◇34 正解のない答え探し
中等部二年の西原詩音は、担任の若き国語教師、佐伯十三に憧れる少し弱気な女子生徒。
親友の白岡彩乃と香坂夢莉、幼馴染みの島本涼太、先輩の神楽樟葉らと発足させたRPG同好会の責任者として、佐伯先生を説得して順風満帆に見えたが、様々なハプニングに悩まされていく。
新たに加わった後輩の山科美雅、謎多き外国人兄妹ジョナサンとメアリー、さらにメンバーたちの周囲も巻き込んで、今日もまたドタバタ冒険譚は続いていく…。
初めましてorお久しぶりです。真鶴あさみです。
この作品は、定期的な掲載を目論んだ初めての作品になりますが、おかげさまで順調に連載をこなし、第三部まで到達しました。ありがとうございます。
作品の内容は、いわゆる「RPG同好会の中学生たちのドタバタ劇」ではありますが、今日一般的なスマホゲームやPCゲームではなく、伝統芸能ともいうべきテーブルトーク形式のRPGです。
最初の取っ掛かりはなかなか難しいと思いますが、独特の味わいのある素敵な趣味ですので、この作品をきっかけに興味を持っていただければさらに嬉しいです。
作中の登場人物のイメージ画像を「COM3D2」というPCゲームで作成しました。
いかんせん発展性に乏しいので、今後のことも考えて、イラストを描いてくださる絵師さんを引き続き募集しています。
あまりお礼はできませんが、ご興味があれば、ぜひよろしくお願いします。
それでは、迷走女子のRPG大冒険の様子を、今後も引き続きお楽しみください。
感想や評価も、ぜひよろしくお願いします。
●ご注意
この連作小説は、毎週月曜日の10:00に更新掲載していく予定です。
第一部(0~13)は別途掲載中の「あの世とこの世の冒険譚」を分割したもの、
第二部(14~27)はその続編となる部分で、2023/07/31に終了しました。
引き続き第三部(28~)を、2023/09/11より掲載中です。
主な登場人物
□女性/■男性
□西原 詩音
担任の佐伯先生に恋する、RPGが趣味の中等部二年生。RPG同好会の会長。精神的ハリボテ勇者の引っ込み思案娘。
□白岡 彩乃
詩音のクラスメイトで、ホビーショップの看板娘。明るくマイペースなボクっ娘トラブルメーカー。
□香坂 夢莉
詩音の幼馴染みで、隣のクラス。体操部にも所属。毒舌系百合剣士な雰囲気ながら、情に脆い苦労人。
■島本 涼太
詩音と夢莉の幼馴染み。夢莉のクラスメイトでお隣さん。夢莉にあからさまな挑戦を続けるトリックスター。
□山科 美雅
中等部一年の体操部員。先輩の夢莉を目標に、自己鍛錬を欠かさない努力家。些か情緒不安定な面もあり、周囲から孤立しがちな一匹狼。
□神楽 樟葉
図書委員の中等部三年生。地元名家の一人娘。完璧主義で融通の利かない修道女的性格。詩音のライバル?
■ジョナサン ウェリントン
樟葉の遠縁の金髪男子。明るく陽気な爽やか系。
□メアリー ウェリントン
樟葉の遠縁の金髪女子。ジョナサンの妹で、日本文化に憧れている。
■佐伯 十三
詩音と彩乃の担任の国語教師。RPGの造詣も高く、心理描写重視の演劇スタイルが得意。生徒の評判も良好。
■鷹取 謙佑
ホビーショップのアルバイトの大学生。彩乃の従兄。RPGのほか、玩具系に詳しい。イケメンだが、かなりアバウトな性格。
□道脇 環
RPG雑誌月刊TTMの編集部員で、謙佑の先輩。気さくなゴスロリ美女だが、実態は謎の多き人物。
◇34 正解のない答え探し
モーリスを止めるべく奔走したエルザたちバリア一家の面々だったが、結局間に合うことはなく、彼女たちの目前で病院の一角を吹き飛ばしつつ、マシウスとその護衛、そしてモーリス本人も一緒にこの世を去ることになった。
恐らくフラワーアレンジメントの箱に仕掛けられていたであろう爆弾が、いったい誰の手によるものかが問題だったが、ボビーたちがモーリスの自宅兼アトリエを家探しした結果、あまり絵画とは関係のなさそうな薬品や器具、部品などが見つかったらしい。
それが何だったのかは、既に問い詰める相手がいなくなった今となっては、想像の域を出ない。
そういえば、その部屋には、あの日ジェイミーがかぶっていた野球帽もあったという。ボビーたちに問い詰められても、とことん口を割らないわけだ。
また、若い女性を描いた絵画がイーゼルに乗せられたままで、遺書と思しき手紙が添えられていたという。
