◇76 自ら拓く我の道
「よよぼう」第五章までのあらすじ
突然の思いつきでRPG同好会を立ち上げた、中等部二年の西原詩音は、様々な伝手で強烈な個性の仲間たちを集めていく。しかし、その隠されたもうひとつの目的は、憧れの担任教師佐伯十三との縁を深めることにあった。
波乱の夏が過ぎ、秋も半ばを迎えるころ、RPG雑誌編集者の道脇環が、かつての佐伯先生の教え子であり、詩音同様の想いを抱いていたことが判明する。過去の環を継いで決意を新たにした詩音は、もうひとつの将来の夢を胸に抱き始める。
同じころ、後輩の山科美雅は、複雑な家庭事情を巡って悩んだ末に、ついに実父と暮らすことを決意し、笹嶋美雅となる。
秋の終わりが近づく中、それぞれの想いと願いが次第に明らかになっていく。と同時に、その入り組んだモザイク模様のパズルはより一層複雑さを増していく…。
主な登場人物
□女性/■男性
《RPG同好会の面々》
□西原 詩音
担任の佐伯先生に想いを寄せる中等部二年生。RPG同好会の会長だが、威厳の欠片もない引っ込み思案娘。
何故かトラブルに好かれる体質で、意地と気合で難題に立ち向かう、出たとこ勝負の精神的ハリボテ勇者。
□白岡 彩乃
詩音のクラスメイトで、ホビーショップ『Colline Blanche』の看板娘。明るくマイペースなボクっ娘で、根っからの商売人気質。
店に集う年下の子供たちからは人気の高い姉貴分だが、従姉弟の謙佑に初恋のリベンジを誓う乙女でもある。天邪鬼な鉄砲玉トラブルメーカー。
□香坂 夢莉
詩音の幼馴染みで隣のクラス。体操部の期待の星でもあり、男女問わず人気の高いスタイリッシュ女子。
毒舌系百合剣士といったクールな雰囲気ながら、人情に脆い苦労人。実質的な詩音たちのストッパー兼防波堤。
■島本 涼太
詩音と夢莉の幼馴染み。夢莉のクラスメイトで家もお向かいさん。夢莉にあからさまな挑戦を続ける残念トリックスター。
夢莉にいいように使われつつ、思慮深く陰ながら支える縁の下の力持ち。自称、ジョナサンの兄貴分。
□山科 美雅
中等部一年の体操部員。夢莉を目標に鍛錬を欠かさぬ努力家。気分屋で周囲から孤立しがちな人見知りツンデレハリネズミ娘。
複雑な家庭環境のせいでかなり達観した言動も窺える。戸籍上は新たに笹嶋姓となったが、学校内では山科で通している。
□神楽 樟葉
図書委員の中等部三年生で、地元名家の一人娘。完璧主義で融通の利かない修道女的性格も、詩音たちの影響で丸くなりつつあり。
実際は、次期当主としての境遇と自分自身の目標に悩む年相応の少女であり、渾名の「鋼鉄の冷嬢」とは程遠い温和な性格。詩音のライバル?を公言中。
■ジョナサン ウェリントン
樟葉の遠縁の金髪男子。美雅のクラスメイト。明るく陽気な爽やか系男子で、編入早々から女子の注目度も高い。涼太とは凸凹コンビの間柄。
偶然か必然か、詩音の遭遇するトラブルの救世主的な存在で、詩音にとっては微妙に気になる存在。
《その他の人物たち》
□メアリー ウェリントン
樟葉の遠縁の金髪女子。初等部六年生の快活児童。ジョナサンの妹で、かなり偏りまくった日本文化に憧れている。
次世代RPG同好会の予備軍として、詩音たちに帯同することも多い。容姿も年齢以上に早熟可憐で、詩音や彩乃のコンプレックスの源になることも。
■佐伯 十三
詩音と彩乃のクラス担任の国語教師。RPGの造詣も高く、心理描写重視の演劇スタイルが得意。なし崩しにRPG同好会の責任者となる。
詩音の憧れの存在であり、生徒からの評判も良好の好青年だが、環との経緯から生徒との距離感に戸惑いを感じる一面も。
■鷹取 謙佑
ホビーショップ『Colline Blanche』のアルバイトの大学生。彩乃の従兄。RPGのほか、様々な玩具に詳しい。
相応にイケメンだが、かなりアバウトな性格で、一見掴みどころがない存在。彩乃の良き相談相手であり、目下の攻略目標。
□道脇 環
