◇41 大捜索と大救出
中等部二年の西原詩音は、担任の若き国語教師、佐伯十三に憧れる少し弱気な女子生徒。
親友の白岡彩乃と香坂夢莉、幼馴染みの島本涼太、先輩の神楽樟葉らと発足させたRPG同好会の責任者として、佐伯先生を説得して順風満帆に見えたが、様々なハプニングに悩まされていく。
新たに加わった後輩の山科美雅、謎多き外国人兄妹ジョナサンとメアリー、さらにメンバーたちの周囲も巻き込んで、今日もまたドタバタ冒険譚は続いていく…。
初めましてorお久しぶりです。真鶴あさみです。
この作品は、定期的な掲載を目論んだ初めての作品になりますが、おかげさまで順調に連載をこなし、第三部まで到達しました。ありがとうございます。
作品の内容は、いわゆる「RPG同好会の中学生たちのドタバタ劇」ではありますが、今日一般的なスマホゲームやPCゲームではなく、伝統芸能ともいうべきテーブルトーク形式のRPGです。
最初の取っ掛かりはなかなか難しいと思いますが、独特の味わいのある素敵な趣味ですので、この作品をきっかけに興味を持っていただければさらに嬉しいです。
作中の登場人物のイメージ画像を「COM3D2」というPCゲームで作成しました。
いかんせん発展性に乏しいので、今後のことも考えて、イラストを描いてくださる絵師さんを引き続き募集しています。
あまりお礼はできませんが、ご興味があれば、ぜひよろしくお願いします。
それでは、迷走女子のRPG大冒険の様子を、今後も引き続きお楽しみください。
感想や評価も、ぜひよろしくお願いします。
●ご注意
この連作小説は、毎週月曜日の10:00に更新掲載していく予定です。
第一部(0~13)は別途掲載中の「あの世とこの世の冒険譚」を分割したもの、
第二部(14~27)はその続編となる部分で、2023/07/31に終了しました。
引き続き第三部(28~)を、2023/09/11より掲載中です。
主な登場人物
□女性/■男性
□西原 詩音
担任の佐伯先生に恋する、RPGが趣味の中等部二年生。RPG同好会の会長。精神的ハリボテ勇者の引っ込み思案娘。
□白岡 彩乃
詩音のクラスメイトで、ホビーショップの看板娘。明るくマイペースなボクっ娘トラブルメーカー。
□香坂 夢莉
詩音の幼馴染みで、隣のクラス。体操部にも所属。毒舌系百合剣士な雰囲気ながら、情に脆い苦労人。
■島本 涼太
詩音と夢莉の幼馴染み。夢莉のクラスメイトでお隣さん。夢莉にあからさまな挑戦を続けるトリックスター。
□山科 美雅
中等部一年の体操部員。先輩の夢莉を目標に、自己鍛錬を欠かさない努力家。些か情緒不安定な面もあり、周囲から孤立しがちな一匹狼。
□神楽 樟葉
図書委員の中等部三年生。地元名家の一人娘。完璧主義で融通の利かない修道女的性格。詩音のライバル?
■ジョナサン ウェリントン
樟葉の遠縁の金髪男子。明るく陽気な爽やか系。
□メアリー ウェリントン
樟葉の遠縁の金髪女子。ジョナサンの妹で、日本文化に憧れている。
■佐伯 十三
詩音と彩乃の担任の国語教師。RPGの造詣も高く、心理描写重視の演劇スタイルが得意。生徒の評判も良好。
■鷹取 謙佑
ホビーショップのアルバイトの大学生。彩乃の従兄。RPGのほか、玩具系に詳しい。イケメンだが、かなりアバウトな性格。
□道脇 環
RPG雑誌月刊TTMの編集部員で、謙佑の先輩。気さくなゴスロリ美女だが、実態は謎の多き人物。
◇41 大捜索と大救出
合宿初日早々にして神楽の山荘は大変な騒ぎである。まさに蜂の巣を突いたという表現とはこのことだろう。
二班に別れて付近の散策に出かけた面々のうち、片方のグループの行方がわからなくなってしまったのだから、無事に帰り着いた者たちにとっても気が気ではない。
班長格の彩乃といえば、楽観主義が具現化したようなお調子者だし、同行した会長の詩音もまたトラブルを引き寄せる不思議な体質の持ち主だ。強いて言えば残りの一人、ジョナサンはまともといえばまともだが、なにぶん日本オタクの外国人でしかない。
中学生の男女三人が土地勘もない見知らぬ山中で遭難するなど、考えるだけに恐ろしい状況だ。
不幸中の幸いと言えるのが、この一帯が神楽家の所有であることと、季節が真夏であり凍える恐れがないことだろう。とりあえず天候も穏やかに推移しそうで、捜索にはさほど支障がなかった。
「ほんとに世話が焼けるわね…。帰ってきたらみっちり反省会ものよ!」
広々としたリビングを腕を組んだまま所在無げにうろつきながら、夢莉が苛立ちと焦りの入り混じった複雑な声音の言葉を漏らす。
