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第73話 王にも成れただろうに

 「お前たちは、この男を許すと言うのか!?」


 ルーキウス国王、ストラトス国王、グラディウス侯爵からの怒号が飛んだ。

 そこには他に、宰相クレイトスにディアナとベアトリーチェ、そして手枷足枷をつけられ軍務卿に脇を固められたアイマンがいた。


 「私達も無事だった事ですし、他国の習慣を甘く見ていた事もあります。冒険者となったのですから、危険が伴うのは承知の上。いい勉強になりました」


 ディアナに何か考えがあるのだなと察したベアトリーチェは、ある提案をした。


 「示談で手を打ちませんか?」

 「あのような目に合わされたのにか?」

 「えぇ、アイマン皇太子は現メディナ国王の一人息子。廃嫡は出来ませんし、元々あまり付き合いの無い国でしたから、国交を断絶したとしても意味がありませんわよね?ならば、賠償金もしくは示談金をガッポリ頂いた方が、マシだと思いません?」


 ベアトリーチェの言い方に、国王達は少し呆れたような表情を見せ、ん〜と考え込んだ。


 「ディアナは、どうなんだ?」

 「ベアトリーチェの意見に賛成です。敢えて、付け加えるなら…私はアイマン皇太子の手を借りて、ビーツ国を取ろうと考えてます」 

 「ディアナ!?」

 「その示談金をビーツの復興に使いたい」

 「待て、ディアナ!どうして、そんな発想になる!?」

 「皇太子からビーツ国の現状を聞いたからですかね…」


 「ちょっとごめん」そう言ってディアナはアイマンの頭に手を伸ばし、映像スキルでアイマンがその目で見たビーツの様子を映し出した。

 荒れ果てた国土、家とは名ばかりの掘っ立て小屋、その辺りの草や土を口に入れる人々の姿は目を覆いたくなる程悲惨なものだった。そして、無惨に殺される国民のそばで、富を貪る国王ロドリーゴ・イルマの姿には吐き気さえもよおした。


 「こんなのは、国ですら無い…」


 アイマンがぼそぼそと語り出した。


 「国民あっての国であり、国があっての国民だ。そして、その国の象徴が国王だと俺は思っている。ビーツの様な国は潰した方が、国民のためなのだ。だから、ルーキウスがビーツに進軍しないと聞いた時に『何故なんだ?』と憤りを感じた。だって、そうだろう?今のビーツはルーキウスが生み出したも同然じゃないか?」

 「貴様、言うに事欠いて!」

 

 軍務卿がアイマンを締め上げようとするのを国王が止めた。


 「イルマ家の前身は、イオニアに拠点を持つ領地貴族でした。グラディウス家初代侯爵シリウス・グラディウスのやり遺した事として、私はイルマ家を完全に潰したい」

 「ディアナ!!」

 「アイマン、ベアトリーチェ…手伝ってくれる?」

 

 振り返ったディアナは、少し苦笑いしていた。


 「「もちろんだ(よ)!!」」


 ルーキウス国王はため息をひとつついた。


 「軍務卿よ、皇太子の拘束を解いてやれ」

 「陛下!」

 「皇太子の民を想う気持ちに嘘は無いと感じた。此度の事も『魔が差した』と云う事で決着をつけよう。そして、イルマ家の事は、ディアナ…お前だけに責を負わせる気はない。だがあくまでも『国民の保護』を目的とした救出作戦のための進軍である事をここに宣告する!」

 「ありがとうございます!」


 ディアナとベアトリーチェ、アイマンが手を取り合い喜ぶ姿を見ていたストラトス国王は、侯爵の肩を叩き言う。


 「とんでもない娘を持ったな」

 「えぇ、本当に…気が気でない事ばかりですよ」

 「残念だな。あれが男なら王にも成れただろうに」

 「…え?」

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