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よよぼう ~あの世とこの世の冒険譚  作者: 真鶴あさみ
秋空と乙女心と伝説と
44/112

◇43 秘めた願いを重ねて

●「よよぼう」第三部までのあらすじ


 とあるきっかけからRPGに興味をもった中等部二年の西原詩音は、憧れのクラス担任の国語教師、佐伯十三先生を巻き込んで、念願のRPG同好会を設立する。

 弱気で引っ込み思案な会長の詩音を支えるのは、詩音の亡き兄に恋をしていたクラスメイトの白岡彩乃、詩音の幼馴染みで体操部員の香坂夢莉、同じく幼馴染みでお調子者の島本涼太、なし崩しに口説かれた先輩でお嬢様の神楽樟葉たち。


 同好会に発足直後からトラブルが多発。会員募集ポスターの盗難騒ぎを発端にして、夢莉の後輩の山科美雅、神楽家の居候のジョナサンとメアリーのウェリントン兄妹を加えて、仲間の輪は広がっていく。

 賑やかさを増したRPG同好会だったが、比例するようにトラブルも増加していく。佐伯先生を巡る詩音と樟葉、彩乃の従兄の鷹取謙佑を巡る彩乃と美雅、その他諸々の感情がぶつかり合っていく。


 ついに学校を飛び出して一般サークル主催のイベントに出向いた詩音たちは、年上のベテラン達から様々なことを学びつつ、夏休みも様々な体験を通じて仲間たちとの絆を深めていく。

 迎えた夏合宿、到着早々の遭難騒ぎの中、一気に距離が縮まったかに見える詩音と佐伯先生の恋の行方は?

