◇36 幕間の舞台袖
中等部二年の西原詩音は、担任の若き国語教師、佐伯十三に憧れる少し弱気な女子生徒。
親友の白岡彩乃と香坂夢莉、幼馴染みの島本涼太、先輩の神楽樟葉らと発足させたRPG同好会の責任者として、佐伯先生を説得して順風満帆に見えたが、様々なハプニングに悩まされていく。
新たに加わった後輩の山科美雅、謎多き外国人兄妹ジョナサンとメアリー、さらにメンバーたちの周囲も巻き込んで、今日もまたドタバタ冒険譚は続いていく…。
初めましてorお久しぶりです。真鶴あさみです。
この作品は、定期的な掲載を目論んだ初めての作品になりますが、おかげさまで順調に連載をこなし、第三部まで到達しました。ありがとうございます。
作品の内容は、いわゆる「RPG同好会の中学生たちのドタバタ劇」ではありますが、今日一般的なスマホゲームやPCゲームではなく、伝統芸能ともいうべきテーブルトーク形式のRPGです。
最初の取っ掛かりはなかなか難しいと思いますが、独特の味わいのある素敵な趣味ですので、この作品をきっかけに興味を持っていただければさらに嬉しいです。
作中の登場人物のイメージ画像を「COM3D2」というPCゲームで作成しました。
いかんせん発展性に乏しいので、今後のことも考えて、イラストを描いてくださる絵師さんを引き続き募集しています。
あまりお礼はできませんが、ご興味があれば、ぜひよろしくお願いします。
それでは、迷走女子のRPG大冒険の様子を、今後も引き続きお楽しみください。
感想や評価も、ぜひよろしくお願いします。
●ご注意
この連作小説は、毎週月曜日の10:00に更新掲載していく予定です。
第一部(0~13)は別途掲載中の「あの世とこの世の冒険譚」を分割したもの、
第二部(14~27)はその続編となる部分で、2023/07/31に終了しました。
引き続き第三部(28~)を、2023/09/11より掲載中です。
主な登場人物
□女性/■男性
□西原 詩音
担任の佐伯先生に恋する、RPGが趣味の中等部二年生。RPG同好会の会長。精神的ハリボテ勇者の引っ込み思案娘。
□白岡 彩乃
詩音のクラスメイトで、ホビーショップの看板娘。明るくマイペースなボクっ娘トラブルメーカー。
□香坂 夢莉
詩音の幼馴染みで、隣のクラス。体操部にも所属。毒舌系百合剣士な雰囲気ながら、情に脆い苦労人。
■島本 涼太
詩音と夢莉の幼馴染み。夢莉のクラスメイトでお隣さん。夢莉にあからさまな挑戦を続けるトリックスター。
□山科 美雅
中等部一年の体操部員。先輩の夢莉を目標に、自己鍛錬を欠かさない努力家。些か情緒不安定な面もあり、周囲から孤立しがちな一匹狼。
□神楽 樟葉
図書委員の中等部三年生。地元名家の一人娘。完璧主義で融通の利かない修道女的性格。詩音のライバル?
■ジョナサン ウェリントン
樟葉の遠縁の金髪男子。明るく陽気な爽やか系。
□メアリー ウェリントン
樟葉の遠縁の金髪女子。ジョナサンの妹で、日本文化に憧れている。
■佐伯 十三
詩音と彩乃の担任の国語教師。RPGの造詣も高く、心理描写重視の演劇スタイルが得意。生徒の評判も良好。
■鷹取 謙佑
ホビーショップのアルバイトの大学生。彩乃の従兄。RPGのほか、玩具系に詳しい。イケメンだが、かなりアバウトな性格。
□道脇 環
RPG雑誌月刊TTMの編集部員で、謙佑の先輩。気さくなゴスロリ美女だが、実態は謎の多き人物。
◇36 幕間の舞台袖
思わぬ騒動に発展したRPGイベントへの飛び入り参加だったが、早速その晩から次の騒動は始まっていた。
最初に暗躍…というにはあからさま過ぎる行動を起こしたのは、もちろん彩乃である。
自分の言いたいことをとことんぶちまけた彩乃は、詩音との通話を一方的に打ち切って、そのまま夢莉に話を持ちかけた。
詩音には作戦があるような大見栄をきったものの、正直なところ彩乃に策と呼べるようなものは何もなかった。それでも、ああでも言わなければ腰の重い詩音が積極的に動くとも思えない。
ならばここは、詩音のことを一番知り尽くしているであろう軍師にお伺いを立てるのが正解というものだ。
「…って感じなんだよね…。どうしよっか…」
ひと通り説明が終わった後で、彩乃は丸投げのお伺いを立てる。
「どうしよっか、って言われてもねぇ…。合宿で二人っきりにしてあげるくらいしかないんじゃない? あー、肝試しやるとか?」
