第91話 日常
クリエ支部から魔石の注文が入った。
「炎の魔石が1000個ね」
手持ち分で500個を出し、追加分をその場で500個作って渡し、金貨4万枚は銀行口座に入金してもらった。
「今回、随分と数があったけど?」
「あぁ、今は侯爵様もディアナ様も派手に動き回らない方がいいでしょ?だから、クリエでまとめる事にしたんですよ」
支部長のコーエンが答えた。
「気を遣ってくれたのね。ありがとう」
そして、空の魔石を1000個受け取った。この空の魔石には、無属性が200、印刷付与200、鑑定付与200の魔石を作って欲しいとの事で、残りは予備として持って置くことにした。
「鑑定の魔道具、かなり好調みたいだね」
「今は、国外からも注文が来てますからね」
会話をしながら魔石を作り、作った魔石を鑑定の魔道具に乗せて…と云う事を丸一日かけて終わらせた。また莫大な金額の振込額になりそうだ。
翌日、エルから「ステンレスボトルの試作品が出来た」とクリエ支部を通じて連絡が入ったので、早速宮島鉄工所に赴いた。何の色もついていない白銀のものだったが、とりあえず10本を自分を含めて10人で試しに使ってみることにした。
その結果、冷たい飲み物で6時間、氷を使ったもので9時間の保冷効果、温かい飲み物やスープで8時間の保温効果があった。
「保冷・保温共に効果が有り、使い勝手が良かった」
「皮の水筒の様な匂い移りがなくていい」
工場長が目を輝かせた。女性陣からは「スープ用に背が低い口の広いものがあったら便利」などの意見も出され、そちらも作ってみることにした。そして、出来上がったものを再度試した結果、良いデータが取れた。
試作品に取れたデータと図面を付け、本部に送って商品化にこぎつけるまで一ヶ月かかった。
商品化が決まったら、あとはグラディウス商会の出番だ。特許申請は、宮島鉄工所の工場長とエルの名前で出し、受理された。
露店でオーク肉のサンドイッチとコーヒーを購入した。コーヒーはステンレスボトルに注いでもらった。広場のベンチに座り、サンドイッチを頬張る。そして、コーヒーで流し込む。
「旨い!!」
天気もいいし、心地良い風も吹いている。
どうして、こんな日常が送れる人間に生まれなかったんだろう。
ディアナの目に、自然と涙が溢れてきた。
「だめだ…こんな日は、黒い森で狩りだ!!」
勢いよく頭を上げると、ゴツン!と頭が何かにぶつかった。
「痛っ!!」
ドサッ!と音がした。
目の前に、侯爵が顔を押さえながら座り込んだ。
「お父様!?」
「今のは効いた…」
どうやら、ディアナに気づいて近づいた所に頭突きをくらわせてしまったらしい。侯爵は鼻血を出していたが、2〜3分程で出血は止まった。
「出歩いて大丈夫なのですか?」
「領地内だ、大丈夫だろう。ベアトリーチェ様に首を締められるよりはマシさ」
「あはは」
「『しばらく一人にさせてやって欲しい。あなたはあなたがすべき事を…』と言ったら、来なくなったよ」
「そうですか」
そして、ゼノンがプロイスのグラディウス邸を出て、現在はストラトスに拠点を置き、冒険者をしながら復興活動を行っていると聞いた。
「ベアトリーチェ様がトルクに1つ、ビーツに2つダンジョンを見つけた。ダンジョンが公開されれば冒険者が集まる。冒険者が集まれば街は潤うから、復興の手助けとなってくれるだろう」
と侯爵は語った。そして、まもなくトルクとビーツのグラディウス商会の支部が出来上がるので、道を繋げて欲しいとの要請があった。
「その時に、また会いに来るよ」




