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よよぼう ~あの世とこの世の冒険譚  作者: 真鶴あさみ
小径を覆う落葉の夢
58/112

◆57 彼女なりの最終回答

「よよぼう」第四章までのあらすじ



 とあるきっかけからRPGに興味をもった中等部二年の西原詩音にしはらうたねは、憧れのクラス担任の国語教師、佐伯十三さえきじゅうぞう先生を巻き込んで、念願のRPG同好会を設立する。


 早速会長に祭り上げられた詩音の弱気で引っ込み思案な性格とは対照的な、あまりにも個性的な問題生徒すれすれの仲間たちを従えて、波乱万丈のリアル人生RPG状態の活動は続いていく。


 時に中二女子には手に余る人生の難題にぶつかり、時に入り組んだお互いの人間関係に一喜一憂し、それぞれの夢と願いを叶えるために奮闘しつつ、早半年が過ぎようとした頃、次第に詩音は未来の自分の進むべき本当の道を探しはじめる。


 親友の白岡彩乃しらおかあやの、幼馴染みの香坂夢莉こうさかゆうり島本涼太しまもとりょうた、後輩の山科美雅やましなみみや、転校生の外国人ジョナサン・ウェリントン、先輩にして宿敵のお嬢様神楽樟葉かぐらくずは…彼女たちいったい何処に辿りつくのか。


