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よよぼう ~あの世とこの世の冒険譚  作者: 真鶴あさみ
秋空と乙女心と伝説と
54/112

◇53 小さな小さな大作戦

●「よよぼう」第三部までのあらすじ


 とあるきっかけからRPGに興味をもった中等部二年の西原詩音は、憧れのクラス担任の国語教師、佐伯十三先生を巻き込んで、念願のRPG同好会を設立する。

 弱気で引っ込み思案な会長の詩音を支えるのは、詩音の亡き兄に恋をしていたクラスメイトの白岡彩乃、詩音の幼馴染みで体操部員の香坂夢莉、同じく幼馴染みでお調子者の島本涼太、なし崩しに口説かれた先輩でお嬢様の神楽樟葉たち。


 同好会に発足直後からトラブルが多発。会員募集ポスターの盗難騒ぎを発端にして、夢莉の後輩の山科美雅、神楽家の居候のジョナサンとメアリーのウェリントン兄妹を加えて、仲間の輪は広がっていく。

 賑やかさを増したRPG同好会だったが、比例するようにトラブルも増加していく。佐伯先生を巡る詩音と樟葉、彩乃の従兄の鷹取謙佑を巡る彩乃と美雅、その他諸々の感情がぶつかり合っていく。


 ついに学校を飛び出して一般サークル主催のイベントに出向いた詩音たちは、年上のベテラン達から様々なことを学びつつ、夏休みも様々な体験を通じて仲間たちとの絆を深めていく。

 迎えた夏合宿、到着早々の遭難騒ぎの中、一気に距離が縮まったかに見える詩音と佐伯先生の恋の行方は?