その様子を横目に、壁にもたれかかった美雅は声をかけるでもなく、伏し目がちの視線で追っている。
遭難することのなかったもう一方の班のリーダーとしては、勝負は既についているわけだから、ライバルたちが無事に戻ってくることを信じる以外にはない。
「落ち着けって、目障りだから座っとけや、夢莉」
「目障りって…、こんな時に落ち着いていられるわけないでしょう? 涼太こそ心配じゃないの?」
ソファーにどっしりと構えた涼太の言葉に、さらにイライラを募らせて抗議する夢莉だったが、涼太は冷静にそれを突っ撥ねる。
「こんな時だからだろうが…。お前が騒いでもどうにもならねぇだろうよ? まるで詩音の母ちゃんか彼氏かみたいな騒ぎ方、お前らしくないってもんだぜ…」
恐らく涼太は夢莉の動揺の理由に気がついているのだろう。それを承知で敢えて言葉にすることで、夢莉の落ち着きを取り戻そうとしているのだろう。夢莉もそうだが、涼太もなかなか難儀な境遇といえる。
「うたぁねぇい、あやぁのぅ、迷子は大変。でもジョナサンいるから平気、おぅけぇい!」
同じく兄が行方不明になったはずの小学六年生の少女、メアリーのほうが随分と落ち着いている。
夢莉はようやく立ち止まると、ひと際大きな溜め息を漏らして、力なく涼太の隣のソファーに腰を下ろす。
「まぁ、あれだ…。憧れの佐伯も探しに行ってることだし、運が良ければ、っていうか運命のナントカが繋がってるなら、きっと二人で戻ってくるだろうよ」
「いや、それは良いけど、彩乃たちはどうするのよ?」
「それこそ、ひょっこり戻って来そうな気もするがなぁ…」
「そんな無責任な…」
夢莉の指摘どおり、別に詩音一人が行方知れずなわけではない。三人揃って、かどうかはわからないが、とにかく纏めていなくなっているのは確かなのだ。
樟葉の身の周りのことを取り仕切っている藤堂という紳士と女性使用人が二人、さらにウェリントン夫妻と佐伯先生が例の山小屋までの道程を確認しに向かっていた。
樟葉もこの山荘近くに絞って手掛かりを探している。まさに土地勘ある者、大人たち総動員での捜索態勢だ。
日没を過ぎても発見できなければ、遺憾ながらたとえ私有地と言えど警察の力に頼ることになるだろう。そうなれば事態は更に大騒動だ。もはや合宿どころの騒ぎではない。
神楽の名にも少なからず影響するだろうし、場合によっては新聞沙汰である。佐伯先生にとっても合宿の引率責任を問われるのは間違いない。
子供の心配事とは違う意味で、大人たちの事情というものもまた複雑なのだ。
「ほら、さっさと入りなさい!」
突然上がった樟葉の声に、リビングの一同が揃って顔を上げると、玄関先で困惑の表情のまま誰かを促している樟葉の姿があった。
「た、ただいまぁ? こんばんわぁ? ど、どもぉ…」
「彩乃ぉ! あんた無事だったの?」
全身泥だらけの格好で、バツの悪そうに挙動不審な視線を彷徨わせる曖昧な笑みの彩乃の姿を確認して、夢莉が涙目で声をかける。
「あ、あはは…。お騒がせしましたぁ、やらかしちゃいましたぁ…」
夢莉は勢い良くソファーから立ち上がり、そのままの勢いで彩乃に跳びつくと、力の限り彩乃を抱きしめた。
「ちょ、汚れる、汚れちゃうよ、夢莉ぃ…」
もはや抱きしめているというより、締めていると言えなくもない二人の抱擁を横目に、美雅は視線を逸らせて追い打ちの悪態をつく。
「馬鹿先輩! 意地張って遭難するとか、ほんと馬鹿みたい! 超絶反省よ、ちゃんと皆に謝って貰うんだから!」
そう言いながらくるりと二人に背を向けて、美雅自身も予想していなかった大粒の涙を指で拭った。
「みぃーみぁー、よしよし」
その様子に目ざとく気づいたメアリーが、爪先立ちの背伸びで美雅の頭を優しく撫でる。
「な、何よそれ、全然訳わかんないし…」
それぞれの状況を呆れたように眺めながら、涼太は溜息交じりに問いかける。
「で、詩音と兄弟はどうなった? まさか…ってことは、ねぇよな?」
涼太の質問に一同が息をのむ。
そう、この状況はいつかの「黒き者たち」の物語の一場面にそっくりだ。嫌な予感が皆の脳裏を掠めても不思議ではない。
「あー、それが、ねぇ…」
彩乃は視線を宙に向けながら、なんとも表現しがたい表情を浮かべて、慎重に言葉を選び話し始めた。
そこからの展開はまさに電光石火の如く迅速だった。
彩乃の誘導の下、藤堂をはじめとする救助隊が現場へと向かう。もちろん佐伯先生やウェリントン夫妻も同行している。
