◇30 魔物たちの巣窟へ
中等部二年の西原詩音は、担任の若き国語教師、佐伯十三に憧れる少し弱気な女子生徒。
親友の白岡彩乃と香坂夢莉、幼馴染みの島本涼太、先輩の神楽樟葉らと発足させたRPG同好会の責任者として、佐伯先生を説得して順風満帆に見えたが、様々なハプニングに悩まされていく。
新たに加わった後輩の山科美雅、謎多き外国人兄妹ジョナサンとメアリー、さらにメンバーたちの周囲も巻き込んで、今日もまたドタバタ冒険譚は続いていく…。
初めましてorお久しぶりです。真鶴あさみです。
この作品は、定期的な掲載を目論んだ初めての作品になりますが、おかげさまで順調に連載をこなし、第三部まで到達しました。ありがとうございます。
作品の内容は、いわゆる「RPG同好会の中学生たちのドタバタ劇」ではありますが、今日一般的なスマホゲームやPCゲームではなく、伝統芸能ともいうべきテーブルトーク形式のRPGです。
最初の取っ掛かりはなかなか難しいと思いますが、独特の味わいのある素敵な趣味ですので、この作品をきっかけに興味を持っていただければさらに嬉しいです。
作中の登場人物のイメージ画像を「COM3D2」というPCゲームで作成しました。
いかんせん発展性に乏しいので、今後のことも考えて、イラストを描いてくださる絵師さんを引き続き募集しています。
あまりお礼はできませんが、ご興味があれば、ぜひよろしくお願いします。
それでは、迷走女子のRPG大冒険の様子を、今後も引き続きお楽しみください。
感想や評価も、ぜひよろしくお願いします。
●ご注意
この連作小説は、毎週月曜日の10:00に更新掲載していく予定です。
第一部(0~13)は別途掲載中の「あの世とこの世の冒険譚」を分割したもの、
第二部(14~27)はその続編となる部分で、2023/07/31に終了しました。
引き続き第三部(28~)を、2023/09/11より掲載中です。
主な登場人物
□女性/■男性
□西原 詩音
担任の佐伯先生に恋する、RPGが趣味の中等部二年生。RPG同好会の会長。精神的ハリボテ勇者の引っ込み思案娘。
□白岡 彩乃
詩音のクラスメイトで、ホビーショップの看板娘。明るくマイペースなボクっ娘トラブルメーカー。
□香坂 夢莉
詩音の幼馴染みで、隣のクラス。体操部にも所属。毒舌系百合剣士な雰囲気ながら、情に脆い苦労人。
■島本 涼太
詩音と夢莉の幼馴染み。夢莉のクラスメイトでお隣さん。夢莉にあからさまな挑戦を続けるトリックスター。
□山科 美雅
中等部一年の体操部員。先輩の夢莉を目標に、自己鍛錬を欠かさない努力家。些か情緒不安定な面もあり、周囲から孤立しがちな一匹狼。
□神楽 樟葉
図書委員の中等部三年生。地元名家の一人娘。完璧主義で融通の利かない修道女的性格。詩音のライバル?
■ジョナサン ウェリントン
樟葉の遠縁の金髪男子。明るく陽気な爽やか系。
□メアリー ウェリントン
樟葉の遠縁の金髪女子。ジョナサンの妹で、日本文化に憧れている。
■佐伯 十三
詩音と彩乃の担任の国語教師。RPGの造詣も高く、心理描写重視の演劇スタイルが得意。生徒の評判も良好。
■水野
夢莉の担任の体育教師で、体操部の顧問。親身な熱血指導が誤解と不評を受ける不運な境遇。
■鷹取 謙佑
ホビーショップのアルバイトの大学生。彩乃の従兄。RPGのほか、玩具系に詳しい。イケメンだが、かなりアバウトな性格。
◇30 魔物たちの巣窟へ
詩音たちRPG同好会の面々は、バーガーショップを後にすると、ぞろぞろと駅前商店街のアーケードに突入した。
とはいえ、別に何かお目当ての買い出しがあるわけではない。このアーケードの終端近くに彩乃の家でもあるホビーショップ「Colline Blanche」があるのだ。
考えようによっては、彩乃が自宅に友達を連れてきた、というだけである。
「こんなところにクレープ屋ができたんだ…」
あまりこの辺に立ち寄ることのない夢莉が、物珍しそうに辺りを見回して、興味津々で呟いた。
「あー、あそこ、アップルソース系が美味しいんだよ」
彩乃がそう答えながら、先陣をきってアーケードを進んでいく。
やがてアーケードの終わりが見えてくると、少し表情を曇らせた詩音は、無意識のうちにぎゅっと拳を握り締める。
この先、たった数百メートルと行かない交差点で、詩音の兄は交通事故に巻き込まれたのだ。
兄は亡くなり、その兄が遺した一冊の本が詩音と彩乃の縁を紡いだ。まるで兄の代わりに、大切な親友と新しい趣味を詩音に遺すようにして、兄は旅立っていったのだ。
