表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よよぼう ~あの世とこの世の冒険譚  作者: 真鶴あさみ
秋空と乙女心と伝説と
51/112

◇50 週末の黒い疑惑

●「よよぼう」第三部までのあらすじ


 とあるきっかけからRPGに興味をもった中等部二年の西原詩音は、憧れのクラス担任の国語教師、佐伯十三先生を巻き込んで、念願のRPG同好会を設立する。

 弱気で引っ込み思案な会長の詩音を支えるのは、詩音の亡き兄に恋をしていたクラスメイトの白岡彩乃、詩音の幼馴染みで体操部員の香坂夢莉、同じく幼馴染みでお調子者の島本涼太、なし崩しに口説かれた先輩でお嬢様の神楽樟葉たち。


 同好会に発足直後からトラブルが多発。会員募集ポスターの盗難騒ぎを発端にして、夢莉の後輩の山科美雅、神楽家の居候のジョナサンとメアリーのウェリントン兄妹を加えて、仲間の輪は広がっていく。

 賑やかさを増したRPG同好会だったが、比例するようにトラブルも増加していく。佐伯先生を巡る詩音と樟葉、彩乃の従兄の鷹取謙佑を巡る彩乃と美雅、その他諸々の感情がぶつかり合っていく。


 ついに学校を飛び出して一般サークル主催のイベントに出向いた詩音たちは、年上のベテラン達から様々なことを学びつつ、夏休みも様々な体験を通じて仲間たちとの絆を深めていく。

 迎えた夏合宿、到着早々の遭難騒ぎの中、一気に距離が縮まったかに見える詩音と佐伯先生の恋の行方は?