 本格的な秋の訪れとともに、詩音たちの運命は大きく変化をみせつつあった。




主な登場人物

□女性/■男性


《RPG同好会の面々》


西原にしはら 詩音うたね

 担任の佐伯先生に想いを寄せる中等部二年生。RPG同好会の会長だが、威厳の欠片もない引っ込み思案娘。

 何故かトラブルに好かれる体質で、意地と気合で難題に立ち向かう、出たとこ勝負の精神的ハリボテ勇者。


白岡しらおか 彩乃あやの

 詩音のクラスメイトで、ホビーショップ『Colline Blancheコリンブロンシュ』の看板娘。明るくマイペースなボクっ娘で、根っからの商売人気質。

 年下の子供たちからの人気が高い姉貴分だが、従姉弟の謙佑に初恋のリベンジを誓う乙女でもある。天邪鬼な鉄砲玉トラブルメーカー。


香坂こうさか 夢莉ゆうり

 詩音の幼馴染みで、隣のクラス。体操部の期待の星でもあり、男女問わず人気が高いスタイリッシュ女子。

 毒舌系百合剣士といったクールな雰囲気ながら、人情に脆い苦労人。実質的な詩音たちのストッパー役。


島本しまもと 涼太りょうた

 詩音と夢莉の幼馴染み。夢莉のクラスメイトで家もお隣さん。夢莉にあからさまな挑戦を続けるトリックスター。

 夢莉にいいように使われつつ、思慮深く陰ながら支える縁の下の力持ち。自称、ジョナサンの兄貴分。


山科やましな 美雅みみや

 中等部一年の体操部員。先輩の夢莉を目標に鍛錬を欠かさぬ努力家。些か情緒不安定な面もあり、周囲から孤立しがちな一匹狼。

 複雑な家庭環境で育ったゆえか、年齢に似合わない達観した言動も垣間見える、人見知りツンデレハリネズミ娘。


神楽かぐら 樟葉くずは

 図書委員の中等部三年生で、地元名家の一人娘。完璧主義で融通の利かない修道女的性格。

 実際は、次期当主としての境遇と自分自身の目標に悩む年相応の少女であり、渾名の「鋼鉄の冷嬢」とは程遠い温和な性格。詩音のライバル?を公言中。


■ジョナサン ウェリントン

 樟葉の遠縁の金髪男子。明るく陽気な爽やか系男子で、編入早々から女子の注目度も高い。涼太とは凸凹コンビの間柄。

 偶然か必然か、詩音の遭遇するトラブルに関わる救世主的存在となることも多く、詩音にとっては微妙に気になる存在。



《その他の人物たち》


□メアリー ウェリントン

 樟葉の遠縁の金髪女子。初等部六年生の快活児童。ジョナサンの妹で、かなり偏りまくった日本文化に憧れている。

 次世代RPG同好会の予備軍として、詩音たちに帯同することも多い。容姿も年齢以上に可憐で、詩音や彩乃のコンプレックスの源になることも。


佐伯さえき 十三じゅうぞう

 詩音と彩乃のクラス担任の国語教師。RPGの造詣も高く、心理描写重視の演劇スタイルが得意。なし崩しにRPG同好会の責任者となる。

 詩音の憧れの存在であり、生徒からの評判も良好の好青年だが、生徒との距離感に戸惑いを感じる一面も。


鷹取たかとり 謙佑けんすけ

 ホビーショップ『Colline Blancheコリンブロンシュ』のアルバイトの大学生。彩乃の従兄。RPGのほか、様々な玩具に詳しい。

 相応にイケメンだが、かなりアバウトな性格で、一見掴みどころがない存在。彩乃の良き相談相手であり、目下の攻略目標。


道脇みちわき たまき

 RPG雑誌『月刊TTMテーブルトーク・マンスリー』の編集部員で、謙佑の先輩。気さくなゴスロリ美女だが、実態は謎の多き人物。

 過去の自分に似た境遇の詩音に、分不相応な過大な期待を抱いているようで、半ば世話焼きのお節介お姉さんと化している。


◆57 彼女なりの最終回答



 会長先輩である西原詩音にしはらうたねが、RPG同好会の出展会場で奮闘しているちょうどその頃、新加入の後輩である山科美雅やましなみみやは、文化祭で賑わう中等部の校舎内を当てもなくさすらっていた。


 独りぼっちである。いくら美雅が独りきりに慣れているとはいえ、溢れんばかりの活気に満ちた校内を練り歩くには、やはり少し寂しく心許ない。


 「おー、お姫様じゃん、山科ぁー。イケてるイケてる! ねぇ、一緒に写真撮っても良い?」


 「え、あ、その、別に良い、けど…ありがと…ございます」


 道すがら体操部の先輩女子に声をかけられ、その普段の美雅の様子からは想像ができないフリフリのドレス姿を褒められると、嬉しさより気恥ずかしさのほうが先に立ってしまう。


 「うん、間違いない! やっぱり山科は、ちゃんとお洒落すればばっちり可愛くなるんだって!」


 「いや、何ていうか、これ、罰ゲーム? みたいなもので…」


 「またまたぁ、謙遜謙遜、元が良いんだから、ひっそりと地味に人生過ごすのは勿体ないよ?」


 先輩は笑顔のままでスマートフォンを翳しながら、美雅の肩をさり気なく抱き寄せる。落ち着きのない彷徨った視線のままで、美雅のぎこちない引き攣り笑顔が切り取られる音がする。


 「おっけー、じゃあ、またね、山科ぁー」


 慌ただしくパタパタと去っていく先輩を呆気に取られて見送りながら、美雅は小さな溜め息を零す。


 「すみません、山科美雅さん、ですよね?」


 再び廊下を歩きだそうとした時、その背後から唐突に美雅を呼び止める女性の声が投げかけられた。


 「はい、そうですけど…」


 振り向きながら声の主を見定めるが、その相手に見覚えはない。


 さて、誰だろう、と美雅は記憶の中の引き出しを総当たりするが、どうにも目の前の女性には心当たりがない。


 品の良い歳相応に落ち着いた服装から察するに、いい加減過ぎる美雅の両親の知り合いという事はないだろう。仮にもしそうであれば、高級でこそあるが悪趣味極まる容貌になるのだろうから。


 「御免なさいね、急に声をかけてしまって。私は笹嶋佳苗ささしまかなえといって、笹嶋武生ささしまたけおの家内です」


 「笹嶋…パパ、お父さんの奥さん?」


 美雅は驚きを隠せない。先日の校門前の立ち回りで、実父の再襲撃にこそ警戒を怠らなかったものの、まさかその伴侶が文化祭当日に学校にまで乗り込んでくるなど、想定外も良いところだ。むしろ、この展開を予想し得るほうがどうかしているだろう。