「ここだよ、ほら!」
一軒の店舗の前に、お決まりのスターマークの看板と、数台のカプセルベンダーのマシンが並んでいる。
窓ガラス越しに店内を窺えば、可愛いとも不気味ともいえる中途半端にリアルな造形のドールや、懐かしムード溢れる年代物のレトロロボット、近頃流行りの美少女萌えポップなどが並んでいる。
「なんつーか、マジにマニアックじゃねぇか! もっとこうキッズ向けのチョロいヤツかと思ってたぜ…」
涼太が感心したように息をのむ。それぞれの物の価値は良くわからないが、とにかく凄いお宝であることは容易に想像できた。
「とりあえず、入って入って!」
若干笑顔を取り戻しつつ、彩乃が先頭で店の扉に手をかけ、ゆっくりと引き開けていく。
「いらっしゃいませ」
カウンターに立つ謙佑の明るい声が歓迎するように響く。
「ただいま、謙ちゃん。ちょっといっぱい連れてきた!」
彩乃がさらに笑顔になって、謙佑に手を振り返す。そんな彩乃の様子を、謙佑は微笑みながら見守っている。いつもと変わらぬ光景だ。
「謙佑さん、こんにちは。大勢で押しかけちゃってすみません」
「気にしないで大丈夫だよ、詩ちゃん。あとは、涼ちゃんに…夢ちゃん!」
詩音が恐縮したように声をかけるが、謙佑は朗らかな表情のままで一同の顔を順番に見渡す。
「先日はありがとうございました。お陰様で、無事追試は免れました」
夢莉は軽く会釈をして、スパルタ合宿送迎のお礼を伝える。
「それは良かった。今日はお嬢様は一緒じゃないの?」
「お屋敷が駅とは別方向だからね。それに急遽、皆でここに来ることになったんだよ」
彩乃の言葉に頷いて、謙佑が納得の表情を浮かべる。
「そうなんだ、てっきり彼女と待ち合わせかと思ったよ」
「彼女…?」
一同が声をそろえて訝し気に聞き返すと同時に、再び店の扉が開かれた。
「はぁ! なんで、また、おめぇ何者だぁ?」
軽やかな来店歓迎のチャイムを打ち消すように、涼太の怒声が来店客に向かって浴びせられる。
「あら、皆さんお揃いで…、いらっしゃいませ?」
そこに立っているのは、まごうことなき彩乃の宿敵、RPG同好会の因縁の相手、美雅だった。
しかも、美雅は「Colline Blanche」のロゴ入りエプロンを身に着けて、手にはクレープ屋の洒落た紙袋を抱えているのだ。
「山科、あんた、帰ったんじゃ…」
呆然とする夢莉がどうにか紡いだ疑問に、さも当然とばかりに美雅が答える。
「確かに帰りましたよ? でも、途中何処に寄り道しようと、そこは私の自由、ですよね?」
「はぁ?」
彩乃はそう唸りながらも、美雅の言い分を否定することはできないと理解もしている。
「ところで、何でエプロン姿?」
様々な感情が一気に溢れてエンストを起こした彩乃に代わって、詩音が疑問を口にする。
「単なるお手伝いですよ。別に深い意味なんてないし…」
そうは言いつつ、宙を彷徨わせた美雅の視線が、謙佑と彩乃をちらちらと窺う。
「とりあえず、店内は飲食できないから、悪いけど外でお願いできるかな?」
謙佑が冷静にそう促すと、はい、と小さく頷いて、踵を返した美雅が再び店を後にする。
扉がしっかりと閉まるのを確認すると、ようやく彩乃が涙目で訴えかける。
「謙ちゃん、いったいどういうこと? 何でお手伝いに山科さんが…」
「まぁ、落ち着いて、彩ちゃん」
それから暫く、一同は謙佑の話に耳を傾けることになった。
大まかに言って、話はこうだ。
美雅もRPG同好会に入ることになったが、いまいち良く理解していない。だから少しいろいろと謙佑に教えてもらいたい。
代わりというわけではないのだが、店に話を聞きに来るときは、お礼として謙佑を手伝いたい。
そして、とりあえず軽く何か食べてから早速お願いしたい、と…。
「そんな勝手な、一方的な…! ボクの存在はスルーだし…!」
彩乃はそう言いながら、再び自分に美雅を止める権利はないことに歯痒い思いを噛みしめる。
「いちおうこっちも、詩ちゃんや彩ちゃんに聞いたほうが早い、とは伝えたんだけどね。やっぱり集団がちょっと苦手なのかな…」
「まぁ、わからなくはないですけどね…」
謙佑の言い訳じみた言葉に、夢莉が戸惑いがちな同意を示す。
夢莉が体操という競技を続けているのも、それが個人競技だからだ。
他にも女子が好きそうなバレーやバスケット、サッカーやソフトボールなどスポーツは幾つもあるが、どうも夢莉自身、団体競技というのは性に合わない気がしていた。
