第61話 オークション
「それでは、グリーンアナコンダの登場です!」
グラディウス商会の大広間、その上座近くにグリーンアナコンダを出した。
時間経過無しのインベントリで保管していたので、艶も鮮度も全く失われていない。
「おおー!」
と云う歓声が巻き起こり、まるで地震でも起きたかのように、足元が揺れた。
両ギルドによる検分がなされ、体長50メートルで鱗の剥がれもなく、剣を突き立てた頭部以外ほぼ無傷の状態であると証明された。
「では、皆様もお近くでご覧下さい」
その声を聞いて、ディアナはグリーンアナコンダに対物理攻撃・対魔法攻撃100%の結界魔法をかけた。
グリーンアナコンダの周りにわらわらと人が集まり、そのグラデーションに変化する色合いに感嘆の声があがる。
その時、入り口の方で別のざわついた声がした。
どうやら、国王が客人を連れて現れたようだ。
「飛び入り参加したいと云う御仁がいるのだが…」
と、白い綿生地のふんわりとした衣服を着た青年を紹介した。
「メディナ王国の皇太子アイマン殿だ」
頭に被るスカーフから覗いた顔は、目鼻立ちのはっきりとしたエキゾチックな顔立ちだった。
他国の王族の急な飛び入りに驚きつつも、オークションの主催者である商業ギルドは、飛び入り参加を了承した。
「グリーンアナコンダとは、この様に美しい物なのですね」
「ですな。私も初めて見た。それにしても、大きいな」
その時、グリーンアナコンダを近くで観察していた男の手が本体に触れようとして結界に弾かれ、2メートル程飛ばされた。
「あ?結界ですか?」
「あれは、ディアナの結界魔法だな」
「へぇ、凄いな…」
そして、入札がはじまった。
スタート金額は金貨1万枚。
だがあっと言う間に10万枚を超えた。
隣国のサント・アンジェと北方のヴェッテルン王国の一騎打ちで30万枚までジリジリと詰めていた。
そして、これがトドメだ!と言わんばかりに、サント・アンジェが「金貨50万枚」と提示した。
ヴェッテルン側は、数人で言葉を交わしながら断念した。
「他にありませんか?ありませんね?それでは…」
「金貨100万枚!」
声を上げたのは、メディナ王国の皇太子アイマンだった。
「もう、ありませんね?」
商業ギルドの職員がサント・アンジェに向かって言葉をかけるが、首を横にふるだけに終わった。
「では、グリーンアナコンダ、金貨100万枚で落札です!」
商業ギルドのギルマスに促され、ディアナはアイマン皇太子に挨拶と落札の礼を言いに近寄った。
「この度の落札、ありがとうございます」
「あなたが、ゼノン殿下の婚約者のディアナ嬢ですね。グリーンアナコンダを仕留めるとは、凄腕なのですね」
「いえ、まだ駆け出し冒険者ですよ」
ディアナは握手しようと手を出したが、アイマンはすっと手を取り手の甲に口づけた。
一瞬だが、ディアナの嫌そうな表情を見逃さなかった。
「失礼しました。つい、クセで…」
「では、あちらでお手続きを…」
アイマンは落札の手続きのために、ギルマスに連れていかれた。会場は既に封鎖され、関係者しか残っていなかった。
「金貨100万枚を即決とはな…」
「メディナ王国って、そんなに裕福なの?」
ディアナは侯爵に尋ねた。
「金の採掘国だからな。それに最近は、燃える黒い水というのが出たそうだ」
「あ…原油か…なら、納得だわ。これから、もっと大きくなるわよ」
「ディアナ、その話を詳しく聞かせろ」
国王と侯爵に挟まれた。
説明しようと口を開いた時に、ディアナはギルマスに呼ばれた。
「皇太子様が、ディアナ様にグリーンアナコンダをメディナまで運んで欲しいとおっしゃられているのですが…」