 残暑と初秋の季節、少女たちの心の色彩は次第に大きな変化を見せはじめる…。



●主な登場人物

□女性/■男性


《RPG同好会の面々》

西原にしはら 詩音うたね

 担任の佐伯先生に想いを寄せる、RPGが趣味の中等部二年生。RPG同好会の会長だが、威厳の欠片もない。

 トラブルに好かれる体質で、精神的ハリボテ勇者の意地と気合で挑む引っ込み思案娘。


白岡しらおか 彩乃あやの

 詩音のクラスメイトで、ホビーショップ『|Colline_Blancheコリンブロンシュ』の看板娘。明るくマイペースなボクっ娘で、年下の子供たちからの人気は高い。

 従姉弟の謙佑相手に、初恋のリベンジを誓う鉄砲玉トラブルメーカー。


香坂こうさか 夢莉ゆうり

 詩音の幼馴染みで、隣のクラス。体操部の期待の星でもあり、男女問わず人気が高いスタイリッシュ女子。

 毒舌系百合剣士な雰囲気ながら、情に脆い苦労人。詩音たちのストッパー役。


島本しまもと 涼太りょうた

 詩音と夢莉の幼馴染み。夢莉のクラスメイトでお隣さん。夢莉にあからさまな挑戦を続けるトリックスター。

 夢莉にいいように使われつつ、陰ながら支える縁の下の力持ち。自称、ジョナサンの兄貴分。


山科やましな 美雅みみや

 中等部一年の体操部員。先輩の夢莉を目標に、自己鍛錬を欠かさない努力家。些か情緒不安定な面もあり、周囲から孤立しがちな一匹狼。

 複雑な家庭環境で育ったゆえか、年齢に似合わない言動も垣間見える、いわゆる地雷系の側面も。


神楽かぐら 樟葉くずは

 図書委員の中等部三年生で、地元名家の一人娘。完璧主義で融通の利かない修道女的性格。

 実際は、次期当主としての境遇と自分自身の目標に悩む年相応の少女であり、渾名の「鋼鉄の冷嬢」とは程遠い。詩音のライバル?を公言中。


■ジョナサン ウェリントン

 樟葉の遠縁の金髪男子。明るく陽気な爽やか系男子で、涼太とは凸凹コンビの間柄。

 偶然か必然か、詩音の遭遇するトラブルを解決する王子様的な存在となることも多く、詩音にとって非常に気になる存在。



《その他の人物たち》

□メアリー ウェリントン

 樟葉の遠縁の金髪女子。初等部六年生の快活児童。ジョナサンの妹で、偏りまくった日本文化に憧れている。

 次世代RPG同好会の予備軍として、詩音たちに帯同することも多い。容姿も年齢以上に可憐で、詩音や彩乃のコンプレックスの源になることも。


佐伯さえき 十三じゅうぞう

 詩音と彩乃のクラス担任の国語教師。RPGの造詣も高く、心理描写重視の演劇スタイルが得意。なし崩しにRPG同好会の責任者となる。

 詩音の憧れの存在であり、生徒からの評判も良好の好青年だが、生徒との距離感に戸惑いを感じる一面も。


水野みずの

 夢莉のクラス担任の体育教師で、体操部の顧問でもある。親身な熱血指導が誤解と不評を受ける不運な境遇。

 責任感と筋を重んじる、典型的な昔気質の真面目な教師。


鷹取たかとり 謙佑けんすけ

 ホビーショップ『|Colline_Blancheコリンブロンシュ』のアルバイトの大学生。彩乃の従兄。RPGのほか、玩具系に詳しい。

 イケメンだが、かなりアバウトな性格で、一見掴みどころがない存在。彩乃の良き相談相手であり、目下の攻略目標。


道脇みちわき たまき

 RPG雑誌『月刊TTMテーブルトーク・マンスリー』の編集部員で、謙佑の先輩。気さくなゴスロリ美女だが、実態は謎の多き人物。


◇50 週末の黒い疑惑



 駅を挟んで中等部の校舎とは反対側、銀行やら証券会社やら、よくわからない景気のよさそうな店舗の並ぶ中心街の一角に、それなりの風格を備えたそのシティホテルはあった。


 天井の高い一階の広々としたエントランスホールの片隅に、洒落たオープンテラスのカフェがある。


 そこで週末午後の優雅なひと時を楽しんでいるのは、意外にも彩乃とジョナサンという一風変わった二人組だった。


 ジョナサン王子とその隣の姫君を巡る選考会議は、すべてを会長の詩音に委ねたまま週明けに持ち越しとなり、彩乃はいつもと変わらぬ平穏な週末を過ごすはずだった。


 しかし、毎度お馴染みの看板娘を務めていた金曜の夕刻、何の前触れもなくホビーショップに現れたジョナサンに、唐突にデートに誘われたのだ。


 外国人の流儀はよく知らないが、唐突の申し出に彩乃は間抜けな表情を浮かべて暫く返答ができなかった。


 その様子を見かねた謙佑に促されるまま、彩乃が曖昧な生返事で応えると、ジョナサンは輝くばかりの笑顔で待ち合わせの時間と場所を指定してきた。


 「いやぁー、そんなこと言ったの、ボク、自分でも忘れてたよ。ありがとね…」


 「一番上のフロアのレストランだとハッピーだったですけど、ごめんなさいですね」


 ジョナサンの話によれば、夏合宿の遭難騒ぎの際に、帰ったら彩乃を食事に招くという約束をしたので、それをただ叶えただけの話、なのだそうだ。


 確かに彩乃も朧げな記憶がないこともないが、まさか本当にジョナサンがランチを奢ってくれるとは思ってもみなかった。要するにあれは、俗にいう「死亡フラグ」のようなものだ、とさえ思っていたくらいだ。