チーム内の結束といえば聞こえはいいが、要するに暗黙のルールに縛られて、互いの腹の内を探り合いながら切磋琢磨する、というのは、かなりの面倒事に思えて仕方がない。
勝ち続けているうちはまだいいが、ひとたび負のスパイラルに嵌りでもすれば、その精神的な混沌具合は想像したくもない。
美雅の家庭事情や現在の状況など知る由もないが、どこか夢莉と共通するところがあるのかもしれない。
「お父さん、たぶん中学生のバイトは認めないよ? まぁ、おかげでボクが忙しいんだけど…」
彩乃がそう言いかけた瞬間、それを見計らったように美雅が扉を開けて戻ってくる。
「だったら、ウィンウィンってやつじゃないですか! 別にバイト代は要らないし、単に話を聞きたいだけだし、おまけに白岡先輩の自由時間が増えるなら、良い事尽くめでしょう?」
自信に満ちた悪戯な微笑み、悪魔の微笑みにもみえる表情を浮かべて、美雅は彩乃を見据える。
「だから、そうじゃなくて!」
そう彩乃が挑発にのって声を荒げるのを無視して、美雅はくるりと謙佑に視線を移した。
「ところで謙佑さん、日曜日、待ち合わせの時間、どうしますか?」
「はぁっ? 待ち合わせぇ?」
唐突に爆弾級の破壊力をもって紡がれた美雅の一言に、彩乃を含めた皆がいっせいに声を揃えた。
「そっ、私、日曜は謙佑さんとデートなの…」
「なっ…」
そのいきなりの美雅の宣言に、心の許容量を超えて衝撃を受けた彩乃が、脳内真っ白状態になってその場に固まってしまう。
しかし、衝撃を受けたのは彩乃だけではない。
「どういうことなんですか、謙佑さん?」
詩音が彩乃の代理に問い質す。藪を突いて蛇が出ようが、もはや知ったことではない。
「デートはさすがに嘘、心配ご無用だからね。美ちゃんが一度、RPGを実際にやってみたいって言うから、今月のイベントに一緒に来てみる?って話をしただけさ」
自覚がない、悪意のない不可抗力の悪意というのはこういうものなのだろうと、詩音は思う。
確かに謙佑の話の言葉通りの意味なのだろう。そこに悪意はない。
もっとも、美雅のほうに悪意というか、何らかの意図があったのかどうかまではわからない。少なくとも多少なりとも打算はあったとは思えるが。
「そんじゃあ、決まりだな! 俺たちもそのイベント一緒に行かせてくださいよ、謙佑さん! ダメだと言っても行きますよ、絶対!」
涼太がここぞとばかりに斬りこみ役を買って出る。こういう時には、詩音にとって心強い幼馴染みだ。
「それはいいけど…、いいよね、美ちゃん?」
「まぁ、良いですよ、別に私は…」
涼太の剣幕に押し切られて、謙佑と美雅が同意する。
「よーし、ついに遠征試合だぜ! 待ってろよ、有象無象の魔物ども!」
涼太が斜め上に気合を入れて舞い上がるのを、夢莉が冷ややかな視線で窘める。
「まったく…、あんたが調子こいてどうするのよ? 退治するのは獅子身中の虫だけでいいわよ…」
「はっ! あれ? ボク…どうなった?」
肝心の主人公がすっかり蚊帳の外で置いてきぼりになっている状況で、ようやく我に返った彩乃が小首を傾げる。
「おうよ、彩乃! いっちょ、ぶちかまそうぜ!」
馴れ馴れしく肩を組み、涼太がそう語りかけるも彩乃は状況を理解していない。
詩音は再び繰り返された混沌の光景を、唖然として見つめ続けるだけだった。
◇31 迫りくる大嵐の予感 に続く
ここまでのお付き合いありがとうございます。この作品の印象が、少しでも皆様の心に残ってくれたら嬉しいです。
よろしければ、短いもので構いませんので、ご意見ご感想をお寄せいただけると励みになります。
是非ご支援よろしくお願いします。
作中の登場人物のイメージ画像を「COM3D2」というPCゲームで作成しました。
いかんせん発展性に乏しいので、今後のことも考えて、イラストを描いてくださる絵師さんを引き続き募集しています。
あまりお礼はできませんが、ご興味があれば、ぜひよろしくお願いします。
●ご注意
この連作小説は、毎週月曜日の10:00に更新掲載していく予定です。
第一部(0~13)は別途掲載中の「あの世とこの世の冒険譚」を分割したもの、
第二部(14~27)はその続編となる部分で、2023/07/31に終了しました。
引き続き第三部(28~)を、2023/09/11より掲載中です。
■HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)を公開中ですが、只今、絶賛放置中です。
■Twitterもあります(@manazuru7)。