夢莉にしても、唐突に話を持ちかけられて咄嗟に何かを思いつくのは無理というものだろう。
合宿先の軽井沢についても、殆どと言っていいほど知識がないのだ。いい雰囲気を演出できる秘密の場所や、お薦めのいわゆる映えスポットなど、知っているはずもない。
「肝試しかぁ…うーん…」
彩乃が微妙な唸り声で反応する。言い出しっぺの夢莉からしても、いまいちな提案であるのは明白だった。
「だいたい、具体策もないのに啖呵きっちゃうとか、あり得なくない? 爆撃機の大群飛ばしてから爆弾探しに行くようなものよ?」
「それはそうなんだけどさ…、いちおう同盟軍なわけで、詩音に爆撃するわけじゃないし…」
お互いに深い溜め息をつきながら、二人はとりあえず手近なところから爆弾探しを始める。
「…ねぇ、ところで樟葉先輩って、何処まで本気なのかなぁ…」
ほど良い爆弾がなかなか見つからず途方に暮れ始めた頃、彩乃が突然そんな疑問を口にする。
確かに夢莉としても常々疑問に思っていることだった。
詩音によると、正々堂々勝負しましょう!とか、私は負けません!とか、そのような発言があったらしいのだが、樟葉自身が何か具体的にアプローチをしている形跡がないのだ。
もちろん、人目につかないところでこそこそと何かをしている可能性はあるが、樟葉の性格を考えればそれも考えにくい。
唯一思い当たるとすれば、このところの騒動続きで詩音の代わりに職員室に出入りをしていたのが、年長者の樟葉だったという成り行きだけである。
「あたしにもわかんないわよ、そんなこと…。単に詩音に発破をかけようとしただけで、実際は何もないのかもしれないし…」
「協力してくれないかなぁ、樟葉先輩…」
彩乃はダメ元で呟く。ライバルに塩を送るような真似を、果たして樟葉が受け入れるだろうか。そもそもいったい樟葉に何をさせようというのだろうか。
「その前に、まずは具体的な作戦を立てなさいよ…」
「うーん…夏の避暑地のハプニング…かぁ…」
やはり彩乃も年頃の少女であることに変わりはない。何処にでもありそうなキャッチコピーを捻り出しつつ、彩乃はなおも呻いていた。
「そんなもん、そうそうないでしょ、誰かが仕掛けない限りは…。でも、詩音はちょっとアレだから、もしかするかもね…」
少々呆れ気味な夢莉のそんな言葉に同意して、彩乃は大きく頷いた。
「あはは…だよね、詩音だもんね。ほっといてもトラブルのほうからやってくるかも?」
「ハプニングはいいけど、これ以上のトラブルはゴメンってとこね…」
夢莉のひと際大きな溜め息と、対照的な彩乃の明るい笑い声が重なり合った。
樟葉はその日、他の仲間たちとは別行動をとり、RPGのイベントに出向くことはなかった。
ジョナサンたち兄妹の両親、つまりウェリントン夫妻の到着を出迎えるためである。
暫く日本を離れていたとはいえ、神楽家の遠縁にあたる太秦は生粋の日本人、大和魂の持ち主である。いわば帰郷を果たしたにすぎない状況だ。
妻のリンダにしても、例の大震災の頃までこの国で生活していたこともあり、けっして見知らぬ異境の場所というわけではない。
ただし、リンダにとっては、ジョナサンとメアリーの実父、亡くなった先夫の眠る地でもある。その心中は複雑だろう。
神楽本家の屋敷に二人を乗せた車が到着するなり、一目散に駆け寄るメアリーの歓迎アピールが始まる。この光景だけを見ていると、とても小学六年生には見えないはしゃぎようだ。
「お帰りなさい、日本へようこそ。心より歓迎します」
樟葉とジョナサンが車を降りた二人を歓迎して出迎える。だが、本来こういう役目を担うべき現当主、つまり樟葉の父の姿はない。
「歓迎ありがたくお受けするよ、樟葉ちゃん。しかし、日本にようこそ、というのは、どうにも微妙な気分だな…。まるで異国人にでもなったような…まぁ、間違ってはいないか…」
「相変わらずお元気そうで何よりです、太秦の叔父様。それにリンダさんも変わらずお綺麗で…」
太秦の率直な感想に応えて、樟葉も笑顔で話を続けた。
「あら、そんなお世辞も言えるようになって…。綺麗になったのは樟葉ちゃんのほうよ? 大きくなっちゃって…」
「あ、いえ、そんな…。それにしてもリンダさん、日本語も随分上達されたのですね、驚きました」
樟葉が以前会ったときには、まだリンダは最低限の会話しかままならない状態であった。職業柄、かえって専門用語の類には精通しているようだったが、日本語特有の微妙な間と曖昧な表現には手を焼いているような印象だった記憶がある。