あまり高級とはいえないシンプルな装飾の銀色の指輪が同封された手紙には、この指輪と作品を親愛なるエルザ・リスターに捧げる、という趣旨の事が書かれていたとのことだった。
その絵画は今、バリア邸のエルザの私室にイーゼルごと移されている。
しかし、エルザの手に銀色の指輪は輝いていない。
エルザはその指輪をバリア一家出入りの古物商に売却した。かなりの無理を吹っ掛けつつ手に入れた金は、モーリスとジェイミーの育った孤児院に寄付をした。
まったく穢れのない金だとはいえないが、ギャングやマフィアの抗争資金になるよりはマシな使い道だろう。
モーリスとジェイミーの両親も、以前の抗争に巻き込まれて亡くなっていたのだという。
もちろん昔の話で、誰がどのようにして関わっていたのかまでは知る由がない。当然ながらバリア一家の誰かがその犯人かもしれないわけだ。
となれば、これは二人にとっての復讐、因果応報というものかもしれない。
そうであれば、果たしてモーリスがエルザの正体に気づいていなかったのか? むしろ素性を知ったうえで接近したのではないか? という疑問が浮かんでくる。
つまり、エルザとモーリスの間に芽生えた恋心は本当に実在したのか…という話である。
そんな複雑な思いを巡らせながら、暫くの後、エルザは不本意ながら父、マシウスの跡を継ぎ、新たなバリア一家の当主を襲名することになった。
不本意ではあったが、それは半ばエルザの望んだ未来でもあった。
ゴーダ一家との争いに一刻も早く終止符を打ち、あの二人の兄弟のような悲劇をなくすために…。そして、自分とモーリスのような悲恋をなくすために…。
新たな決意を秘めて、エルザは絵の中で微笑む、穢れを知らぬ頃の自分を見つめていた…。
「以上でひとまず終了です、ありがとうございました」
環がそう宣言すると、テーブルを囲む面々は安堵の吐息を漏らし、散発的な拍手でそれぞれの健闘を称えた。
「今後もキャラクターを使いたい人は、経験点8点プラスで調整してね。あー、モーリスは残念ながら、退場封印で…何か復活要素があれば問題ないけどね」
「結局、死亡は私だけか…。皆もっと大胆に突撃するかと思ってたのに…」
モーリス役の女性プレイヤーがそう呟くものの、どうやら自分自身のプレイには満足しているらしい。もちろんその結果を含めてのことだろう。
彼女、というか彼としては、バリア一家に復讐を果たすという目的は達成したのだから、経緯はどうあれ、正義か否かはさておき、満足のいく着地点を得たわけだ。
結果的に彼女のキャラクターとしてのモーリスは死んだが、それは大した問題ではないのだろう。
「さてさて、エルザ西原の感想はどうだったかしらね。少し聞かせて貰えると嬉しいわ…」
環の言葉に促されて、遠慮がちに詩音が正直な心境を口にする。
「なんだかその…話には聞いていたんですが、どうもパーティプレイじゃない個人の立ち回り?っていうんですかね? それが良くわからなくて、だいぶ暴走気味っていうか、勝手放題やっちゃったかなって反省してます」
まぁ詩音がそう思うのも無理はない。
ゲーム機やスマートフォンでゲームをプレイすることが殆どの世代が、いきなり本格的なRPGの世界に放り込まれるのだから、初めのうちは皆でまとまって相談しながら進めていくのがセオリーだろう。
しかし、RPGの奥深さはそこに留まらない。
キャラクターの追及はすなわち個性の追求であるわけで、現実同様の人間関係の歪みも当然あるはずだ。キャラクター同士が常に平穏に和気あいあいと過ごせることばかりではないのだ。
「まぁ、そこは空想の世界でも、生きている人間だから仕方ないところね。現実でも身近にいるじゃない? 後先考えないで突っ走っちゃう困った人って…」
「あ、あははは…」
詩音は乾いた笑い声をあげるが、まるで自分のことを言われているようで、その心は複雑だ。それに、RPG同好会の他のメンバーも、多かれ少なかれ似たり寄ったりだろう。
「それにしても、俺の射線を身体で塞ぎに来るとか、いくらフィクションでもヤバいって! そのくせ、最後は先陣きってゴーダ一家のアジトに落とし前つけに突撃かますし…」
ミスターボビーの呆れたような感想は、他のプレイヤー一同の笑いを誘う。
「おかげで切れ者のはずのメイスンの影が薄い薄い! 美味しい所は全部、お嬢にもっていかれちゃったよなぁ…」
メイスン役の男性もすっかり出番を食われて少々複雑だ。