RPG雑誌『月刊TTM』の編集部員で、謙佑の先輩。気さくなゴスロリ美女。本名は「大路 円」。
過去の自分に似た境遇の詩音に、分不相応な過大な期待を抱いているようで、半ば世話焼きのお節介お姉さんと化している。
◇76 自ら拓く我の道
詩音たち中等部の体育祭はなおも続く。
詩音たちの騎馬戦での予想外の奮戦により、一瞬の逆転劇に成功したかにみえた白軍だったが、その後次第に赤軍にじりじりと差を詰められ、現在は互いに抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げていた。
詩音自身は、ついさっき終わったばかりの二年生による全員参加の個人競技、お約束の百メートル短距離走で惨敗を喫し、出番の全てを終えていた。
つまり、もはや詩音がどう足掻こうが為す術はない。白軍の勝利は、完全に味方の奮闘に期待するしかない、いわば人任せの状態になったことになる。
「ど、どうしたの、いったい? ちょっと待って、美雅ぁ!」
今、詩音たちのいる白軍二年の待機場所というか、仮設の応援席というか、その一角から唐突な彩乃の悲鳴が上がる。詩音が訝し気にそちらの様子を窺うと、美雅に強引に腕を引っ張られて連行されていく哀れな彩乃の姿があった。
そう、今は一年生による借り物競走の時間だ。美雅がいったいどんなお題を引き当てたのかはわからないが、彩乃を必要としているということは、恋敵かライバルか、まぁそんなところなのだろうと容易に想像できた。
「おとなしく諦めて、ほら、行ってきなって、彩乃」
「いや、そうなんだけど、これって結局、赤軍の得点になるわけじゃん?」
それはそうだ。白軍には詩音と彩乃のみしかいない。もちろん他のクラスメイトで協力的な仲間もいるにはいるが、RPG同好会の面々の残りメンバーは全て敵の赤軍所属である。
ここで彩乃が連れていかれるということは、美雅の得点、つまりは赤軍の得点となってしまうことになる。納得しがたいがそういうことである。
「あのぅ、うたぁねい、ちょっといい、ですか?」
「はいぃいい?」
彩乃の成り行きを気にかける詩音に突然声をかけてきたのは、美雅と同じく一年の金髪少年、ジョナサンである。樟葉の家の居候?にして、もちろんRPG同好会の貴重なメンバーだ。
「うたぁねい、私にはあなたが必要でーす、どうか付き合ってくださーい、お願いしまーす、おぅけぇい?」
「いや、あの、何ていうか、その…大胆過ぎ…」
どう聞いてもまるで告白の台詞である。もちろん、日本語のニュアンス的には間違ったことはひとつも言っていない。ジョナサンの言いたいことは実に的確に表現されているわけであるが、傍から聞いている周囲の皆の印象も、正面切って見つめられている詩音本人の印象も、その趣旨から大きく逸脱して、あらぬ方向へと盛り上がりをみせる。
「おぉ、体育祭でどさくさ紛れに先輩に告白とは大胆な一年じゃねぇか! さすが西原、妙なところで人気者だな、まったく…」
「あぁ、うん、確かに聞いちゃった。いいねぇ、金髪年下ボーイに大胆告白かぁー、ちょっと羨ましいねぇ…」
騎馬戦で文字通り詩音を支えてくれたクラスメイトの吉川と風歌が、ジョナサンの大胆な台詞をわざと曲解して揶揄いはじめる。但し、その矛先は当のジョナサンにではなく、告白相手の詩音に向けられていた。
「いや、そんなんじゃ…。これってほら、借り物競走だから…」
「またまたぁ! 詩音も満更でもないくせにぃ!」
風歌に背中を押されるように、詩音はジョナサンの前に差し出された。
「ほら、詩音のこと、よろしく頼むよ? あたしの友達を雑に扱ったらただじゃ置かないからね!」
「あ、ちょっと、待っ…」
「いえぇす! 私はうたぁねい、とても大好きですから、大事にしますね! おぅけぇい、うたぁねい、れっつごぅ、うぃずみぃ、ぷりぃず!」
そう言われては詩音も悪い気はしない。むしろ日本の男子からなら、照れくさくて人前では絶対に言われないだろう台詞である。この嬉し恥ずかしなやり取りを不満に思う者などいるはずが…。
