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よよぼう ~あの世とこの世の冒険譚  作者: 真鶴あさみ
波乱の冒険のその先へ
107/112

◇105 七人の双子姫

まえがき


「よよぼう_~あの世とこの世の冒険譚」は、原則的に毎週月曜日の朝10:00に更新予定の、連載形式の小説作品です。


2025/1/13より、現在の第八章を掲載中です。今のところ、この章で完結となる予定となっています。



「よよぼう」第七章までのあらすじ &登場人物

https://ncode.syosetu.com/n0444ie/98

◇105 七人の双子姫



 今まさに、語り部であるゲームマスターの想定を大きく逸脱した、謎の…謎過ぎる一団が、辺境王国の王宮に帰還しようとしていた。


 その名も、「七人の双子姫」である。


 七人で双子というのが、そもそもおかしな話ではあるのだが、そこはまぁ、黄金の鉄アレイだの、漆黒の闇の輝きだの、ド田舎の大都会だの…といった言葉遊びと同じで、耳障りさえ良ければ表現上は何でもあり、ではある。


 本来、姫君である王女殿下は双子、つまり二人姉妹のはずだ。それがどうしたことか、諸国巡行の旅から戻ってみれば、何と七人に増えているではないか。


 瓜二つ…いや瓜七つの王女たちは、ただ一人の護衛も伴わず、見事な横一線の隊列を維持したまま、王宮に通じる大通りを突き進んでいる。


 早朝ということもあってか、また突然の闇の軍勢の襲来のせいか、静まり返った大通りにはいつもの露天市場の賑わいは微塵も感じられず、人っ子一人姿を現す者はいない。


 そんな誰もいない石畳の大通りを、等間隔の綺麗な一列横隊で足並みを揃える王女たちが、しっかりと前だけを見据えて進軍していく。


 まるで、昭和の懐かしい刑事ドラマや時代劇でお約束の、クライマックス直前の進撃シーンのようである。


 「何だか昭和のテレビドラマみたいだのう…。懐かしのナレーションが天から降ってきそうじゃな…」


 「テレビドラマ? いったい何なのですか、それは…」


 元老魔導士の声音のままで口にした佐伯先生の言葉を、敢えてキャラクター発言として受け取った元女騎士が、とぼけた口調で引き継いでいく。


 「あ、ああ、異国の秘術でのう…。様々な演劇や芝居を何処でも楽しめる装置があるのじゃ…」


 あたかも誰かに聞いた異国の話であるかの如く、もっともらしく解説する佐伯先生の言葉が、卓の皆を和ませ笑いを誘う。


 「へぇ、流石は爺さん、年の功ってやつか…。良く知ってんなぁ、そんな話…」


 「はて? 我らは七つ子故、お前さんと儂は同い年のはずだがのう…」


 元盗賊の驚嘆の言葉さえあっさりと交わして、元老魔導士は豪快に笑い声をあげる。何処からどう見ても、年頃乙女の高貴な姫様が漏らしていい笑いではない。


 「で、ですね、皆さんは颯爽と王宮の正門前まで辿りつくんですけど、滅茶苦茶静かすぎて異様な雰囲気です。闇の魔物に怯えて出てこないって感じじゃなくて、うーん、そう、まるで街じゅうがまるごとゴーストタウンになっちゃった、みたいな感じ…っていうのかな…」


 ゲームマスターの詩音が、ひと通りの状況説明を始める。そう、当初の詩音の目論見では、そういうシリアスなシナリオ展開となるはずだったのだ。


 「で、姉姫様が真っ先に口を開きます。『闇皇帝よ! 我ら姉妹は今ここに帰還を果たしました。貴殿の望み通り、我ら姉妹の身柄と引き換えに、王宮の者たちと罪なき民草の即時解放を要求します!』って、ちょっと不安そうな声音で必死に訴えますが、反応はありません」


 「おいおい、既に皆…ってことはねぇよな?」


 元盗賊である王女の一人が、疑心暗鬼になりながら最悪のケースを予想して口を開く。


 「確かに、誰も出てこない、ってのは妙ですね。街の住人はもちろん、魔物の一匹すら現れないとは…」


 「敵も味方も王宮に引き籠ってる、というのもあり得ない話よね。試しにちょっと威力偵察をしようにも…」


 元賢者と元女騎士が、元盗賊の言葉を引き継いで交互に反応する。


 「期待しても無駄じゃ、魔術詠唱を始めた途端に、即刻、こちらの正体が露見するでのう…」


 元老魔導士、つまりこの馬鹿馬鹿しくも面倒くさい状況を創りあげた張本人が、そう言いながら元女騎士のほうを見つめ返す。


 もし他の誰かがその場の様子を窺うことができれば、都合七人の同じ容姿の王女たちが、円陣を組むかの如く寄り添って、難しい顔を突き合わせている光景を目にすることになるだろう。