 「あの、お父さんも一緒に、来ているんですか?」


 警戒を怠らぬように改めて美雅は気を引き締める。再び不特定多数の生徒たちに囲まれながらの痴話騒動になることだけは絶対に阻止しなければならないと、心から願い祈る。


 「来てはいるけれど、私とは別行動で観てまわっているわ。あの人もあの人なりに先日の件でちょっとは懲りたみたいなの。案外、良い薬だったかもしれないわ」


 若干の安堵が美雅の心を満たす。もちろんこのまま何事もなく終わる保証は何処にもないのだが、少なくとも不意打ちを食らう可能性は低いだろう。


 「廊下で立ち話も何だから、何処かの喫茶店にお邪魔しましょう?」


 「はぁ…」


 恐らくこの場できっぱりとお断りすることもできるのだろう。しかし初対面の女性相手に失礼な態度をとるのも、些か気が退けるというものだ。






 手近な喫茶店、といっても当然ながら中等部の生徒が企画したものではあるのだが、とりあえず入ることになったのは美雅自身のクラスが企画した「和風甘味喫茶」だった。


 「いらっしゃいませー、お二人様ですねー」


 裾の短い和装のクラスメイトの女子、宮津綺夏みやづあやかがにこにこと愛嬌ある笑顔を振りまきながら、二人を席へと案内する。


 美雅と綺夏は、少なくとも美雅のほうからすれば、極端に仲が良いというわけではない。


 相手が誰であってもあまり深く興味を持つことが少ない美雅の性格では、気心知れた友人などというものは殆どいない。強いて言えば、最近知り合ったRPG同好会の騒がしい先輩たちということになる。


 それでも別に美雅が誰に対しても無関心で素っ気ない態度なのかといえば、そうでもない。自ら関心を示さないだけで、声をかけてくる誰かを毛嫌いしたり、迷惑に思っているわけでもないのだ。


 天邪鬼といえばその通りだが、綺夏に対してもごく自然に、普通の友人としては認識している。その程度の間柄なら、他に数人入るだろう。だから別に特別ではない。


 「誰? お母さん?」


 「あ、いや、その…」


 「美雅ってば、自分のこと全然話してくれないんだもん。時々私のこと嫌いなんじゃないかって思っちゃうよ」


 小さく耳元に囁く綺夏に曖昧な反応を返して、美雅はゆっくりとテーブルにつく。


 「あの、初めまして。私、美雅さんのクラスメイトで宮津綺夏っていいます。いつも仲良くさせて貰ってます。でも、美雅さんのお母さんがこんな若くて綺麗な人だなんて思いませんでした。全然教えてくれないんですよ、美雅さん。あ、迷惑じゃなかったら、今度遊びに行ってもいいですか?」


