第89話 ゼノン6
「なんだって!?それは本当なのか?」
ゼノンは激しく動揺した。
「本当だよ。ウチの母が王妃様から直接言われて憤慨していた」
「これ以上、ここに居てはいけない」そう思ったジンがゼノンから大金の入った袋を受け取り、「引っ越し作業を進めておきます」と他のメンバーを連れて出て行った。
「なぜ、そんな事に…」
「アイマン皇太子の事件がきっかけだったらしい」
「え?なぜ、メディナ国の皇太子が関係あるんだ?」
どうやら、ゼノンはあのハーレム事件の事を知らなかったようだ。アイマン皇太子がことのほかディアナを気に入ってしまい、自分のハーレムに加えようと一服盛ったのだと説明した。それから逃れる為に、裸同然の姿でストラトス城に転移したが、媚薬のせいであられもない痴態を晒すディアナを介抱し続けたのが、ルーキウス国王だったと。
「父上、自らですか…」
「居合わせたウチの父の話だと、ディアナをずっと抱きしめて離さなかったそうだ」
その後、王妃から「泣きながらディアナの名前を呼び続けていた」と聞かされたとレオナルドは答えた。
「殿下…なぜ、しっかりと繋ぎ止めてはくれなかったのですか?」
「それは…」
「ディアナを愛していないからですか?」
「レオナルド!!」
「親子でディアナを弄ぶのは、もうやめてくれませんか?」
ゼノンとベアトリーチェには、もう返す言葉が無かった。
「すまなかった」とひとこと言うのが精一杯で、グラディウス商会を出た。
「お兄様、大丈夫ですか?」
「大丈夫…では、ないな…はは…」
グラディウス邸で部屋を片付け、その日は宿に泊まる事になった。
「ベアトリーチェ、今回は色々とすまなかったな…」
「お兄様には申し訳ありませんが、私はディアナの味方をさせていただきますわ。あの娘は、私にとって特別なのです」
「わかっている。引っ越し先が決まったら連絡する」
ベアトリーチェは、ルーキウス王国に向けて出発した。
ゼノンは宿の部屋にメンバーを集めた。
「皆、巻き込んですまなかった」
「や、全然!俺らのやる事は、変わんないし!」
「そうそう」
いつものロイズらしい言い方だった。だが、それに救われた気がした。
「そうだな。今迄通り冒険者として活動しながら、世界を見て行こう」
そこにジンが新しい提案をした。
「復興が始まったトルクかビーツに居を移しませんか?」
「ん?」
「復興の人材も必要でしょうし、都市計画や治世を学べると思うのです」
「悪くない話だな」
「とりあえずストラトス領に身を寄せ、そこを拠点として活動されるのがいいかと」
「そうだな。皆はどう思う?」
「賛成!」
顔を合わせづらいが、レオナルドには言って出るべきだろうと、グラディウス商会を訪ねたがどうやら留守のようだった。仕方なく手紙を書き残した。
リベラ共和国を出発し約10日、ビーツ、トルクの復興状況を見ながら移動し、ストラトス領に辿り着いた。
祖父で領主であるアウグストに頼る気はさらさら無かった。ストラトスのグラディウス商会を訪れ「男5人で住める家を借りたい」と言うと、今オススメの物件を紹介された。
「ルーキウス王国に併合されたおかげで、かなりお安く提供できる様になったんですよ」
と、個室5部屋に風呂トイレ食堂にリビングまでついてひと月金貨3枚と云う破格値の賃貸物件だった。しかも、風呂や食堂は魔石を使うタイプなので、自分たちの魔力で賄えるゼノン達には格好の物件だった。
「ここに決めます」