 童話には七人の小人が出てくることもあるが、七人の王女というのは聞いたことのない話である。


 「あの…、やはりこの作戦は無理があるのでは? 私たち姉妹のことは気になさらずに、皆様はいつも通りのご活躍を…」


 「ええ、私たちは常日頃より王族としての矜持は理解しています。いざとなればこの身と刺し違えてでも…」


 詩音が一人二役の王女姉妹を演じながら、プレイヤー全員の様子を順に窺う。


 「とりあえず、道端の小石を拾って王宮の正門?に向かって投げてみます。もちろんお淑やかに、優雅に…」


 越谷はそう言ってサイコロ判定を試みる。


 「石、投げました…けど、あ、失敗か、これ…。きっと違う方向に…」


 元従者の王女が投げた小石は、まったく異なる明後日の場所へ飛んでいってしまったようだ。


 「えー、コッシー姫の投げた小石は、狙ってたより遠くに飛んでっちゃって、王宮の石壁に当たる…かと思ったんですが、そのまま突き抜けていっちゃいます」


 詩音が事も無げに結果を説明する。


 「つまり、ホログラム的な? 俺たち幻覚を見てるってことかよ?」


 「あー、王宮と民衆を人質に、ってそういう事?」


 元盗賊と元女騎士が瞬時に状況を理解する。どうやらこの王都の街ごと、幻術の世界と入れ替えられてしまっているらしい、というのが二人の推測だ。


挿絵(By みてみん)


 「早い話、既に我々は敵の術中にあるということですかね…、これは少々迂闊でした…」


 元賢者が悔し気に呻く。


 八方塞がりとなった現状を如何にして打破するのか。プレイヤーたちが途方に暮れる中、そんな鬱々とした展開を打ち破る一声が、あまりにも唐突に元老魔導士から発せられた。


 「さて、時間もないようだし、話を進めるとするか…。『闇皇帝! いや、我が愚息よ! つまらぬ戯れはやめにして、姿を現してはどうじゃ? まさか事この期に及んで、今さら怖気づいたわけでもあるまいて…』」


 「は? 爺さん気でも狂…」


 「闇の皇帝が愚息…って、息子ぉ? てことは、あんたがパパぁ?」


 「ま、まぁ、私は知っていましたけどね…。もちろん嘘ですけど…」


 元盗賊、元女騎士、元賢者の三人が、それぞれ一気にぶっ飛んだ裏設定を突きつけられて、三者三様に驚き満載の発言を口にする。


 「あ、あなたはご子息の暴虐、反乱行為を承知の上で、敢えて見過ごしたというのですか? 二人の王女殿下にも危険が及ぶとわかっていながら…」


 越谷演じる元従者が、元老魔導士に食ってかかる。この辺りは、多少の私情というか、熱意が逆流している気もするが。


 二人とも、外見上は生き写しのようにそっくりな王女の姿なのだから、絵面にするとなかなかにシュールな光景だろうと、詩音は空想を膨らませる。


 「じゃからこそ、こうして自ら老体に鞭打って、双子姫殿下の護衛を務めておるのじゃろうが…。それに、人の道云々を語るのであれば、まず責めるべきは、誓約を反故にした王家一党のほうじゃ…。約束さえ違えねば、こうはならずに済んだものを…」


 佐伯先生の迷演技が、ここぞとばかりに冴えわたる。


 RPGの演出の大部分を占めるのは、プレイヤー同士の掛け合いと台詞回しによるものだが、それ以外にも、表情や身振りなどの細かな所作や、意図的な沈黙の取り方など、多種多様な表現手法がある。


 ベテランプレイヤーに至っては、その場のアドリブだけで、十人からのNPCを瞬時に演じ分けることも不可能ではない。そして、その才能の片鱗は、駆け出しゲームマスターの詩音にも僅かに窺える。


 「ねぇ、ゲームマスターはこの設定って知ってたの?」


 元女騎士が詩音に尋ねる。


 「あ、うん…。さっき佐伯先生からメモを貰ったんで…。っていうか、こっちもびっくりですよ、何じゃそりゃあ!って感じです」


 RPGのシナリオが進行していくうちに、或いは各々がキャラクターメイキングを進める最中にも、プレイヤー側から、または反対にゲームマスター側から、「他のプレイヤーには当分明かさないが、実はこういう裏設定がある」という内容を要望される場合がある。


