第71話 接吻
「な、なんだ!?」
ストラトス国王が驚くのも無理はない。突然目の前に、素っ裸の男とあられもない格好の孫娘達が現れたのだから。
「そいつ、つ、かまえて…はぁはぁ…」
運良くと言うか運悪くと言うか、ストラトス国王の執務室にルーキウスの軍務卿がおり、すぐさまアイマンは身柄を拘束された。
「いったい、どうしたのだ?」
「び、やく…盛られた…あぁっ!」
ディアナは浄化魔法を使おうとするが、発動しかけて潰れるを繰り返す。
「魔法が使えなくなってるんだな?」
質問に、頷くのが精一杯だった。
「義父上、ベアトリーチェを頼みます!」
「わかった!」
優しく安心する香りのマントに包まれた。
ディアナは、この香りが好きだった。
「お、お願い…見ないで…」
二人はそれぞれ、ベッドのある客室に運び込まれた。ベッドの上に横たえられたディアナは、下着を剥ぎ取ろうともがいた。
「これにも、薬が塗られてるのか?」
悶えながら頷くと、「すまん!」と一言断わりをいれて下着を剥ぎ取る。ほんの少しの刺激でも、叫び声を上げそうになるのを堪え身悶えるディアナ。
「すぐ中和剤が届くから」
アンドレアはディアナを抱きしめ、「大丈夫、頑張れ」と声をかけ続けた。しばらくして中和剤が届けられた。
「ディアナ薬だ。飲めるか?」
「やぁ…は…」
瓶に口をつける事もままならない様子に、アンドレアは自分の口に薬を含み、口移しでディアナに薬を飲ませた。
丁度そこに、グラディウス侯爵と宰相クレイトスが現れた。
「クリムトの接吻…」
宰相の脳裏に1枚の絵画が浮かんだ。
「侯爵、代わってくれ。ベアトリーチェの様子を見に行きたい」
国王は2本目の中和剤の瓶を侯爵に手渡し、部屋を出るとすぐにベアトリーチェの所に向かった。こちらの方が症状が軽いようで、中和剤を飲んだあとすぐに眠ったようだ。ベアトリーチェが快方に向かっているのを確認して、ルーキウス王国の王城の自室に戻った。そこに王妃ミレーネがやって来た。
「休みたい。一人にしてくれないか?」
「これ、どうするの?」
ミレーネの指先が国王の股間に触れる。
「ディアナの痴態にあてられた?」
「やめてくれ…」
「私を使えばいいじゃない」
ミレーネは服を脱いで国王をベッドに押し倒した。
2時間程して、やっとディアナが落ち着き始めた。そして、まるで憑き物が落ちたように眠ってしまった。侯爵が宰相に聞くと、どうやらベアトリーチェも同じように眠っているらしい。
「いったい何があったのですか?どうして、こんな事になってるんですか?」
「申し上げ難いのですが、アイマン皇太子がお二人を自分のハーレムに加えようとしたようで…」
「は?」
「詳しい事は只今尋問中で…」
「いるんですか?ここに?」
侯爵に詰め寄られて宰相が返事に困っている所に、ストラトス国王がやって来た。
「侯爵、落ち着け。とりあえず、今はディアナとベアトリーチェの容態が最優先だ。皇太子の事は、我々に任せろ」
侯爵は、壁に向かって拳を打ち付けた。
ミレーネは、泣き疲れて眠る子供の様な国王の顔を撫でる。
「最中にあれ程ディアナの名を呼ぶくらいなら、側妃として迎えればよろしいのに…本当に不器用な人…」




