第51話 ダンジョン
第21代目国王時代、国内の女性や女児が行方不明になる事件が相次いで起こった。当初は他国からの奴隷狩りを予想していた。捜索活動の中、ゴブリンの集落で性奴隷にされた女性数人を保護した。錯乱状態にある彼女たちを救護施設で預かったが、その内の数人がゴブリンを出産した。生まれたゴブリンは始末されたが、ゴブリンの生態を調査する必要性を感じ、王命で高位冒険者に調査依頼が出された。
調査の結果、ゴブリンとオークやオーガは性別がオスしかなく、繁殖の為に人間の女性を利用している事が判明した。
そして、21代目はゴブリン・オーク・オーガの殲滅作戦を官民に通達し、国庫の約半分を投じた。
21代目亡き後は22代目がこの意志を継ぎ、20年程かけてルーキウス王国の地上から全ての魔獣を駆逐した。
魔獣が居なくなったルーキウス王国は、冒険者にとってつまらない国になったが、住民や農民にとっては安全な国となった。
ところが、それから10年程経ったある日、王都近くの南の草原で一匹のゴブリンが発見された。
王都は、ルーキウス王国の中心にある内陸地で、周囲を8つの貴族が治める領地が取り囲んでいる。王国の北側は海で、他国と面する東西南は国境警備が厳しく、外から魔獣がやって来たとは考え難くかった。
そこで、騎士団が調査したところ、かつて殲滅した場所にダンジョンが発生した事が判明する。
ダンジョンが発生した理由は、おそらく殲滅後に死体を燃さず穴を掘って埋めたことにより、魔獣の体内にある魔石がなんらかの影響を受け、ダンジョンコアに変化したものと考えられている。
「ダンジョンコア?」
「ダンジョンというのは意思を持った生き物なのですよ。ダンジョンコアは、動力源である魔獣の魔石と同じ物です」
「つまり、ダンジョンと云う魔獣の中を探検していると…」
「そうです。敵もさるもので、宝箱の宝物やドロップアイテムで人間を釣ってるんです」
ダンジョンは魔獣を生み続け、スタンピードという形で魔獣を外に排出する。そのスタンピードを抑えるために、冒険者達にダンジョン内で討伐をさせ、お宝をお金と引き換えにして、ダンジョンを管理しているという訳だ。
今回、ゴブリンの集落があったということは、政府やギルドが認知していないダンジョンが近くにあると考えられる。そのダンジョンから繁殖の為に出てきたゴブリンを、偶然ベアトリーチェが見つけたのだろうと。
「ダンジョンを潰そうとは考えないの?」
「過去にそうした例がありますが、ダンジョンコアが生きている限りまた再生してしまうのですよ」
ダンジョンコアは絶えずダンジョン内を移動していて、行方を探ることも壊す事も容易ではないらしい。
「スタンピードさえ管理できれば、その地域も冒険者も潤う事になりますから、敢えて壊さない道を選んだのだと思います」
ギルマスは、ベアトリーチェにゴブリンの討伐の他に、集落殲滅の報酬とポイントを付与する約束をした。
その日、政府と冒険者ギルドが新ダンジョン捜索隊を募る発表をしたが、未だFランクの二人は参加資格が無かった。
帰宅したディアナは、その日あったことを侯爵に報告し、一旦自室に戻った。着替えをすませ、商会本部と繋ぐ通路を開くことにした。
「本部の3つある小会議室の1つを通路として使用したい」
との事だったので、侯爵を連れて転移しながら、本部小会議室と、これまでに行った事がある6支部を繋いだ。通路はひとつ。行きたい支部を口にだせば、そこに繋がる様にした。
「残りは、もうちょっとかかりそう」
「学園は、休学してもいいぞ」
「え?」
「たった5年しか自由がないのに、そのうちあと2年は学校だなんて、あんまり意味が無いように思うんだ」
「ん、考えとく…」