「あ…!」
詩音はジョナサンに手を引かれてその場を後にする。無意識に振り向いた詩音の瞳に、どこか寂しげな、どこか苛立たしげな、その表情を曇らせて顔を背けたままの越谷の姿を焼きつけながら…。
結果的に、一年生による借り物競走では赤軍が大勝する結果となった。不本意ながら詩音と彩乃はその片棒を担ぐことになってしまったわけであるから、その心中は複雑だ。
「うー、ボク、納得いかないよ…」
「だよねぇ…」
元の待機場所兼応援席に戻ってくるなり、口々に溜息交じりの愚痴をこぼし合う詩音と彩乃である。
その二人にそっと近づく人影がひとつ。クラス担任の佐伯先生だ。
「おーい、皆元気にやっているか? 体調を崩した者はいないか? 張り切り過ぎて羽目を外すと、思わぬ怪我に繋がるからな。皆最後まで油断しないで頑張ってくれよ…」
はぁーい、と覇気のない声があちこちで上がる中、さらにやる気のない、燃え尽きたような表情の詩音が、じっと佐伯先生を見つめていた。
佐伯先生の受け持ち教科は国語全般、特に二年生の詩音たちは現代文の科目で日々お世話になっている。
だが今日はさすがに体育祭だけあって、普段の微妙なワイシャツにネクタイ姿ではなく、正直似合っているとは言い難いトレーニングウェア、つまりジャージ姿だった。
学校外での合宿や、個人的にも病院での偶然の出会いや、ホビーショップで休日に見かけたりと、他の生徒たちの知らない佐伯先生の意外な日常の姿を知る詩音と彩乃であるが、改めて佐伯先生のジャージ姿を見せられると、思わず不思議な微笑みが浮かんでしまう。
「どうした西原、気持ち悪いニヤニヤ顔で…」
「え、あぁ、先生のジャー…」
「あー、こいつさっき、一年の男子に思いっきり派手に告られてたんで、舞い上がってるんですよ、先生…」
「確かにあれは、聞いてるこっちが恥ずかしいやつだよねぇ…」
佐伯先生のさり気ない疑問に詩音が答える隙を与えず、吉川と風歌が暴露話を盛り込んで反応する。
「いや、ダメダメ、それ違う! 絶対に違うから!」
よりによって佐伯先生にそんな話をされてしまっては、詩音の立場としては気が気ではない。何とかして否定しておかないと、外野に勝手に外堀を埋められかねないうえに、肝心の佐伯先生にも既成事実と受け取られかねない。
あまりに必死なその様子に僅かに驚きの表情を浮かべた佐伯先生は、すぐに告白相手の一年男子に思い至ったのか、少し呆れ気味の溜息をついた。
「あ、あぁ、なんだ、あれか…。つまり、そういうことか…」
「そ、そういうこと、です…」
具体的に言わずとも、詩音と佐伯先生は通じ合っていた。そう考えれば、二人の間の精神的な距離感は、当人たちが思っている以上に遥かに近づいているのかもしれない。
「それにしても浮かない顔だな? 西原も白岡も…、なんだ、越谷もか?」
「越谷君…?」
佐伯先生に指摘されて改めて越谷の様子に気づいた詩音は、そっと視線をそちらに向けて、越谷の俯きがちな表情を探るように見つめる。
「いやぁ、ちょっと訳ありで、赤軍には負けたくないんだけど、もうボクたちの出番はなくて…」
「なんだ白岡、香坂たちとまた何か賭けでもしたのか?」
「あ、いや、そうじゃなくて…、夢莉は関係ないんだけど、もっとこう、なんていうか、超めんどくさい話になってて、さ…」
「お前らは本当に毎日が飽きない展開だなぁ…。毎日の学校生活が楽しくてしょうがないだろう…」
正直に、しかし絶妙に核心部分を避けてぶっちゃける彩乃の言葉は、佐伯先生には表面的にしか理解して貰えない。当たり前といえば実に当たり前な展開である。
「佐伯、先生…、お願いが、あります…」
「ん、何だ、改まって? もしかして、西原もその賭け事に加わっているのか?」
下から見上げるようにどこか愁いを帯びた表情で訴えかける詩音の様子に、少し怯みながらも佐伯先生はそう答えて、じっと詩音を見つめ返す。
