第95話 分断の森2
クリエの街から乗り合い馬車を乗り継いで3日、検問所があるバーゼルに着いた。
この日はバーゼルに一泊することになった。夕暮れ時までの時間、街を歩きがてら騎士団詰め所に行く事にした。
街にイオニアやクリエの様な華やかさはないが、冒険者や商人などの往来が多数を締め、宿屋や武器屋といった冒険者向けの店と特産品などを扱う土産屋が多く見られ、グラディウス商会のセレクトショップも繁盛していた。露店で串焼きを買って店主にさり気なく聞いてみた。
「この辺りは、治安いいの?」
「いいよ~。でも、最近盗賊団が出たって噂も聞いたな」
「盗賊団?」
「商会の馬車が襲われたって聞いたぜ。グラディウス領内でそんな事が起きるかよ?って思うけど、こう人の出入りが激しけりゃ変な奴らも混じってるんだろうな」
検問所付近も覗いてみた。新しい鑑定具は上手く作動しているように見えた。
「グラディウス家の!やっと来てくださったのですね!」
「!?」
騎士団詰め所で、この地区の副団長だと云うエドベリが、喜びの歓声をあげた。
「やっとって、どういう事ですか?」
「私達は、盗賊団が出たと聞いて来たんですが…」
「え…?ふた月前に役所を通じて、警備の応援要請を出していたのですが、その件では無いのですか?」
エドベリの話はこうである。
ルーキウス王国内に新たなダンジョンが4つ見つかった事で、冒険者が検問所に殺到している状態が続いている。あまりの多さに、検問所の職員だけでは足りず、騎士団や警備兵も駆り出されている状態で、休みもとれていないし警備も疎かになる恐れがあるので、役所を通して増援要請を出しているのだが、一向に増援が到着しないという事だった。
「ふた月もか!?」
「えぇ、そうなんです。皆、疲弊していて倒れるものまで出始めまして」
「ルイス、ミハイル兄さんの所とグラディウス商会に応援をお願いして来る」
ディアナは転移魔法で、グラディウス商会本部に行き鑑定具の使い方を熟知している者を10人借り、クリエで警備の経験のある訓練兵を40人借りた。亜空間に50人入れてバーゼルに戻り、引き渡したあとはエドベリに人員配置を任せた。
「隣国ローザリアとの国境線の砦5戸に二人ずつ計10人を連れて行って欲しい」
エドベリから依頼され、またディアナの亜空間に入れて距離指定転移で移動しながら人員を交代させたが、5戸ある砦の内の1戸から二人の警備兵の遺体が喉を切り裂かれた状態で見つかった。
「盗賊団の侵入経路はここか?」
「多分…」
ディアナは、遺体を亜空間に収容した。
「ねぇ、ルイス…」
「ん?」
「結界付きの砦を検問所まで建設してもいいかな?」
「そんなこと出来るのか?」
「資材はあるから、数時間でできるよ」
「わかった。頼む」
距離指定転移で国境線の南端まで行き、結界の魔石を練り込んだ支柱を使い、錬金術で一気に宿泊施設つきの砦を作った。
それは、アーダルベルトがストラトス地域に作ったものと全く同じものだ。
バーゼル方面に歩きながら塀を作った。砦の警備兵には新しく作った砦の中に移動してもらった。ディアナのインベントリから食料品なども出して手渡した。
バーゼルの検問所まで砦を作り終えると、エドベリがすっ飛んで来た。
「ありがとうございます!これで、これで、やっと…」
エドベリはその場に倒れた。
翌朝、目を覚ましたエドベリに国境警備兵二人の遺体を引き渡し、一行は盗賊団が潜んでいるだろう森に向かった。




