第66話 調印式
「遅くなり、申し訳ございません」
場所を大広間に移し、ミレーネ王妃とグラディウス侯爵はじめ、王都に駐在する政府官僚や貴族当主もしくは代理人が招集された。
『調印式』を古い映像で見た事はあったが、実際に目にする事になるとは思っていなかった。
正直に言うと、なぜ自分がこの場にいるのか?と云う疑問が湧いてくる。年若い娘二人が場違いなのだ。
「ベア…席外しちゃダメかな?」
「ちょっと、怖いね…」
ここから逃げ出したとしても、多分呼び戻されるのだろう。おそらくこの後、派兵の為の通路を開く事になる。だが、ディアナとベアトリーチェは現在、アイマン皇太子が落札したグリーンアナコンダを搬送中で、もうこれ以上出発を先延ばしできそうもない。通路を開けるのは、明日の朝までの間に限られる。やはり、この場に留まるのが賢明なのだ。
「ストラトス王国並びにトルク王国のルーキウス王国併合が成った事を、ここに宣言する」
色んな事を頭の中で考えている内に、目の前では両国王の調印が成されたようで、皆総立ちで拍手している。つられて、ディアナとベアトリーチェも立ち上がった。
そこに、ストラトス国王が近づいてきた。
「ディアナ、今日そなたに会えて良かった。そなたがいなければ、成すことが叶わなかった事だ」
握手を求められ、それに応えた。
「ストラトス城の騎士団訓練場と、ルーキウス王国騎士団訓練場を繋いでくれるか?」
「わかりました。一度ストラトスの訓練場に行き、向こうから道を繋ぎます。案内をお願いします」
ストラトスの宰相に案内を頼み、まずストラトス城へ。
ディアナがストラトスに行っている間、両国王がグラディウス侯爵に向かって礼を言う。そして、ディアナへの賛辞も一緒に…。
「娘が規格外の能力を持っている事は理解してます。ですが、あまり巻き込んで欲しくない」
「だが、ディアナはゼノンと結婚するんじゃろ?」
「わかってます。わかってますが…」
「義父上、私が悪いのです。私がディアナの能力欲しさに、5歳の時から国政に関わらせていたのです」
「は?5歳からだと!?」
「私があの娘の自由を奪ってしまったのです」
「そうか、そんな事が…」
騎士団訓練場に異動した人達は、今か今かとその時を待っていた。
訓練場の壁の一部にキラキラした光が広がった。そして、人が3列位並ぶ通路が出来た。
「おぉー!」
歓声が上がる
「繋がりました」
「ディアナ、ありがとう。これでトルクを救える」
ストラトス国王がディアナの手を両手で包み、何度も何度も礼を言った。
「では、私達はアイマン皇太子の所に戻りますね」
「ディアナ、皇太子には…」
「言いませんよ。でも、仮にも皇太子。全く気付いていないという事もないかと。ただ、介入することは無いと思われますが…」
そう言って、ディアナはベアトリーチェと二人でストラトスに戻った。宿は多分、昨日と同じ所だろうと当たりをつけて訪ねると、皇太子付きの使用人が待ち受けた。
「お帰りなさいませ、皇太子様がお待ちです」
一緒に食事を摂り、その日は部屋に籠もって寝た。
翌朝、メディナに向けて出立した。
「私に、任せて!アイスニードル!」
馬車を襲って来たウォーウルフ30体を、氷の柱30本で串刺しだ。
「ベアトリーチェ、凄いなぁ」
途中、なんども魔獣に遭遇した。レベルを上げたいベアトリーチェが、主戦力として活躍した。だが、砂漠地帯に入ると様子が、変わった。魔獣の1体1体が大きく、まだレベルの低いベアトリーチェにはトドメを刺せる程ではなかった。
「よっしゃー行くで〜!!」
ディアナは、この1ヶ月の鬱憤を剣に込めた。