 残暑と初秋の季節、少女たちの心の色彩は次第に大きな変化を見せはじめる…。



●主な登場人物

□女性/■男性


《RPG同好会の面々》

西原にしはら 詩音うたね

 担任の佐伯先生に想いを寄せる、RPGが趣味の中等部二年生。RPG同好会の会長だが、威厳の欠片もない。

 トラブルに好かれる体質で、精神的ハリボテ勇者の意地と気合で挑む引っ込み思案娘。


白岡しらおか 彩乃あやの

 詩音のクラスメイトで、ホビーショップ『|Colline_Blancheコリンブロンシュ』の看板娘。明るくマイペースなボクっ娘で、年下の子供たちからの人気は高い。

 従姉弟の謙佑相手に、初恋のリベンジを誓う鉄砲玉トラブルメーカー。


香坂こうさか 夢莉ゆうり

 詩音の幼馴染みで、隣のクラス。体操部の期待の星でもあり、男女問わず人気が高いスタイリッシュ女子。

 毒舌系百合剣士な雰囲気ながら、情に脆い苦労人。詩音たちのストッパー役。


島本しまもと 涼太りょうた

 詩音と夢莉の幼馴染み。夢莉のクラスメイトでお隣さん。夢莉にあからさまな挑戦を続けるトリックスター。

 夢莉にいいように使われつつ、陰ながら支える縁の下の力持ち。自称、ジョナサンの兄貴分。


山科やましな 美雅みみや

 中等部一年の体操部員。先輩の夢莉を目標に、自己鍛錬を欠かさない努力家。些か情緒不安定な面もあり、周囲から孤立しがちな一匹狼。

 複雑な家庭環境で育ったゆえか、年齢に似合わない言動も垣間見える、いわゆる地雷系の側面も。


神楽かぐら 樟葉くずは

 図書委員の中等部三年生で、地元名家の一人娘。完璧主義で融通の利かない修道女的性格。

 実際は、次期当主としての境遇と自分自身の目標に悩む年相応の少女であり、渾名の「鋼鉄の冷嬢」とは程遠い。詩音のライバル?を公言中。


■ジョナサン ウェリントン

 樟葉の遠縁の金髪男子。明るく陽気な爽やか系男子で、涼太とは凸凹コンビの間柄。

 偶然か必然か、詩音の遭遇するトラブルを解決する王子様的な存在となることも多く、詩音にとって非常に気になる存在。



《その他の人物たち》

□メアリー ウェリントン

 樟葉の遠縁の金髪女子。初等部六年生の快活児童。ジョナサンの妹で、偏りまくった日本文化に憧れている。

 次世代RPG同好会の予備軍として、詩音たちに帯同することも多い。容姿も年齢以上に可憐で、詩音や彩乃のコンプレックスの源になることも。


佐伯さえき 十三じゅうぞう

 詩音と彩乃のクラス担任の国語教師。RPGの造詣も高く、心理描写重視の演劇スタイルが得意。なし崩しにRPG同好会の責任者となる。

 詩音の憧れの存在であり、生徒からの評判も良好の好青年だが、生徒との距離感に戸惑いを感じる一面も。


水野みずの

 夢莉のクラス担任の体育教師で、体操部の顧問でもある。親身な熱血指導が誤解と不評を受ける不運な境遇。

 責任感と筋を重んじる、典型的な昔気質の真面目な教師。


鷹取たかとり 謙佑けんすけ

 ホビーショップ『|Colline_Blancheコリンブロンシュ』のアルバイトの大学生。彩乃の従兄。RPGのほか、玩具系に詳しい。

 イケメンだが、かなりアバウトな性格で、一見掴みどころがない存在。彩乃の良き相談相手であり、目下の攻略目標。


道脇みちわき たまき

 RPG雑誌『月刊TTMテーブルトーク・マンスリー』の編集部員で、謙佑の先輩。気さくなゴスロリ美女だが、実態は謎の多き人物。


神楽かぐら 墨染ぼくせん

 現在の神楽本家当主で樟葉の父。実業家として堅実に手腕を発揮する一方、一人娘には寛容な子煩悩さも持つ。

 ウェリントン家の事情を憂慮しており、陰ながら力になろうと試みる。


■太秦 ウェリントン(うずまさ)

 樟葉の遠縁の実業家。ジョナサンとメアリーの継父。亡き友人の妻と子供を支えるため、神楽家を離れた決意の人。幼い樟葉の家庭教師役でもあった。


■リンダ ウェリントン

 国際的な地質学者。ジョナサンとメアリーの実母で太秦の妻。二児の母とは思えぬ若さと美貌の淑女。

◇43 秘めた願いを重ねて



 突然の遭難騒ぎから数日、西原詩音(にしはら うたね)がようやく病院から解放され、神楽(かぐら)の山荘に戻ったときには、すでにRPG同好会の合宿日程は半分ほどを過ぎていた。


 会長である詩音の留守中は、幼馴染みの香坂夢莉(こうさか ゆうり)と先輩で山荘の主でもある神楽樟葉(かぐら くずは)を中心に、同好会らしい活動も申し訳程度にしてはいたものの、そのあり余る時間の大部分は周辺の探検と馬鹿騒ぎに費やされることになった。


 懲りない面々とは、まぁこういうものなのだろう。


 結局のところ、リビングに集っている詩音以外のメンバーの殆どが、すでにスタミナ切れ寸前の状況で、かえって体調万全で復活した詩音がひとり浮くような結果となった。


 このままでは合宿の意味がないと悟った詩音の発案で、まだ辛うじて元気の残っていた樟葉と後輩の山科美雅(やましな みみや)、ジョナサンとメアリーのウェリントン兄妹に加え、肝心要の詩音の想い人、佐伯十三(さえき じゅうぞう)先生を交えて、細々とRPGのシナリオをプレイをすることにしたのは、とうとう合宿最後の晩を迎えたときの話である。


 詩音としては、退屈な病院のベッドの上で暇に任せて練りに練った渾身のシナリオを、絶対にここで披露せず終わるわけにはいかなかった、という事情があった。


 簡単に言えばこういう話である。


 とある街の貧乏旅館の娘が、偶然宿泊した隣国の青年勇者に心奪われる。その晩、娘の夢に現れた闇皇帝を自称する者が、娘に怪しげな秘術を授ける。


 それは永遠に終わらぬ別の世界へと件の勇者を召喚するためのもので、出自も身分も気にする必要のないその世界で娘とともに暮らしていく、という魅力的な提案だった。


 二人が再び戻ることはないだろう元の世界では、闇皇帝の謀略が着々と進んでいく。果たして娘と勇者は無事に帰還できるのか…。


 比較的単純な話の構成ではあるが、状況的には憧れの担任教師を目前にして、ゲームマスターとしてシナリオを進めていくのだから、傍から見ていても詩音の舞い上がりっぷりは明らかだ。


 場外のギャラリーと化した夢莉や同じく幼馴染みの島本涼太(しまもと りょうた)、クラスメイトの白岡彩乃(しらおか あやの)たちは、ハラハラしながら事態の推移を見守っていた。


