第72話 コレ、なんの女子会?
「ディアナ!」
ベアトリーチェが呼ぶ声がする。
「う〜ん…後、10分…」
「何言ってんのよ!」
ペチン!と頭を叩かれて目が覚めた。視界に入る範囲には、ベアトリーチェと母親のミーシャ。
「昨日は大変だったわね」
ミーシャに抱き締められた。
ディアナの体が、ビクン!と跳ねる。
「ごめん、まだ頭がぼんやりしてて…」
「ストラトスの国王様がお風呂を用意してくださってるの、入ってスッキリしてらっしゃいな」
ミーシャに促されベッドから起き上がると、肩からするりとマントが落ちた。
「あ…」
「これは、綺麗に洗って陛下にお返ししなくてはね?」
ミーシャが持って行ってしまった。
裸の上に簡単なワンピースを着て、着替えを持って風呂場に行く。まだ媚薬が残っているのか、服の脱着の時でさえ体は敏感に反応する。
「あ〜やられちゃったわね〜」
「でも、貞操は守った」
「鉄の處女だからね」
「あはは!」
湯船に浸かりながら、体に触れると「う…ん…」と声が漏れる。
「イキたいのにイケない感じ?あれって発狂モノなんだね」
「そうそう」
「ベアは経験済み?」
「いや、前世のバイトで致す方」
「どんだけ鬼畜なのよ?」
「いやいや、私はその世界じゃ『聖母様』と呼ばれて慕われてましたのよ?」
「とんだ『聖母様』だわ」
会話が脱衣所まで聞こえていたのだろう、大公妃ソフィアとディアナの母親のミーシャが顔を覗かせ「はしたない会話をするんじゃありません!」と窘めた。
「お母様も入りませんか?気持ちいいですよ?」
「人様の家のお風呂で…」
「あら、いいじゃないですか」
二人の母親の間からミレーネ王妃が顔を出した。
「王妃様!」
「女だけの裸のお付き合い、たまにはね?」
ミレーネ王妃に押し切られ、5人並んで湯船に浸かる。
「コレ、なんの女子会?」
ベアトリーチェの問いかけに、ディアナは苦笑いした。
女性が5人も集まると、その会話の内容はやはり美容に関するものに集中する。
「若い娘の肌って、水を弾くのねぇ」
「私達は、ぐんぐん吸収しちゃってますわね」
「あら、でもソフィア様はお腹周りもスッキリで…」
なんて会話が続いていた。
「私達も似た様なものですわ」
「うん。私が前世で死んだ時は34歳だったから、通算50歳」
「私は、通算44歳ですわ」
「え?私達と同じか年上ってこと?」
「そうそう」
「あら、なんだか娘と云う気がしなくなってきましたわ」
ミーシャとソフィアが二人をジッと見る。そして、ため息をついた。
「中身は私達以上なのに体が16歳だなんて、羨ましいにも程がありますわ!」
やいのやいのと言っている内にミレーネ王妃が「今回は大変だったわね」と労るような優しい声で言う。
「そうですね。でも、悪い事ばかりではありませんでした」
「他国の状況も少しは把握できましたし、何より新しいスキルを授かりましたから」
「新しいスキル?」
「えぇ、『耐性』スキルで毒と媚薬の耐性が」
「2度目はありませんわ」
ね?とベアトリーチェとディアナは頷き合った。
「本当にあなた達は規格外なのね」
「お褒めの言葉、感謝します」
「褒めてないからね?」
5人の笑い声が浴場いっぱいに響いた。
王妃がさり気なく、ディアナに問う。
「ねぇ、ディアナ。ゼノンとの仲は進展してるの?」
「どうでしょう?連絡も頂いてはおりませんし…」
「そう…あの子ったら、婚約者を放って悪い子だわ」
違う。聞きたい事はそう云う事じゃないんだ…とミレーネは心の中で呟いた。
一方、ディアナとベアトリーチェはその真意に気付いてしまっていた。