 残暑と初秋の季節、少女たちの心の色彩は次第に大きな変化を見せはじめる…。



●主な登場人物

□女性/■男性


《RPG同好会の面々》

西原にしはら 詩音うたね

 担任の佐伯先生に想いを寄せる、RPGが趣味の中等部二年生。RPG同好会の会長だが、威厳の欠片もない。

 トラブルに好かれる体質で、精神的ハリボテ勇者の意地と気合で挑む引っ込み思案娘。


白岡しらおか 彩乃あやの

 詩音のクラスメイトで、ホビーショップ『|Colline_Blancheコリンブロンシュ』の看板娘。明るくマイペースなボクっ娘で、年下の子供たちからの人気は高い。

 従姉弟の謙佑相手に、初恋のリベンジを誓う鉄砲玉トラブルメーカー。


香坂こうさか 夢莉ゆうり

 詩音の幼馴染みで、隣のクラス。体操部の期待の星でもあり、男女問わず人気が高いスタイリッシュ女子。

 毒舌系百合剣士な雰囲気ながら、情に脆い苦労人。詩音たちのストッパー役。


島本しまもと 涼太りょうた

 詩音と夢莉の幼馴染み。夢莉のクラスメイトでお隣さん。夢莉にあからさまな挑戦を続けるトリックスター。

 夢莉にいいように使われつつ、陰ながら支える縁の下の力持ち。自称、ジョナサンの兄貴分。


山科やましな 美雅みみや

 中等部一年の体操部員。先輩の夢莉を目標に、自己鍛錬を欠かさない努力家。些か情緒不安定な面もあり、周囲から孤立しがちな一匹狼。

 複雑な家庭環境で育ったゆえか、年齢に似合わない言動も垣間見える、いわゆる地雷系の側面も。


神楽かぐら 樟葉くずは

 図書委員の中等部三年生で、地元名家の一人娘。完璧主義で融通の利かない修道女的性格。

 実際は、次期当主としての境遇と自分自身の目標に悩む年相応の少女であり、渾名の「鋼鉄の冷嬢」とは程遠い。詩音のライバル?を公言中。


■ジョナサン ウェリントン

 樟葉の遠縁の金髪男子。明るく陽気な爽やか系男子で、涼太とは凸凹コンビの間柄。

 偶然か必然か、詩音の遭遇するトラブルを解決する王子様的な存在となることも多く、詩音にとって非常に気になる存在。



《その他の人物たち》

□メアリー ウェリントン

 樟葉の遠縁の金髪女子。初等部六年生の快活児童。ジョナサンの妹で、偏りまくった日本文化に憧れている。

 次世代RPG同好会の予備軍として、詩音たちに帯同することも多い。容姿も年齢以上に可憐で、詩音や彩乃のコンプレックスの源になることも。


佐伯さえき 十三じゅうぞう

 詩音と彩乃のクラス担任の国語教師。RPGの造詣も高く、心理描写重視の演劇スタイルが得意。なし崩しにRPG同好会の責任者となる。

 詩音の憧れの存在であり、生徒からの評判も良好の好青年だが、生徒との距離感に戸惑いを感じる一面も。


水野みずの

 夢莉のクラス担任の体育教師で、体操部の顧問でもある。親身な熱血指導が誤解と不評を受ける不運な境遇。

 責任感と筋を重んじる、典型的な昔気質の真面目な教師。


鷹取たかとり 謙佑けんすけ

 ホビーショップ『|Colline_Blancheコリンブロンシュ』のアルバイトの大学生。彩乃の従兄。RPGのほか、玩具系に詳しい。

 イケメンだが、かなりアバウトな性格で、一見掴みどころがない存在。彩乃の良き相談相手であり、目下の攻略目標。


道脇みちわき たまき

 RPG雑誌『月刊TTMテーブルトーク・マンスリー』の編集部員で、謙佑の先輩。気さくなゴスロリ美女だが、実態は謎の多き人物。


◇53 小さな小さな大作戦



 相変わらず詩音と佐伯先生の距離感は微妙なままだったが、文化祭の打ち合わせと称した言い訳を口実にして、度々訪れる職員室で話をすることも増えていった。


 もちろんその大半が当たり障りのない最低限度の事務的なやり取りではあるのだが、詩音にとっては佐伯先生と話ができる、顔を見ることができる、というそれだけでその日一日を幸せに終えることができた。


 先生と生徒という関係は、変えることのできない障害ではあったが、考えようによっては一足飛びに不純な関係に発展することがないだけに、奥手な詩音には好都合な状況ともいえるかもしれない。


 「…ということは、金土日の三日間、午前午後で最低各二卓ずつRPGの実演をやるってことで良いんだな? お前や白岡は大丈夫かもしれないが、他の連中は納得しているのか?」


 佐伯先生が当然の心配を詩音に訴える。


 確かにRPGに理解十分な詩音と彩乃、ジョナサンを除けば、残りの面々は成り行きで参加している微妙な戦力に他ならない。プレイヤーとしての参加ならともかく、ある程度の経験を必要とするゲームマスターを任せるには、若干どころではない不安要素があるというものだ。


 「実はですね、樟葉先輩もゲームマスターの経験があって、他のメンバーもそれに刺激を受けて、やる気になったというか…」


 嘘である。


 独裁者となった勇者詩音の鶴の一声で、全員に平等に義務が課せられるようになっただけで、実態はしぶしぶ引き受けざるを得ないといった成り行きである。


 「会場はどうするつもりだ? 研修室を使うのか、うちの教室を使うのか。クラスでの出展はないから、今のところは空いているはずだが、使うなら確保しておくぞ?」


 クラスにもよるが、文化祭のお祭り気分に乗じて、何か出し物を企画することもある。その殆どが喫茶店だのお化け屋敷だのといったお決まりのものだが、中には創意工夫の限りを尽くして予想外の出し物を思いつくクラスだってある。


 詩音と彩乃の、というより、佐伯先生の担任クラスは、学級会で何も出展しないことを採択していたので、教室は空いたまま、何かやりたい団体に貸し出すことになる。


 「研修室は…慣れてはいるんですけど、ちょっと手狭で二卓以上だと声が被っちゃうと思うんですよね。受付の場所や会誌の展示販売もあるので、教室が使えたら助かります」


 詩音にとっても、自分たちが毎日使っている教室のほうが落ち着けるだろう。下手に会議室や視聴覚室のような大きな会場を押さえて、まったく人の訪れない閑古鳥状態となっては目も当てられない。