 もちろん、担任教師であろうとも、大好きな相手であろうとも、ひとたびプレイが始まってしまえば、たとえ相手が誰であってもそんなことは関係ない…はずなのだが、恋する乙女の詩音としては、そう簡単にはいかないチキンハート状態なのである。


 まるでそう、例えるなら、蛇に睨まれた蛙がゲームマスターをしているようなものだ。


 もっとも他のプレイヤーのうちの何人かが、すでに詩音の心情を察してくれているのは幸運だった。紆余曲折こそあったものの、概ね順調に予定通りのシナリオ展開を歩んでいく。


 ぶっちゃけて言えば、ご都合主義満載のストーリーではあるのだが、そこはそれ、どんな娯楽作品にでもつきもののお決まりのお約束といったものだろう。


 そのもやもやする流れに釈然としない美雅は、正論交じりの文句を散々垂れ流しつつも、もはや納得なのか諦めなのか、他のメンバーに渋々と従っていた。


 かなりの時間が経過し、いよいよ現実世界に帰還した勇者一行が闇皇帝を追い詰め、物語もクライマックスを迎える。


 …というそんな展開になると、一人だけエネルギー十分、むしろ過剰かもしれない詩音が、ゲームマスターの本領を発揮しはじめる。


 「貴様たち冒険者風情が良くもこの地に辿りついたものだ。敬意に値するぞ。さあ、正義と平和を語る偽善者どもよ! 貴様らに信念とやらがあると申すのなら、その聖剣を振るい我を貫くがいい! さすれば望む世界も訪れよう!」


 相当の遠回りをしつつ迎えた最終局面で、大きく深呼吸をした詩音が、黒幕の闇皇帝を演じつつ、一気に決戦の開始を宣言する。


 「オラ、やってやるぞい!」


 いかにも拳で殴り掛かりそうなセリフとともに突っこんでいくメアリーの魔剣士を、後方から司祭樟葉の補助魔法が包み込む。


 続いて、各々プレイヤーが好き勝手な前口上の名乗りを上げながら、闇皇帝詩音めがけて進撃を開始する。


 「オラ、ワクワクしてきたど!」


 絶賛部外者を満喫中の傍観者、彩乃がポテトチップを片手に悪乗りのツッコミを入れる。


 「しかしまぁ、詩音にしては随分と大胆なセリフを吐いたもんだねぇ…」


 「その聖剣で我を貫くがいい、とか、意味深すぎてこっちがひっくり返るぜ…」


 同じくギャラリーの夢莉と涼太も、先ほどの闇皇帝詩音の大胆なセリフを曲解して、斜め上の感想を口にする。


 まぁ、涼太が好きそうなその手の作品ならそういった展開もありなのかもしれないが、もちろん純情にして思慮の浅い詩音にそんな深い暗喩の意図があるわけもない。


 「そこの部外者、煩い! もし闇皇帝が回避に失敗したら、夢莉たちのせいだからね! あっ、あああっ!」


 「まさに、天の声の加護、というものね」


 例の願掛けダイスを振りながら動揺を見せる詩音に、容赦ない司祭樟葉の冷静な言葉が降りかかる。


 「そんなぁ…そんな馬鹿なぁ…」


 「闇皇帝、貴様の野望も潰えたな! 今こそ鉄槌をこの手で」


 「はひっ!」


 最後のとどめは佐伯先生からの一撃なのだと悟った詩音は、思わず反射的に素直な言葉を返してしまう。これではまるで国語の授業の再現だ。


 「ああ、違…、これは何かの…」


 狼狽えて収拾のつかない情けない闇皇帝詩音の身体に、深々と佐伯先生の勇者が放つ聖剣の一撃が突き刺さる。


 聖剣を残し、そのまま勇者が跳び退ると同時に、ジョナサンと美雅によるあの悪名高い合体最終魔法奥義が飛んでくる。


 「ダメージは8D6、二人合わせて16D6…」


 「消し炭も残らないわね…」


 ジョナサンと美雅が黙々とダイスを振りつつ、そう口にする。


 「8D6」というのはRPG独特の用語で、六面体のダイス、つまりサイコロを八個振って、出た目を合計せよ、という意味である。つまり最低値が8、最高値が48となる。


 この世界にはありがちな普通の剣の威力が「2D6」程度なのだから、魔法の威力の凄まじさがわかるだろう。小さな町のひとつくらい、容易に消し飛んでしまうのも無理はない話である。