 いきなり肩を叩かれての内緒話であったり、怪文書めいたメモを通じてだったり、時には何の前触れもなしにいきなり始まる無茶振りまで、その手法は様々と言える。


 当然、先方から却下されることもあるだろうが、悪ノリ好きのベテラン衆はどうにかして強引に辻褄を合わせてでも、その魅惑的な提案に乗っかってくれることが多い。


 佐伯先生から突然渡されたメモに目を通し、その場では暫し仰天したものの、斜め上に想像力豊かな詩音は、その本領を発揮してこの設定を活かすことにした。


 当然ながら、憧れの想い人からこっそりと内緒話を持ちかけられたのだから、恋する乙女の詩音には断りの選択肢はない。


 「はっはっは! 父上、いや、偉大なる元宮廷魔術師長殿…。かなり老け込んだようだが、相変わらず壮健で何より…。さて、双子の王女殿下と出来損ないの贋作たちは、今回の我が趣向、少しは気に入って貰えたかな?」


 佐伯先生提案の裏設定を加味し僅かに修正した展開に沿って、詩音はそう煽りの言葉を述べていく。


 ここぞとばかりに悪役面のドヤ顔を決めて、詩音が尊大な態度でプレイヤーたちを高圧的に見下ろしていく。


 テーブルに着いた詩音の実際の身長、つまり座高は、当然ながら他のメンバーより低いはずだが、ここは見せ場でもあるので手を抜くことなく、普段であれば絶対に見せることのない、いわゆる「悪い顔」を必死に繕って、過剰な高笑いを披露せねばならない。


 「あー、何だか、そういう悪女みたいな顔の西原さんも、新鮮で良いなぁ…、うん…」


 越谷のプレイヤー発言というか、率直な個人的感想というか、恋する者の心の声のようなものが駄々洩れ状態で、せっかく詩音が頑張っている闇皇帝の悪者顔の目元が、ひくひくと引き攣ってしまう。


 「あぁ、俺も中坊に戻りてぇ…」


 「もし戻っても、マスターは口説いちゃダメですよ? リアルで呪われちゃいますからね…」


 「外見だけ戻っても、性格がオッサンじゃあねぇ…」


 元盗賊、元賢者、元女騎士がそれぞれ勝手な感想を言い始める。こうなるとますます収拾がつかなくなるわけで、ゲームの内外で詩音は困惑を極めていった。


 「闇の皇帝とやら、何故にこのような要らぬ騒乱を、王家への反逆の茶番を起こすのだ? 答えろ、話は聞くだけ聞いてやる!」


 女騎士が怒りに満ちた表情で詰め寄るが、闇皇帝は冷たい言葉を返すだけだ。


 「ほう、まさか父上から何も聞かされていないとは…。用心深いにも程があろうに…。いや、既に他人を信じることを放棄したか…」


 「『どうとでも言え!』…っていうか、こっちは背景情報なんて知らされてないんだしな…」


 こういう即興の駆け引きはまさに阿吽の呼吸というものだ。とりわけ佐伯先生が相手なら、幾度もRPG同好会で詩音は経験済みである。


 「妹姫様が静かに言います。『理由を伺えませんか、闇皇帝…。もし私たちも納得できる話なら、互いに歩み寄る余地もありましょう…』」


 詩音の口調はそこで可憐な姫君から一転し、押し殺したような低い声になって話を続けていく。


 「良いだろう…。哀れなる王家の愚行、しかと胸に刻むがいい!」


挿絵(By みてみん)



◇106 正義という名の悪行 に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください

あとがき


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 行き当たりばったりで始めたこの「よよぼう」の週刊連載も、ようやく最終章(予定)の第八章となりました。


 定期的に読んでいただいている皆様、ありがとうございます。


 TRPGという趣味は些かマニアックでニッチな趣味なので、取っ掛かりが難しいと敬遠している方も多いと思いますが、実は予想以上に簡単で、寧ろ問題は「己の羞恥心との闘い」だったりします。


 役者や声優を目指している人ならともかく、一般の…いえ、多少その手のオタク初心者からすれば、カッコいいけど小恥ずかしい台詞を「さぁ言ってみろ」とばかりに促されても、躊躇してしまうのは良くわかります。


 ですが、一度そこを乗り越えれてしまえば、後は爽快感溢れる夢の世界が待っているという寸法です。


 皆様も是非、一度は挑戦してみてください。


 いつも校正チェックでお世話になっている鳥ことトットさん、アイディアを頂くことも多い蛹ことハセベさん、諸々感謝しています。ありがとうございます。


 それでは、最後のエピソードまでもう暫く、詩音の迷走物語にお付き合いをお願いします。


 ご意見ご感想、AIイラスト他、お寄せくださると嬉しいです。



■「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にてAIイラストを公開中。「よよぼう」関連以外も沢山あります。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)を運営…というより絶賛放置中です。


■TINAMI(http://www.tinami.com/)にも、いずれ掲載予定…と言いつつも…。


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)。


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