 「では、そう手配しておくとして、あとは何か必要なものはあるか? 火を使うことは難しいが、お茶くらいなら電気ポットで用意していいぞ」


 「はい、そうですね。コンセントは他に使いませんし、それでいいと思います」


 詩音は部長としての責務を果たす一方で、佐伯先生との束の間のお喋りを堪能する。それはある種の特権である。


 「ありがとうございました。また何かあったら聞きに来ますね!」


 詩音がしっかりとお辞儀をして職員室を退出すると、残された佐伯先生は早速必要書類の作成に入る。


 「佐伯先生、あの子たちにもいろいろと世話をかけて申し訳ないな。かなり助かってるんだ、感謝してる」


 「水野先生、気にしないでください。西原たちはそれなりの考えがあって一緒に活動しているはずです。迷惑も何もありませんよ」


 隣の机から声をかけてくる水野先生は体操部の顧問でもあり、詩音たちの隣のクラス、夢莉や涼太の担任でもある。


 ポスター盗難騒動やそれに続く美雅の踏切事件などで、詩音たちRPG同好会に様々な面倒事を引き起こした手前、何処か負い目を感じているのだろうが、佐伯先生の言うとおり、詩音たちからすれば、運命的な成り行き任せで今日ここに至っているわけで、当人たちは別に問題を抱えているわけでもない。


 「山科のやつが、何て言うんだか、最近随分とこう丸くなったというか、人の話を聞くようになったというか…。掛け持ち活動のお陰だと正直思っている。改めて西原会長には感謝を伝えておいてほしい」


 「ご自分で…」


 「いやぁ、柄じゃないっていうか、西原会長は随分と佐伯先生を信頼しているようだから、そのほうが彼女も嬉しいだろう」


 厳しい指導で有名な水野先生だが、意外にも照れ屋な一面があるということかもしれない。難しい年頃の女子生徒をどう扱うかというのは、どんなにベテランになっても試行錯誤は続くものなのだろう。


 「まぁ、私たち教師が、というか大人たちが、如何に物事を噛み砕いて言い含めても伝わらない何かが、同じ年頃の仲間たちと触れ合ううちに何故か自然と吸収されていく、ってこともあるでしょう。教師というのは思っている以上に無力なものなのかもしれませんね…」


 佐伯先生は何処か少し寂しそうに笑ったが、もちろん詩音の知るところではなかった。






 「…というわけで、会場は私たちのクラスを使います。まぁ普段からちゃんと掃除はしてるはずだけど、前日の放課後か当日の朝にしっかり点検します」


 「ふぁーぃ」


 毎度の研修室、集ったいつものメンバーに詩音が事の顛末を報告するが、返ってくるのはやる気のない彩乃の声だけだった。


 「どうしたの、皆、何かあった?」


 詩音が怪訝そうに問いかけるが、残念ながら芳しい明確な回答は帰ってこない。


 例によって図書委員のお役目で席を外している樟葉を除いて、雁首を揃えた面々からは覇気というものが感じられない。例えるなら、まるで厭戦気分が蔓延した敗残兵のような倦怠感に満ちている。


 「なんつーか、いきなりマスターやれって言われてもだなぁ、ぶっちゃけ何から手をつけていいかわからん、ってのが正直なトコでよぉ…。俺たちみたいなリアクション芸人にネタ振り要求されてもなぁ…」


 「誰がリアクション芸人よ! あんたと一緒にしないでよね」


 涼太の言葉を受けて夢莉が反論する。反論はするものの、否定はできないというのが何とも奇妙な状況だった。


 「そう思って、実は今回、ペアでやってもらうことにしました」


 「ペアぁ?」


 詩音が自宅の湯船に籠って散々考え抜いた末に辿りついた秘策を披露すると、皆の声が一斉に上がった。


 「サブマスターっていうのかな? ペアのうちの一人がプレイヤー側で参加して、ちょっとずつ話を修正していく、って感じなんだけど…わかるかなぁ?」


 詩音の考えた方法はRPGによくある手法のひとつで、ゲームマスターを羊飼いとするなら、サブマスターは牧羊犬のようなものである。群れから逸れそうなプレイヤーを仲間たちの方向に追い立てる役割を担う、それなりの気配りが必要なポジションである。当然、そのぶんゲームマスターの負担は軽減されることになる。