 「おのれ、偽善者どもよ…。しかし忘れるでない。我は常に貴様らと共にあるのだ。貴様らの暗き滅びの道を、この闇の世界から楽しませて貰おう。わっはははっ!」


 「最後はしつこく永遠のストーカー宣言ってか…、恐るべし闇皇帝詩音の執着心って感じだぜ…」


 「え、あ、別にそういう…そう、なるのかなぁ?」


 またもや部外者の涼太のツッコミに、詩音は思わず反応する。


 お決まりの台詞とともに物語は終わりを告げ…るかに見えた次の瞬間、それまで勇者たちの後方に控えたままだった司祭樟葉が宣言する。


 「貴方にはこの世界よりも永遠の虚無のほうがお似合いです。マスター、滅魂の奇跡を発動します」


 樟葉はそう冷静な口調で語りながら、おもむろに自分のダイスを転がした。


 「…発動成功です。これで闇皇帝は二度と現れませんよね?」


 「うわぁ、樟葉先輩容赦ねぇ! 詩音のやつをこの世から永久追放処分にするとか、マジで半端ねぇ…」


 「乙女心を惑わせた報いです。相応の対価を支払って貰わないといけません。それに、実体のない一方的な執着心など迷惑千万、単なる重荷にしかなりません」


 涼太が相変わらず実況アナウンサーのように煽るが、樟葉はあくまで冷静なままだ。


 「そもそも、勇者様の傍に汚れた魂が纏わりつくなどということは、この聖堂司祭たる私が断じて許しません」


 『鋼鉄の冷嬢』とはよく言ったものだと、その二つ名を知る者は納得のドン引き具合だった。


 「と、とにかく、こうして無事に平和が訪れたのでした。これにてひとまずの終了となります。ありがとうございました」


 なんとか立ち直った詩音が、かろうじて締めの言葉を述べて終了を宣言する。


 最後は予想外だったものの、ゲームマスターとしてはまぁ、どうにか及第点な出来に収まっただろうと、詩音は安堵する。


 「とりあえずお疲れ様だったな、詩音。いろいろ話の運び方に粗はあるかもしれないが、割と良く纏まっているじゃないか。意外過ぎて、何だか感心したぞ」


 「はいっ、ありがとうございます!」


 たぶん褒められているのだろう佐伯先生からの労いの言葉に、詩音はほっと胸を撫でおろし、満面の笑みを浮かべて応えた。


 その時、リビングの一角から数人の拍手が降り注いだ。


 「え、えええぇ…?」


 リビングの入り口付近に藤堂(とうどう)たち使用人が勢揃いしてこちらに微笑んでいる。隣にいるのはリンダと太秦(うずまさ)のウェリントン夫妻、そして…。


 「お、お父様っ!」



挿絵(By みてみん)



◇44 もうひとつの問題提示 に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください


●ご注意

 この連作小説は、毎週月曜日の10:00に更新掲載していく予定です。

 第一部(0~13)は掲載中の「あの世とこの世の冒険譚」を分割したもの、

 第二部(14~27)及び第三部(28~42)は続編部分で、2023/12/11に終了、

 現在の第四部(43~)は、2023/12/25より掲載中です。



●あとがき

 初めましてorこんにちは。真鶴あさみです。

 定期的かつ長期的な連載を目指して開始したこの作品ですが、第一部の公開から早くも八ヶ月となりました。もちろん新年を迎えても続けていく予定です。

 気分も新たに第四部の開始となります。引き続きお付き合いいただければ幸いです。


 作品のコンセプトは、いわゆる『RPGあるある』を中二の少女目線で追っていく感じになります。もっとも、もはや伝説の存在になりつつある対面会話形式のRPG、テーブルトーク型RPGというものですが。

 極めて奥深い素敵な趣味の世界ですので、ぜひ興味を持っていただけると嬉しいです。


 挿絵の代わりとなるイメージ画像は「カスタムオーダーメイド3D2(COM3D2)」というPCゲームで作成しています。

 3Dモデルをいろいろ独自に弄れるようですが、あいにく知識がなく、基本的な本体仕様の範疇を出ません。ご容赦ください。

 発展性を考慮して、イラストをお任せできる絵師さんを募集しています。こちらもぜひよろしくお願いします。


 それでは、季節感無視の暴走RPG青春物語を再びお楽しみください。

 ご意見ご感想もどんどんお寄せください。



■HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)を公開中ですが、只今、絶賛放置中です。

■Twitterもあります(@manazuru7)。

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