 「でも、いいの? ボク以外に誘うコいるんじゃないの? ジョナサンは…」


 彩乃としても心中は複雑だ。


 ジョナサンのことは別に嫌いでも苦手でもない。むしろ格好いいナイスな男子、くらいの認識だが、別に積極的にどうこうしたいという意識もあまりない。


 むしろ謙佑の前で堂々とデートに誘われ、成り行きとはいえオーケーの約束をしてしまったのは、若干の失策であったかもしれない、とも思える。


 「私は、皆と仲良くしたいです。だから、あやぁのうとも仲良くしますね」


 まぁそうだろう。ジョナサンにとっても、彩乃だけが特別な存在ではないことは明白だ。別にがっかりする必要はないのだが、彩乃の心はさらに複雑さを増していく。


 二人の目の前には、既に半ば半分ほどの空白地帯が出来つつある、豪華なプレートに盛り付けられたハンバーグセットが鎮座している。


 怪しげな手つきでフォークとナイフを操りながら、彩乃は残りのハンバーグを堪能する。さすがにホテルのカフェだけあって、味のほうも申し分ない。


 満面の笑顔で幸せ具合をアピールしつつ、彩乃がふと視線を巡らせると、そこには極めて違和感のあるものが映った。


 「あ、あれぇ? 山科さん?」


 ぽつりと小さく呟きながら、彩乃はジョナサンの視線を誘導する。


 二人の見つめる先には、十分すぎるほど年の離れた男女の姿があった。


 さっぱりした濃紺の三つ揃えで決めこんだ男性は、まぁこの辺りではよく見かける感じもするのだが、問題は相手の女性、というより少女である。


 美雅に瓜二つのその少女は、馴れ馴れしい仕草で男性の腕に自分の腕を絡め、寄りかかるようにしな垂れかかっている。極めて親しい間柄、つまり男女の仲さえ思い起こさせる情景だ。


 二人は何かを楽しそうに語り合いながら、エレベーターに吸い込まれていく。こちらの事など気付きもしないようだ。


 二人を乗せたエレベーターは最上階を目指して進んでいった。そこは豪華絢爛のロイヤルスイートと展望レストランが売りのフロアである。


 「あれ、たぶん、山科さん、だよねぇ…」


 「ですね!」


 彩乃は自分たちがデート紛いの行動をしているにもかかわらず、宿敵のスキャンダルに津々である。


 「パパ活、ってやつ?」


 思わず連想された単語が彩乃の口を突いて出てくる。その聞き慣れない単語を繰り返し呟きながら、ジョナサンが小さく首を傾げる。


 「まぁ、よく知らない男の人とデートして、お小遣い稼ぎ?みたいな?」


 「それ、ハイトクテキですか?」


 「背徳…うーん、確かにお薦めはできないやつではあるかも?」


 外国人の貞操観念というか、情操観念というか、はよくわからないが、とにかくあまり褒められた行動とはいえないだろう。もっとも、そんなの本人の自由でしょ?と言われたら、それまでの話ではあるのだが。


 「とにかく、詩音たちに相談するまで内緒、おっけー、ジョナサン?」


 「わかりました。私とあやぁのぅ、二人だけの秘密、ですね!」


 ジョナサンは悪戯っぽい微笑みで事態の成り行きを楽しむ構えだ。


 いつもの彩乃なら、そんなジョナサンに同調して、いや寧ろ先陣をきって事態を面白おかしく喧伝する側になるところだが、どうにも男女の微妙な仲というのが関わってくると、途端に慎重になってしまう。


 相手がライバル関係にある美雅だというのもあるが、もしかしたら今この瞬間も行われているかもしれない未知なる何かに、憧れとも嫌悪感とも判然としない複雑な思いが渦巻いてしまうのだ。


 「とにかく、週明けに皆で作戦会議だからね」


 彩乃は自分に言い聞かせるように呟いて、残されたプレートの冷めかかったハンバーグを口の中に放り込む。


 先ほどまでの美味は何処へやら、不思議な味が彩乃の心に広がっていった。






 「パパ活ぅ?」


 週明け放課後の研修室、その場にいた皆が声を合わせて、素っ頓狂な言葉を口にする。


 「静かになさい、毎度ながら、あなたたちは…」


 樟葉のみがそう冷静に感想を口にして、場の抑え役となった。


 「いや、でも、しかし…、あり得ないだろ、いくらなんでも…」


 涼太はぽつりぽつりと言葉を区切りながら、半信半疑の台詞を紡ぐ。


 今、この場にいるのは中一の二人、つまりジョナサンと美雅を除いたお馴染みの顔ぶれだ。


 「信じられない、っていうのはボクも同じだけど、見たんだってば!」


 彩乃はそう言って、再び同じ内容を繰り返し語りだす。


 確かにいろいろと捉えどころのない無鉄砲さを持った美雅ではある。詩音や彩乃とは違った意味で、斜め上の我が道を歩んでいそうではあった。


 しかし、ここ暫くの付き合いを通して、美雅の美雅なりの何たるか、といった漠然とした感覚というものを皆がそれぞれ掴みつつあったのも確かで、それから思えば、年齢不相応に不純な男女交際というか、それに準じた何某かに積極的に、美雅が関わりを持つとは思えない気がした。


