第62話 初めての国外
金貨100万枚は既に小切手で支払われており、さぁ現物をマジックバッグに収めようと云う時になって問題が発生した。
荷馬車3台分位の容量が入ると云うマジックバッグに入りきれなかったのだ。
「丸ごと運び国王に献上したのち、国王の手ずから新鮮な肉を市民に振る舞おうと思っていたのですが…」
アイマンは、ディアナに残念そうな表情を見せた。
「ディアナ嬢の収納スキルでメディナまで運んでいただけませんか?勿論、報酬はお支払い致します」
それならば仕方ないとディアナは了承し、インベントリにグリーンアナコンダを収納した。アイマンが翌朝メディナに向けて出発したいと言うので、オークション落札関連の手数料支払いなどは、侯爵に任せることにした。
翌朝、グラディウス邸にアイマンの乗る馬車が到着した。と、同時にベアトリーチェがやって来た。
「陛下から命があったので、私も同行させていただきますわ」
「これは、第二王女のベアトリーチェ様ですね。よろしくお願いします」
侯爵に見送られ屋敷を出た。そして、貴族街を抜けて馬車専用道路を走り、王都外へ出た。
「馬車専用道路というのはいいですね。馬車に人が轢かれる心配が無い。我が国でも導入を考えねば…」
アイマンは皇太子らしく、自国と比較して取り入れるべき点や、旅の間にびっくりした他国の習慣などを話し始めた。それは、国外に出たことのないディアナやベアトリーチェの興味を惹いた。
「あ〜でちゃったね?」
「うん。初めてだ」
キョトンとした顔のアイマンに、実は国外どころか王都から出られなかったのだと説明した。
「え?でもグリーンアナコンダは黒い森の魔獣ですよね?」
黒い森は、ルーキウス王国と隣国サント・アンジェの境にある鬱蒼と広がる大きく長い森で、凶暴な魔獣が多数出現する事で、冒険者ギルド管理下のダンジョンと同じ扱いをされている。
「グリーンアナコンダの討伐報酬はどの位出たの?」
ベアトリーチェが気を利かせて話をそらせた。
「金貨1000枚」
「うひゃ、また稼いだね〜。んで、落札代金も入ってくるわけか」
「ベアトリーチェ様はダンジョン発見の報酬などなかったのですか?」
「貰えるみたいな話は聞きましたけど、具体的な話はまだですのよ?」
途中の街で食事を摂りまた走ること数時間、最初の宿泊地に到着した。
「あはは、まだ国内だよ」
「だね」
一週間程してやっと、ルーキウス王国から国外に出て、小国群の中を走ることになった。だが、裕福とは言い難い風景に、沈黙が続いた。
「この辺りの景色を見るのはお薦めできません。稀にですが、目を覆いたくなる様な場面にも出くわします」
アイマンは、カーテンを閉めた。
そして、ストラトス王国の首都マイヤーに到着した。宿にチェックインした後、アイマンが国王に挨拶に行くと言うので同行した。
「お祖父様、お久しぶりです。ベアトリーチェです」
「おぉ!ベアか!?立派なレディになったな?じゃあ、そちらがディアナじゃな?よく来た、ゆっくりして行け」
アイマンは、ベアトリーチェがルーキウス王国の第二王女だと知ってはいても、母親である王妃ミレーネがストラトス王国の王女だった事は知らなかったようだ。
「参ったなぁ…」
と、苦笑いしながらアイマンはストラトス国王への挨拶をした。