「勝ってください、佐伯先生! お願いです、もし先生が負けたら、私…」
「ん? 先生に勝ってくれ、っていうのは、つまり教職員レースの話か?」
「もう、それしかないんですぅ…。負けたら、私、困るんですぅ…」
卑怯技である。もちろん単純思考の詩音にそんな頭脳的な計算があるはずもない。とはいえ、この状況でそう訴える涙目の女子生徒を前にして、動じない男性担任教師が果たしているだろうか。
「うわぁ…」
その場の皆の心中を代表して、彩乃が心の叫びを口にする。この抽象表現がまさに全ての状況を的確に言い表していた。
「とはいえなぁ…。負けるつもりはないが、さすがに勝ちを二つ返事で約束できる自信もないぞ?」
「うー、わかってます、わかってる、けどぉ…」
「あー、佐伯先生が詩音を泣かしてるぅ! これは事件かなぁ?」
「ば、馬鹿を言うな、赤木! 先生は…、あれだ! と、とにかく勝てばいいんだろう? わかったから、もう泣くな、西原…」
「ふぁい、ありがとう、ごじゃいまふ、よろしく、おねがいしまふ…」
状況はまさに混沌である。正直な佐伯先生の自己評価に対して、縋りつく詩音と追い打ちの言葉をかける風歌に流されるまま ついに観念するしかない悲運の担任教師、佐伯先生はそう口走るのである。
そして始まる教職員レースである。体育関連の教師を最終走者にした、リレー形式の障害物競走の一種だ。
各学年各クラスの担任教師はもとより、受け持ちの担当教科ごとに選抜された先生方や、普段は裏方ともいえる保健室や図書館や事務関連の職員も含めて、第八走者プラスアンカーの九人構成のチームが八組。もちろん紅白それぞれ四組ずつの布陣である。
国語教科と同時にクラス担任でもある佐伯先生は、担任枠での選抜で第二走者として出走するも、隣のクラスで夢莉の担任でもある体育教師、水野先生と競うことになる。
ルールとはいえ、体育教師が担任枠で出走するということは、都合二名、あるいはそれ以上の体育教師を含めたチームがあるということである。
詩音たちの白軍の不利は、こういった些細な籤運の悪さにも影響されていた。
「大丈夫かな、佐伯センセ…」
「さぁねぇ…、でもまぁ、詩音の涙に流されて、勝つ!って皆の前で宣言しちゃったわけだしぃ? 半端な負けっぷりは、さすがに、ねぇ…」
応援席の最前列に陣取って見つめる彩乃の呟きに、風歌が揶揄い半分の明るい声で答える。
「どっちにしろ、相手が水野じゃ分が悪い、っていうか、ありゃ反則ってもんだろ?」
吉川が不満げに素直な感想をぶちまける。
「ルールだし仕方ないけど、まぁ、国語教師と体育教師で正々堂々勝負! ってのは、あたしとしてもちょっと納得できないよねぇ…」
「ところでお前ら、何なんだそのカッコは?」
吉川が訝しげな視線で舐めるように、目の前の彩乃と風歌の後ろ姿を見つめながら、疑問を口にする。
「あーこれ? もうボクたちの出る競技は終わっちゃったから、それじゃあ応援に徹しよう、ってことで…」
「あれあれぇ? 吉川もぉ、あたしの貴重なミニスカ姿がぁ、気になっちゃう感じかなぁ?」
先ほどまでの色気のない体操服姿から一変、チアガールに衣装替えを果たした彩乃と風歌の年相応に健康的な愛らしさに、吉川は半ば呆れながらもどこか感心したように唸る。
「はぁ、間に合ったよ、ぎりぎりセーフだよ…。っていうか、二人とも、先に行っちゃうなんて酷いよ…」
「遅いって、詩音ぇ! あぁ、うん、カワイイカワイイ!」
クラスメイトの二人、しかもチアガール姿での応援を言い出した張本人に置き去りにされ、慌てて駆け戻ってきた詩音が、僅かに息を切らせて合流する。
「西原さんも…その恰好なんだ…」
いち早く詩音のチアガール姿に気づいた越谷が戸惑いがちに声をかけると、急に意識し始めたのか、途端に恥ずかしそうに身をくねらせる詩音である。
「あ、あー、えーと、うん…。その…全然似合わない、でしょ? ほら、私、小さいし…」