 「ちょっと、宮津さん! 待ってよ!」


 綺夏の唐突な自己紹介と自宅への襲撃予告に戸惑いを隠せず、美雅は思わず大きな声を上げようとするが、どうこの状況を説明したらよいかわからず、二の句が継げなくなる。


 「そうね、是非いらっしゃいな。他のお友達も良かったらご一緒にね」


 美雅の固まってしまった言葉を引き継ぐように、佳苗という女性はさらりと事も無げに言ってのける。


 「ありがとうございます。やったー、今から楽しみです。それでは、ご注文が決まりましたら、またお声をかけてください」


 綺夏は再びにこにこ笑顔を浮かべて裏へと引っ込んでいく。彼女に悪意はないのだとわかってはいても、もやもやした複雑な思いが美雅の心を曇らせていく。


 「佳苗…さん? どういうつもりなんですか、あんな約束をして…」


 テーブルの上のラミネート加工されたメニューを眺めながら、ぼそぼそと佳苗に問い質す。


 「あら、せっかく美雅さんのお友達から『若くて綺麗なお母さん』だなんて言って貰えたんだもの、断るのは気が退けるじゃない?」


 「いや、そもそもお母さんじゃないし…」


 仏頂面でメニューと睨めっこを続ける美雅を他所に、マイペースな佳苗は動じることなく、近くに控えた綺夏に声をかけて、早速注文を始める。


 「畏まりました。で、美雅は決まった? 何にする?」


 「三色団子セット…」


 「はい、畏まりました。少々お待ちくださいね」


 一礼して去っていく綺夏を見送って、美雅は更に佳苗に静かな抗議の言葉を投げかける。


 「仮に、もしも誰かを招待するっていっても、いったい何処に呼ぶつもりなんですか?」


 だが佳苗は、なんでこの子はそんなことを尋ねるのだろうか、とでも言わんばかりに美雅を見つめ返す。


 「うちに来れば良いじゃない? 笹嶋の…。こんなことを言うと失礼だけど、山科の家は正直、お友達の女の子を招待するにはあまり良い環境とはいえないと思うし…」


 「ええ、でも私、今はお爺…祖父母の家で暮らしてますから…」


 どちらにせよ、クラスメイトを招待できるような家庭環境ではないことは確かだろう。美雅は佳苗の言葉に相槌を打ちながら、改めて自分の境遇を振り返り、嘆息する。


 「美雅さんは、私が母親じゃ嫌かしら? まぁ、急に目の前に現れて、貴女の母親になりたい、とか言い出しても、戸惑ってしまうのは無理もないとは思うけれど」


 正直に言えば、今さら誰が父親であろうとも、誰が母親であろうとも、美雅にとっては大した問題ではなかった。


 とりあえず言えることは、本当の父親が誰であれ、少なくとも今の母親は間違いなく実母であるという事実だけだ。


 美雅自身、それを絆と呼ぶほど大袈裟には感じていないが、お互いに多少の対立はあっても、関係を否定するほどの嫌悪や憎悪を抱いてはいない。消極的な考え方ではあるが、今まで一度の家出もせずに過ごしてきたのも、心の何処かで「まぁ、そんなものか」と腑に落ちていたからに違いなかった。


 「別に、嫌じゃないですけど、佳苗さんこそ、見ず知らずの大きな娘がいきなり現れて、迷惑なんじゃないですか? パパ…お父さんの身勝手な事情に振り回されたりして、うんざりしてるんじゃないですか?」


 実際問題、こういう話は美雅の意向を無視して、大人たちが勝手に決めてしまうものだ。美雅からすれば、生きていくためにその決定に従うほかはない。さもなければ即刻、路頭に迷うことになる。


 「それは違うわね。美雅さんを笹嶋の家に引き取ってはどうか、と言い出したのは私なの。聞いていると思うけれど、私は身体を悪くしてしまって、子供が望めないのよ。それでも、できたら母親として暮らす夢を叶えられれば、と思っているの。勿論、美雅さんが嫌でなければの話なのだけれどね」


 「はぁ…」


 佳苗の話は意外だった。美雅はてっきり実父が一方的に話を進めているとばかり考えていたのだ。自分の都合で妻子を置き去りにして再婚し、また再び現れては一方的な親権の主張を始めた、と理解していた。しかし事実はかなり、美雅の想像とは異なっていたというわけだ。


 「美雅さん、あなたの将来の夢を叶える手助けをさせて欲しいの。私も武生さんも心からそう思っているから、今すぐにとは言わないけれど、一度ゆっくり考えてみて欲しいの」


 佳苗の真剣な眼差しは輝くように透き通り、美雅の逸らし気味の弱気な瞳を覗きこんでくる。


 「…わかった。うん、ちょっと考えてみる。でも、あまり期待しないでよ? お父さんにも後で会えるといいな…」


 天邪鬼に躊躇いの姿勢をみせつつも、この時確かに、美雅の心の中で何かが大きく変わりつつあった。



挿絵(By みてみん)



◇58 気合で挑む晴れ舞台 に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください


●ご注意

 この連作小説は、毎週月曜日の10:00に更新掲載していく予定です。

 第一章(0~13)は掲載中の「あの世とこの世の冒険譚」を分割したもの、

 第二/三/四章(14~27/28~42/43~56)は続編部分で、2024/3/25に終了、

 引き続き現在の第五章(57~)を、2024/4/1より掲載中です。



 初めましてorこんにちは。真鶴あさみです。

 早いもので、初の毎週連載作品「よよぼう」も開始から一年が経ちました。

 他の多くの作者さんのようなスピード感や勢い、ノリや旬の味覚みたいな魅力には乏しい本作ですが、少数ながらも定期的に読んでくださる読者様に恵まれて、作者としては幸せに感じています。

 今後とも細く長くおつきあいいただけると嬉しいです。


 この作品は、いわゆる『RPGあるある』といった内容を、主人公詩音の中二女子の目線で追っていくものです。とはいえ、いわゆるレトロな古典である対面会話形式のRPG、テーブルトーク型RPGというものについてですが。

 多少の取っつきにくさはありますが、極めて奥深い素敵な世界ですので、ぜひ興味を持っていただけると嬉しいです。


 挿絵の代わりのイメージ画像は、KISS社製のPCゲーム「カスタムオーダーメイド3D2(COM3D2)」で作成しています。

 3Dモデルをいろいろ独自に弄れるみたいですが、あいにく知識がなく、基本的な本体仕様の範疇を出ません。ご容赦ください。


 それでは引き続き、ずれまくりの季節の少女たちの、現実と空想の冒険譚をお楽しみください。

 ご意見ご感想、AIイラストなどもお待ちしています。



■HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)を公開中ですが、只今、絶賛放置中です。

■Twitterもあります(@manazuru7)。

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