を過ごす一方で、時間だけが容赦なく淡々と進んでいくのを感じていた。


 今思えば、会話自体が家でも学校でも減っていたし、たまに口を開いても澱んだトーンの溜息交じりの台詞しか呟いていなかった。


 そうした状況が好転し始めるのは、佐伯先生との出会いと微妙な憧れの気持ち、そして亡き兄が紡いだクラスメイトの彩乃とRPGという趣味との巡り会いだった。


 「西原さんのお兄さんが事故で亡くなったっていう噂を聞いたのは少し後のことで、それを知ったらなんかこう…。自分に何もできないのが、虚しい?寂しい?もどかしい?っていうか…」


 「うん、なんか、それは、わかる気がする…」


 詩音にしても、状況は違えど似たような思いを抱いたことはある。だから理解そのものはできる。しかし、それでも…。


 「でも結局、僕には何も言いだす勇気がなくて、西原さんに声をかけることもできなくて…。そのうち、西原さんの笑顔がだんだん戻ってきちゃって、それは正直言って嬉しかったけど、僕の知らないところで全部解決していっちゃうのは、悔しいっていうか…」


 「ごめん、私、全然気づかなかったよ、ほんとにごめん…」


 詩音はとりあえず越谷に謝っておくことにした。結論から言って、先々謝り倒す羽目になるのは明白だからだ。それは越谷に対してというより、むしろ詩音自身に対する言い訳でもあった。


 「西原さんは別に謝らなくていいよ。何もできなかった、しなかったのは僕のほうだし、何となく、西原さんの元気になった理由がわかってきたから…」


 「理由…?」


 詩音に思い当たる節はない。強いて言えば、佐伯先生に尊敬と些かの憧れを抱き始めたからか。あるいは、RPGを通じて彩乃たちと仲良くなり、新しい空想と妄想の世界を手に入れたからか、くらいのものである。


 「その理由に最近ようやく思い至って、凄く遠回りしたけど、僕の、僕自身の気持ちに気付き始めたら、何かいろいろモヤモヤの謎が解けてきて…。一方的で自分勝手すぎるとは思うけど、僕は西原さんの近くにいたいな、って…」


 「はぁ…、うん、わかるけど…ね…」


 戸惑うばかりの孤立無援な詩音である。もっとも越谷からしても、絶賛孤軍奮闘中なのだから、同盟軍のいないのはお互い様、文句は言えない平等な均衡状態ではある。


 そして、ついに衝撃の爆弾は投下されるのだった。もはやハリボテ勇者には為す術はない。


 「だからその、西原さん、僕と付き合ってくださいっ!」


 「はぁ…、は、はぁあぁー?」


 唐突の高め直球、まさに火の玉ストレートである。思わず反射的にバットが出てしまいそうになるが、ここで派手な場外ホームランで応えるわけにもいかない。


 人間、あまりにびっくりすると、本当に石化してしまうものだ。


 何もかもが真っ白になった詩音の視界と脳裏で、理解できるが理解できない越谷の告白が幾度となく繰り返される。恐らくは、喋っている越谷のほうも舞い上がって、いったい何をどう伝えているのか混乱を極めていることだろう。


 詩音は驚きのあまり、大きな瞳をさらにいっそう輝かせて、目の前の越谷の姿を呆然と見つめ返すことしかできなかった。


 詩音からすれば、まさに青天の霹靂、予想外想定外問題外の展開である。なにしろ先ほど本人から言われるまで、昨年も同じクラスだったことすら失念していたほど、意識すらしていなかった存在の男子が相手なのだから。


 詩音は困惑の頂点を極めたような表情を浮かべて、ぐるぐると脳内シミュレーションを繰り返す。


 何はともあれ、詩音としてはこの話、断る以外の選択肢はない。詩音の想い人はたった一人、憧れの担任教師、佐伯先生だけなのだから…。


 とはいえ、恋する乙女としては、目の前の必死にその想いを訴えている男子の心情も理解はできる。同情心か共感かはさて置いて、立場的には詩音と何も変わらないのだ。


 むしろ、正々堂々と好きな相手に気持ちを伝えるべく、面と向かってきっちりと告白してきた度胸と熱意には感服するほかはない。詩音には未だにできずにいる行動なのだから。


 そう、RPG…特にコンピュータゲームにはよくある展開である。


 開始当初こそワクワク感先行でゲームを進めていくものの、ある辺りからレベルも上がりにくくなり、思うようにクエストも進行できず、日々がルーティンワークの魔物討伐に明け暮れるようになってくると、さすがに中弛みというか、飽きも来ようというものだ。


 そんな折、幾度目かの挫折の後、魔王討伐の本筋とはさほど関係のないサブキャラクターに、秘かな想いを告げられる…。


 『魔王の討伐なんて別の誰かに任せて、あなた自身が幸せになる道を選んでも良いはずよ…。あなたの心と体がこれ以上傷ついてしまわないように、今とは違う生き方を望んでも、神様はきっと許して…いいえ、必ず祝福してくれるはず…』


 確かにその通りなのだろう。実際に同じゲームのプレイヤーの数だけ、有象無象といえるほどに勇者はいるのだ。自分一人が途中でのリタイアを決めこんでも、きっと誰かが魔王討伐を果たすことだろう。


 それにゲームの中の話であれば、ここでありがたい申し出を一度断りつつ魔王討伐を志しても、駄目ならリセットを繰り返せばいいだけの話だ。時間はかかるがいずれ目的は果たせる日も来るだろう。