「ほんとにすみませんでしたっ!」
恐縮してぺこぺこと頭を下げまくる詩音を庇うように、ミスドロシーが声をかけてくる。
「そんなの気にしないでいいって! 淡々と退屈なシナリオよりも百倍マシなんだから!」
「そうそう、無難な連中ばかりじゃマスターも張り合いないだろうし…」
ミスモーリスの言葉が続く。環もそれに同意して頷いている。
「これに懲りずにまた遊びに来てちょうだいね。別に私の所じゃなくていいから、自分なりにいろいろ楽しんでみるといいわ」
「はい、ありがとうございましたっ!」
ようやく戻った満面の笑みで、詩音は大きく頷いた。
間もなくイベントは終盤を迎え、テーブル毎に既に終了しているか、はたまた絶賛巻き取り中かの様相を呈している。中には、到底これは終わりそうもない、といったテーブルもあるようだが…。
詩音は自分のテーブルからぐるりと辺りを一望して、他のメンバーの様子を探ってみた。
隣の時代劇RPGのテーブルでは、既にプレイを終えたのだろう夢莉と涼太が、和気あいあいと周囲のプレイヤーと談笑している。どうやら二人とも無事に楽しめたようだ。
ちょっと離れたテーブルの二人の問題児と指導係の様子を窺うと、こちらもプレイ自体は終わっているようだったが、どうも雲行きが怪しい…というより、既に雷雨が間近に迫っているような雰囲気だった。
「他のテーブルが気になるなら、見にいってくればいいのでは? 荷物はここに置いておけばいいし…」
ミスターメイスンが紳士的に促す。この人はきっと根っからパリッとした、紳士的な男性なのだろう。
「はい、じゃあ、ちょっと行ってきます」
詩音はそう言い残して席を立ち、足早に彩乃たちのテーブルに向かう。
「あれ? あの子、彼氏でも一緒だったってか?」
「ん? あー、彼氏のほうがまだ平和だったかもね…」
「何ですか、それ?」
ボビーの何気ない問いかけに環が答え、さらにドロシーが疑問を呈する。
彩乃たち三人と他数人が参加している、ロイヤルバンシーRPGのテーブルに詩音が近づくと、その違和感に満ちた空気が一層強く伝わってきた。
「あ、詩ちゃん、そっちは終わったの? 道脇さんのところだよね?」
謙佑が詩音に気づいて声をかけてくる。その表情は普段とあまり変わらない様子だが、声には少し元気がない気もする。
「終わりました。楽しかったですよ。こっちも終わって…ます…よね?」
「まぁ、終わっているかな…、いろんな意味で…」
歯切れの悪い謙佑の視線の先では、互いに視線を合わせずに黙々とキャラクターシートに何かを書き込む彩乃と美雅の姿があった。
「何かあったんですか、謙佑さん? …っていうか二人とも、何かありましたよね、たぶん…」
詩音が戸惑いがちに尋ねると、他のプレイヤーの一人が投げやりに口を挟んできた。
「全滅したんすよ、その馬鹿二人のお陰で…」
「ぜ、全滅ぅ?」
詩音が驚いたように声を上げると、彩乃と美雅の視線が一瞬、ちらりとこちらを窺って再び明後日の方向に逸らされる。
お互いに自分は悪くない、悪いのは向こうだ、とでも言いたいのだろう。
「そんなわけで、夢落ちエンドで強引に纏めたんだけど、皆、不完全燃焼って感じなんだよ…」
謙佑が困ったようにそう説明するが、話している当人も恐らく納得はしていないのだろう。
「はぁ…」
◇35 荊の路の道しるべ に続く
ここまでのお付き合いありがとうございます。この作品の印象が、少しでも皆様の心に残ってくれたら嬉しいです。
よろしければ、短いもので構いませんので、ご意見ご感想をお寄せいただけると励みになります。
是非ご支援よろしくお願いします。
作中の登場人物のイメージ画像を「COM3D2」というPCゲームで作成しました。
いかんせん発展性に乏しいので、今後のことも考えて、イラストを描いてくださる絵師さんを引き続き募集しています。
あまりお礼はできませんが、ご興味があれば、ぜひよろしくお願いします。
●ご注意
この連作小説は、毎週月曜日の10:00に更新掲載していく予定です。
第一部(0~13)は別途掲載中の「あの世とこの世の冒険譚」を分割したもの、
第二部(14~27)はその続編となる部分で、2023/07/31に終了しました。
引き続き第三部(28~)を、2023/09/11より掲載中です。
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