「あぁ、うちの子たちが毎日毎日日本語の番組ばかり観て、太秦とも日本語で話すものだから、すっかりあたしのほうが日本家庭にホームステイしているような気分なのよ。おかげで英語もだいぶ忘れちゃったわ…」
「それは何というか、災難ですね」
そんなリンダと家族たちの和気あいあいとした日常が目に浮かぶようだ。
「それはそうと、ご当主…お父上は、まだ…」
太秦が精悍な表情を僅かに曇らせながら、樟葉に問う。もちろん樟葉自身も、この発言が出るだろうことは予想済みだった。
「はい、申し訳ありません。やはり身内の手前…とでも申しましょうか。当主を任せられた以上、父としても表立ってお二人を歓迎するわけにもいかないと…。当然ながら、父にとっても不本意だとは思いますが…」
太秦は樟葉の叔父、いわゆる遠縁にあたるが、本来なら神楽家の一員として、それなりの待遇で歓待されて然るべき人物だった。
しかし、親戚一同の反対を押し切り、神楽の名を捨て海外へと籍を移し、素性のしれない異国の未亡人、しかも二人の子持ちだったリンダと結婚を強行したことに、神楽の親族は一様に不快感を示していた。
当時の当主であった神楽の祖父が、その対立の事情を汲み、神楽家とウェリントン家の直接のやり取りを禁じた。
ただし、神楽本家の孫娘である樟葉の心情に配慮する、という建前で、あくまで「樟葉の友人の外国人一家」という体裁での関係だけは辛うじて維持されることになった。
そのような経緯があるおかげで、ジョナサンたちウェリントン家の窓口となるのは、常に幼い樟葉の仕事となった。
実態はもちろん、父である現当主や、神楽本家の執事や使用人が実務を行うことになるのだが、名目上の責任は樟葉にあった。
いくら次期当主とはいえ、―正確には樟葉の未来の夫となる者が次期当主となるのかもしれないが―どちらにせよ、このウェリントン家がらみの案件は、体よく樟葉に丸投げされるようになっている。
「樟葉ちゃんにまで気を遣わせて、本当に申し訳ない。あ、いや、樟葉お嬢様とお呼びするべきだったかな?」
「構いません。いつも通り樟葉ちゃんでいいですよ、叔父様。今ではそう呼んでくださる人も少ないですから…」
いつの頃からか、周囲の大人たちの樟葉に対する見方が変わっていった。というより、樟葉がその変化に気づくようになってきたというのが正しいのだろう。
樟葉自身に別段、次期当主としての心構えなどといった意識の変化はないはずなのだが、それでも周りはそうは見ないということなのだろう。
お嬢様に何かあっては…、お嬢様に相応しいものを…、などと勝手に気をまわして、それが迷惑とまでは言えないが、多少の息苦しさを感じることもある。
だからこそ、幼少期から変わらぬ態度で接してくれる太秦の叔父様は、樟葉にとっても、かけがえのない人物の一人だった。
「とにかく、皆さん中にお入りになってください。日本の夏は容赦なく暑いですから」
皆を促して、樟葉自身も踵を返しながら、そういえば、あちらはどうなったのかしら? と僅かにRPGイベントに向かった詩音たちの様子が、ふと頭をよぎった。
あちらも何事もなく無事に帰ってきてくれると良いのだけれど…。そう考えた樟葉の願いとは裏腹に、その頃、事態は波乱を迎えていたのである。
◇37 きらめく二人の競演 に続く
ここまでのお付き合いありがとうございます。この作品の印象が、少しでも皆様の心に残ってくれたら嬉しいです。
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作中の登場人物のイメージ画像を「COM3D2」というPCゲームで作成しました。
いかんせん発展性に乏しいので、今後のことも考えて、イラストを描いてくださる絵師さんを引き続き募集しています。
あまりお礼はできませんが、ご興味があれば、ぜひよろしくお願いします。
●ご注意
この連作小説は、毎週月曜日の10:00に更新掲載していく予定です。
第一部(0~13)は別途掲載中の「あの世とこの世の冒険譚」を分割したもの、
第二部(14~27)はその続編となる部分で、2023/07/31に終了しました。
引き続き第三部(28~)を、2023/09/11より掲載中です。
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