 それでもなお、もはやどうにもならない手詰まりとなれば、サブキャラクターの告白直後のデータに戻って、別の幸せな人生をやり直せばいい。


 だが、残念ながらこれは現実の話である。


 詩音と越谷は、意図せずとも互いに言葉という刃で切り結ぶ、リアルで痛い恋という戦いを繰り広げなくてはならない。越谷が想いという名の真剣を振るう覚悟を決めた以上、詩音が木刀や竹刀で、ましてや丸腰で受け流すことは無理な話だ。


 詩音は静かに目を閉じて、大きく深呼吸して覚悟を決める。


 そう、この場にいる二人が真剣勝負に挑むなら、どちらも傷つかない、傷つけない、などという理想論、非現実的な幻想は捨て去るしかない。


 相容れない想いが互いにぶつかり合う以上、安易な妥協は致命傷になるかもしれない。


 だから、たとえどんなにへっぽこな勇者でも、ここで易々と伏兵に討ち取られるわけにはいかない。目的を果たすためには、甘美な誘惑を断ち切って進み続けるしかない。


 縋りつく姫君を振り払い、苦難の旅に出てこそ勇者なのだから…。


 「ごめん…、ごめんなさい。越谷君の気持ちはわかるし、嬉しいんだけど…、私ね…、実はその…好きな人が…」


 「…うん、何となくわかるよ。相手が島本君なのか、あの金髪少年なのかは知らないけど、それでも僕は…西原さんのことを諦めたく…」


 互いに最後まで言葉を紡ぐことができずに、途切れた思いの先には重すぎる沈黙が残されるだけだった。


 テーブルの上のすっかり冷めた食べかけのバーガーが、そんな二人の初々しくも切ないやり取りを、じっと黙ったままで見守っていた。


 再び長すぎる悶々とした時間が訪れる。話が一段落したかに見えるのに、状況はさらに低く深く澱んで解決の糸口が掴めない。


 店内に流れる爽やかに軽やかな音楽だけが、やけに大きく二人の耳を刺激していた。その心地よさが、かえって二人のもどかしい心に漣をたてていく。


 「おー、お待たせ―! あれ? どうしたのかなぁ、二人とも…?」


 風歌の明るい声が唐突に沈黙を破る。恐らく凡その察しはついているだろうに、あからさまに白々しい登場である。


 「なんだ越谷、お前、一足先に『残念会』始めちまったのか? 気が早いやつだなぁ…。長期戦で行けって言ったじゃねぇか…」


 「あー、そっか、残念会って、そっちだったのか…。それはボク、全然考えてなかったよ…」


 吉川と彩乃が極めて明るく、茶化すようなニュアンスでこの場の雰囲気の転換を図る。


 ここが人生の大きな分水嶺、大転換点、つまりはフラグの選択肢選びの場面だと本能的に理解した詩音が、ゲーム脳全開で状況を整理にかかる。


 「残念会にはまだ気が早いよ、多分。お互いできることはまだいろいろあるし、きっと今追っかけてる正解じゃない正解も、きっとあるんだよ。だから、結論は未来になってからしかわからないよ」


 言っている詩音本人が、自分でも何を言いたいのか微妙にわかっていない、極めて支離滅裂な発言である。実際どうとでも捉えようはあった。


 「希望は…、僕の希望は、そこにあるのかな…、西原さん?」


 越谷の縋るような潤んだ瞳がそう問いかけると、詩音は静かに、そして大きくひとつ頷いてみせた。


 ―あれ、この展開って…、確かさっき、私が佐伯先生に…―


 無理難題を吹っ掛けて勝手に縋りつく、扱いにくい困った生徒はここにもいたんだなぁ…と、自分の事はすっかり棚にあげて、僅かに呆れ顔を心の中で浮かべながら、詩音は奇妙な仲間意識と連帯感を感じていた。


 だから、なのかもしれない。詩音の発言はより一層、どうとでも良いように受け取れる曖昧過ぎる色合いを深めていった。


 「未来のことなんて、きっと誰にもわからないんだよ。だからあらゆる可能性はゼロじゃない、かもしれない…? と思うし、もちろん他にも選べる道は沢山あるんだよ。たぶん正解なんて、何処にもない…んじゃないのかなぁ? みたいな感じ…だと思う…よ?」


挿絵(By みてみん)



◇80 魔王と勇者の二人三脚 に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください


●ご注意

 この連作小説は、原則的に毎週月曜日の10:00に更新掲載しています。

 第一章は別途掲載中の「あの世とこの世の冒険譚」を分割したもので、第二章以降はその続編部分となります。

 現在、第六章を2024/7/1より掲載中となります。



 真鶴あさみです。初めまして&毎度どうもです。

 完全に長期週刊連載となってしまった「よよぼう」ですが、お陰様で少数ながらも固定の読者様にご支援いただけて、大変感謝しています。

 今後ともよろしくお願いしますね。


 一見、学園ラブコメ風のこの作品ですが、いわゆる『RPGあるある』を軸にした趣味物語でもあります。懐かしのテーブルトークRPGの世界を、少しでも楽しんでいただければ嬉しく思います。

 もちろん、本題である詩音たちの恋の行方にも忘れずに注目してくださいね。


 挿絵用のイメージ画像は、KISSの「カスタムオーダーメイド3D2(COM3D2)」にて作成しています。知識と能力の不足で、再現精度があまり高くないですが、ご容赦ください。


 それではこれからも、詩音たちRPG同好会のお馬鹿な冒険の数々を、お楽しみいただけると嬉しいです。

 ご意見ご感想、AIイラストなども、切実にお待ちしています。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、只今、絶賛放置中

■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定

■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

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