第97話 追求
ディアナは侯爵とルイスを連れ、王城へ向かった。宰相に謁見の申し入れをすると、丁度ミハイル・グラディウス辺境伯が謁見中であるとの事だったので、「それに関連がある事で」と説明し介入させてもらった。
宰相に、「増援依頼書」がどこかで差し止められた事がバーゼルを職場崩壊させ、それが国境警備にまで影響を及ぼし、盗賊団を招き入れる事に繋がった事を説明した。
「死者も行方不明者も出ています。どうか、真相の追求をお願いしたい」
「解りました。あと30分程お待ちいただけますか?」
宰相の執務室の応接間、紅茶を飲みながら待った。
「で、盗賊団はどの位の規模だった?」
「30人。ディアナの助けもあって10分でカタがついたよ」
「捕まえたか?」
「5人をディアナの亜空間収納に放り込んである」
ミハイルとルイスの会話が続いていた。
「ディアナ、大丈夫か?」
侯爵がディアナを心配そうに覗き込む。
「多分…」
一行は、大広間に案内された。そこには、国王陛下並びに王妃と第二王子、多数の政務官と在城の諸侯が並んでいた。
「バーゼルの検問所並びにその付近に出現した盗賊団についての審議を開始する」
宰相の開始の挨拶に始まり、地域の現状をミハイルが説明した。そして、国境の砦の警備兵が殺害されていた事で、盗賊団がローザリアから入り込んだものと仮定して森を捜索した所、盗賊団を発見し討伐した事を打ち明けた。ディアナは亜空間収納から残る5人の盗賊を引きずり出した。
「捕縛出来たのはこの5名のみ、残る25名については既に土に還しました」
盗賊団の頭に向けた公開尋問が行われた。
盗賊団は、これまで冒険者を騙って検問所を突破し、度々グラディウス領に入っていたらしい。だが、新しい鑑定具による人物鑑定をすり抜けることができずに、10人が警備兵によって捕縛されたと言う。しかたなく、国境線近くのローザリア側の山に潜んでいたが、監視していたルーキウス王国側の国境警備兵の様子がおかしい事に気がついた。どうやら、人員交代がなされていないらしいと。そこで、ヨレヨレになりながらも国境を護ろうとする警備兵二人を殺害し、スルーエ近くの森にアジトを構えたのだと白状した。
「この盗賊団による被害は、2週間前のグラディウス商会の荷馬車強奪事件。死亡者が3名出ています。そして1週間前に、スルーエを出発した乗り合い馬車が襲撃され、3名の女性と男性1名が連れ去られております」
連れ去られた人達の内、女性は弄ばれたのちにローザリアの売春宿に売られ、男性は奴隷市に出品され買われて行った事が盗賊の口から明かされた。
「盗賊達を処刑場送りにせよ」
兵士が盗賊を引きずりながら、連れていった。
「ディアナよ、また助けられたな…」
国王はディアナに褒賞を取らせようとした。
「陛下、まだ終わっておりません!」
「!?」
「今朝、バーゼルを出発し『増援依頼書』が出された道を、その時と同じ様にルイスと二人で辿ってきました。グラディウス商会の道は使いましたが、転移魔法は使ってません」
「ん…?」
「半日とかからずにここ迄辿り着いたのに、なぜ未だにバーゼルには増援が到着していないのでしょう?バーゼルが出した「増援依頼書」はどこに行ったのでしょうか?」
「あ…」
「宰相様が不在だった為に、『ゲイル騎士団長にお渡しした』と父は言っています。ゲイル騎士団長は、その依頼書をどうなさったのですか?」
皆の視線が、ハインリヒ・ゲイル騎士団長に集まった。
ディアナに詰め寄られたゲイル騎士団長は少したじろいだ。
「私は知らない。侯爵の勘違いではないか?」