どうやら初期の捜索では、あんな何もないところで遭難はないだろうと思われていた場所らしく、誰一人見にいくことのなかったところのようだ。
まさに初歩的なトラップに引っかかったわけで、彩乃や詩音らしいといえばそれまでだが、巻き込まれたジョナサンはさぞかし不幸だっただろう。
山荘からもさほど離れておらず、現場が窪地でなければ、山荘の最上階からでも見える距離である。よほど運が悪いとしか言いようがない。
「詩音ぇ―、ジョーナサーン、おーい!」
例の丸太橋が見えてくると、彩乃は泥だらけの姿のままで、叫びながら駆け出す。
「君! 山道で走ると危険だから、やめたほうが…」
「彩乃!」
藤堂の制止の言葉も終わらぬうちに、案の定、足を縺れさせた彩乃が盛大に顔面ダイブを決める。その頭上を佐伯先生の叫びが、まさに音速で通り過ぎていく。
「うわぁ…」
じんじんとした鈍い痛みを堪えつつ、彩乃がむくりと起き上がると、窪地の底から心配そうな詩音たちの声が聞こえてくる。
「あやぁのぅ、大丈夫、ですか?」
「凄い音がしたけど、何があったの?」
要救助者に心配されてしまうとは、本当に情けない救助隊であるが、二人の声が聞こえたことで、彩乃以外の皆の表情が自然と緩んだ。
「だいじょ…、…たくない、あ、鼻血…うわぁ、なんだこれ…あはは、あれ?」
涙と鼻血と鼻水と泥汚れでぐちゃぐちゃになった顔のままで、その場にへたり込んだ彩乃は、それだけをうわ言のように呟くと、わんわんと声を上げて泣き始めた。
窪地の底に取り残されたままの詩音とジョナサンは、どちらが助けに来たのかわからなくなりながら、泣きじゃくる彩乃に声をかけ続けた。
「お前たちも大丈夫か? すぐに助けてやるからな。詩音は頭を打ったのだろう? そこで横になっていて構わないから、じっとしているんだぞ?」
そう窪地の底の二人に声をかけながら、佐伯先生が大きな懐中電灯を片手に溝を覗きこむのが見えると、詩音はようやく自分が現実世界に戻ってきたことを実感する。
わんわんと聞こえてくる彩乃の泣き声に当てられたのか、それとも憧れの佐伯先生の姿を見て安心したのか、詩音もまた声にならない啜り泣きを始める。
「おい詩音、何処か痛むのか? 大丈夫、詩音、お前は先生が絶対に助けるからな!」
「はい、ありがちょうございまふ…。さえきせんせ…、だいすきでふ…」
何か大きな心の奥の支えが取れたように、詩音はそう繰り返し喋り続けながら、涙を流す。
―あぁ、何でこんなタイミングで一番肝心なこと、口走ってるんだろうなぁ、私ってば―
そう呆れかえるもう一人の詩音に、素直で良いじゃないかと開き直るもう一人の詩音が呟く。
そこにふと、さらに冷静な本来の詩音自身が戻ってくる。
落ち着いて考えてみれば、今頃になって佐伯先生が声をかけてきたということは、さっきまではこの場にいなかったということなのだろう。
だとしたら、あの不思議空間の息苦しい状態から詩音を救ったのは、いったい誰だというのだろう?
まあ、いいか…。
と、詩音は思う。誰であっても命の恩人かもしれないのだ。感謝しておいて損はない。むしろ積極的にお礼を言うべきだろう。
「良かったね、うたぁねぇい…」
そう笑いかけるジョナサンの言葉が詩音の耳をくすぐった瞬間、詩音は全身に不思議な電気が奔る感覚に包まれた。
「え? ええぇーっ!」
詩音の思考は、その電気の上げる火花に包まれるように、あちこちでショートを繰り返し、やがてブラックアウトした。
◇42 二人だけの特別な時間 に続く
ここまでのお付き合いありがとうございます。この作品の印象が、少しでも皆様の心に残ってくれたら嬉しいです。
よろしければ、短いもので構いませんので、ご意見ご感想をお寄せいただけると励みになります。
是非ご支援よろしくお願いします。
作中の登場人物のイメージ画像を「COM3D2」というPCゲームで作成しました。
いかんせん発展性に乏しいので、今後のことも考えて、イラストを描いてくださる絵師さんを引き続き募集しています。
あまりお礼はできませんが、ご興味があれば、ぜひよろしくお願いします。
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第一部(0~13)は別途掲載中の「あの世とこの世の冒険譚」を分割したもの、
第二部(14~27)はその続編となる部分で、2023/07/31に終了しました。
引き続き第三部(28~)を、2023/09/11より掲載中です。
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