「ううん、大丈夫、とても素敵で、かわ…。いや、何ていうか、いい感じに、いい感じ…かな」
越谷は正直な個人的感想を隠しつつ、当たり障りのない表現でその場を凌ぐ。
「そっか、良かった、ほっとしたよ…」
たとえそれがお世辞の一言であっても、詩音は僅かに胸を撫で下ろす。
「西原、お前はちっこいけど、かえって元気いっぱいって感じでイイかもな…」
「え、何なにぃ? 吉川って、こういうちっちゃなミニスカ元気っ娘が趣味だったのぉ? わぁーお、なんか意外ぃ…。ていうか、オヤジくさぁ…、あたしドン引きぃ…」
「うっさいわ! カワイイって意味だろうが、他意はねぇよ!」
吉川のチアガール詩音に対する素直な感想を茶化しながら、風歌が揶揄うような呆れたような視線を送る。
「でしょでしょ! これでボクたちが応援すれば、佐伯センセもきっと張り切ってくれるはず!」
彩乃が満面の笑みでポーズを決めにかかると、それまで沈黙していた越谷がようやく重い口を開いた。
「頑張って貰わないと困る…。西原さんの願いを叶えるために、死ぬ気で頑張ってくれないと…」
「いやぁ、さすがにそこまでは…うーん。越谷の言いたいことはわかるけど、ボクも詩音も、もう誰にも死んでほしくはないからね…」
そう口にした彩乃の表情が曇る。
そもそも彩乃が詩音と知り合ったきっかけが、詩音の兄の事故死なのだ。亡くなった者が引き寄せた運命的な出逢い、といえば聞こえはいいが、それは自分たちに都合の良い解釈をし過ぎだろうと思える。
彩乃にとっては淡い初恋…なのかどうかも自覚が薄いが、とりあえずそんな雰囲気の、気になる年上の憧れのお兄さんだった。
詩音にしても、かけがえのない家族の一員、生まれた時からずっと傍にいた優しい自慢のお兄ちゃんなのだ。
「あ、ほら皆、せっかくだから応援するよ? 死なない程度に頑張ってください、佐伯先生、信じてますぅ!」
詩音は、微妙に悪化し始めるこの場の雰囲気を一掃しようと、努めて明るく大きな声で派手なポーズの応援を始めた。
「佐伯先生! 必ず勝ってください、お願いですぅ!」
「絶対勝つんだ、頼んだよー! 詩音を泣かせるんじゃないよー!」
「あー、いや、風歌、それなんか違うし…。ん、あれ? ひょっとして、違わない、のかも…? とにかく、佐伯センセー、ボクのためにも頑張ってよねー!」
彩乃も気持ちを切り替えて、とりあえず目前の勝利を祈るしかない。
そして、生徒たちの様々な想いをのせて、教職員レースの開始の号砲が響き渡った。
◇77 呆気ない終戦と戦後処理 に続く
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●ご注意
この連作小説は、原則的に毎週月曜日の10:00に更新掲載しています。
第一章は別途掲載中の「あの世とこの世の冒険譚」を分割したもので、第二章以降はその続編部分となります。
現在、第六章を2024/7/1より掲載中となります。
真鶴あさみです。初めまして&毎度どうもです。
完全に長期週刊連載となってしまった「よよぼう」ですが、お陰様で少数ながらも固定の読者様にご支援いただけて、大変感謝しています。
今後ともよろしくお願いしますね。
一見、学園ラブコメ風のこの作品ですが、いわゆる『RPGあるある』を軸にした趣味物語でもあります。懐かしのテーブルトークRPGの世界を、少しでも楽しんでいただければ嬉しく思います。
もちろん、本題である詩音たちの恋の行方にも忘れずに注目してくださいね。
挿絵用のイメージ画像は、KISSの「カスタムオーダーメイド3D2(COM3D2)」にて作成しています。知識と能力の不足で、再現精度があまり高くないですが、ご容赦ください。
それではこれからも、詩音たちRPG同好会のお馬鹿な冒険の数々を、お楽しみいただけると嬉しいです。
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