 「サクラじゃねぇか…」


 「それを言っちゃあお終い、ってもんでしょ」


 涼太の素直な感想に、今度は美雅がツッコミを入れる。本当に揃いも揃ってツッコミ側の人材ばかりが集まっているんだな、と詩音は思う。


 「で、組み合わせなんだけど、誰か組みたい希望のある人はいる? なければ籤引きにするけど」


 「よぉしわかった、ならば俺は夢莉と組むぜ! 異存はないな? もしあってもまぁ、却下するけどな」


 「あたしは別に誰と組んでも良いけど…、これって素人同士の組み合わせで良いもんなの?」


 詩音の問いかけに真っ先に反応する涼太が、ここぞとばかりに自分の要望を押し通す。考えてみれば、そもそもの涼太の参加するきっかけが「夢莉の願いを叶えるため」だったのだから、当然の成り行きではあった。


 「別にいいんじゃないかなぁ。お互いに阿吽の呼吸っていうのが大事だし」


 彩乃が詩音に代わって答える。この場にいるメンバーの中では、ある意味もっとも歴戦の強者である彩乃がそう言うなら間違いはないだろう。


 「ジョナサンは樟葉先輩と組めば良いんじゃない? そのほうが打ち合わせしやすいでしょ?」


 美雅がそう提案すると、ジョナサン本人と詩音も同意して頷く。


 「で、彩乃先輩は会長先輩と組めば? 私は一人きりに慣れてるし、誰かに合わせてっていうのも苦手だしね。マイペースでやらせて貰うわね」


 「ダメです。一人は私が担当するので、彩乃と山科さんでお願いします」


 美雅が決めた組み合わせを拒否して、詩音はそう宣言する。


 「何でよ? 二人とも同じクラスなんでしょう? だったら…」


 反論する美雅を遮って、詩音は横に首を振った。


 「ははぁーん、最初っからそういう作戦かぁ。お主も悪よのう…」


 彩乃はにやりと嫌らしい笑いを浮かべつつ、詩音の思惑に鋭く気づいてそう言葉をかける。


 二人組をつくるとなれば、必然的に七人の会員に余りが発生することになる。それを口実に「誰か」と準備を進めたいと願えば、詩音自身が独り身である必要が生じるというものだ。


 もちろん当然だが、その「誰か」にも彩乃は思い至っているのだが、そこはわざわざ口にしなくても、その場の全員が何となく察していることだろう。


 「な、何のことかな? 私はゲームマスター、慣れてるし…」


 「まったく、素直じゃないわね、会長先輩も…。わかった。私が彩乃先輩と組めば良いのね?」


 「あはははは…。なんだか皆、誤解してるんじゃないかなぁ…」


 そうは言うものの、誰からみても、過去の展開から考えて妥当な結論というものだろう。研修室に響く詩音の乾いた笑いだけが、虚しくその憶測を否定していた。



挿絵(By みてみん)



◇54 過去を顧みる方法 に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください


●ご注意

 この連作小説は、毎週月曜日の10:00に更新掲載していく予定です。

 第一部(0~13)は掲載中の「あの世とこの世の冒険譚」を分割したもの、

 第二部(14~27)及び第三部(28~42)は続編部分で、2023/12/11に終了、

 現在の第四部(43~)は、2023/12/25より掲載中です。



●あとがき

 初めましてorこんにちは。真鶴あさみです。

 定期的かつ長期的な連載を目指して開始したこの作品ですが、第一部の公開から早くも八ヶ月となりました。もちろん新年を迎えても続けていく予定です。

 気分も新たに第四部の開始となります。引き続きお付き合いいただければ幸いです。


 作品のコンセプトは、いわゆる『RPGあるある』を中二の少女目線で追っていく感じになります。もっとも、もはや伝説の存在になりつつある対面会話形式のRPG、テーブルトーク型RPGというものですが。

 極めて奥深い素敵な趣味の世界ですので、ぜひ興味を持っていただけると嬉しいです。


 挿絵の代わりとなるイメージ画像は「カスタムオーダーメイド3D2(COM3D2)」というPCゲームで作成しています。

 3Dモデルをいろいろ独自に弄れるようですが、あいにく知識がなく、基本的な本体仕様の範疇を出ません。ご容赦ください。

 発展性を考慮して、イラストをお任せできる絵師さんを募集しています。こちらもぜひよろしくお願いします。


 それでは、季節感無視の暴走RPG青春物語を再びお楽しみください。

 ご意見ご感想もどんどんお寄せください。



■HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)を公開中ですが、只今、絶賛放置中です。

■Twitterもあります(@manazuru7)。

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