 「っていうか、それって単にお父さんなんじゃないの?」


 夢莉が一番無難な回答を提示する。


 「ボクも最初はそう思ったんだけど、謙ちゃんの話だと、山科さんはお爺ちゃんお婆ちゃんと一緒に暮らしてるみたいなんだよね。詳しい家庭の事情は知らないけどさ」


 「あぁーそれで、お見舞いとか来られなかったのかぁ…」


 以前の騒動の折、病院に搬送された美雅に誰一人として面会人が現れなかったことを思い出して、詩音は一人合点する。


 「でも、ご両親だってどこかにいるわけでしょ? だったらお父さんとたまたま会ってたって不思議じゃないでしょ?」


 確かに夢莉の言うとおりで、変にパパ活だ援助交際だと騒ぎ立てるのも早計なのかもしれない。


 「まぁ、そればかりは下手に本人に聞き出そうとしても藪蛇だしなぁ…」


 涼太は椅子の背もたれに体重を預けて傾かせつつ、歯切れの悪いもっともな意見を述べた。


 「おー、エブリバディ、スタンバイ、ナウ!ですね。遅くなってしまいました」


 どんより気味の空気を打ち破って、ノックとともに陽気なジョナサンが入ってくる。いつも通りの笑顔の後ろから、美雅が続いていた。


 「私も遅くなってごめんなさい」


 詩音は一気に話題の転換を図ろうと、裏返った声のままで言葉を紡ぐ。


 「二人とも気にしないで。時間にアバウトなのはRPGあるあるの展開だから。あははは…」


 「はぁ、でもそれって感心できない展開ね」


 樟葉が思いっきりくざびを打ち込む。


 「さて、ようやく皆揃ったということで、RPG同好会の会長として発表します。文化祭では全員、最低一人一回はゲームマスターをして貰います! 頑張りましょう、これは決定事項です!」


 詩音は高らかにそう宣言する。それはもはや勇者ではなく、独裁者の姿に他ならない。つまり、反対意見は粛清あるのみだ。


 「おいおい、まてまて…」


 予想外の提案に涼太が動揺をみせる。


 恐らくこの場で一番ゲームマスターという役割に向いていないのは涼太だろうことは疑いようもない。謎を解くのは嫌いじゃないが、謎の出題側に回るというのはどうにも取っ掛かりが掴めない。


 「難しく考えないでいいよ、涼ちゃん。既存のシナリオでもいいし、他の人が考えたシナリオでもいいから、お試し体験の場所をつくることが大事なんだよ」


 詩音は楽観的にそう言うものの、涼太はそのアバウトさにかえって不安が倍増してくる。


 「そうは言うけどなぁ…」



挿絵(By みてみん)



◇51 明かされる過去と真実 に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください


●ご注意

 この連作小説は、毎週月曜日の10:00に更新掲載していく予定です。

 第一部(0~13)は掲載中の「あの世とこの世の冒険譚」を分割したもの、

 第二部(14~27)及び第三部(28~42)は続編部分で、2023/12/11に終了、

 現在の第四部(43~)は、2023/12/25より掲載中です。



●あとがき

 初めましてorこんにちは。真鶴あさみです。

 定期的かつ長期的な連載を目指して開始したこの作品ですが、第一部の公開から早くも八ヶ月となりました。もちろん新年を迎えても続けていく予定です。

 気分も新たに第四部の開始となります。引き続きお付き合いいただければ幸いです。


 作品のコンセプトは、いわゆる『RPGあるある』を中二の少女目線で追っていく感じになります。もっとも、もはや伝説の存在になりつつある対面会話形式のRPG、テーブルトーク型RPGというものですが。

 極めて奥深い素敵な趣味の世界ですので、ぜひ興味を持っていただけると嬉しいです。


 挿絵の代わりとなるイメージ画像は「カスタムオーダーメイド3D2(COM3D2)」というPCゲームで作成しています。

 3Dモデルをいろいろ独自に弄れるようですが、あいにく知識がなく、基本的な本体仕様の範疇を出ません。ご容赦ください。

 発展性を考慮して、イラストをお任せできる絵師さんを募集しています。こちらもぜひよろしくお願いします。


 それでは、季節感無視の暴走RPG青春物語を再びお楽しみください。

 ご意見ご感想もどんどんお寄せください。



■HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)を公開中ですが、只今、絶賛放置中です。

■Twitterもあります(@manazuru7)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