第46話 陛下からの餞別
「くくっ…アイアンメイデンとは、また凄い名前を…」
「二人で登城しろ」との命で王城に向かう道すがら、宰相が笑い出した。
「ベアの名付けは、おかしいと思うの…」
「いいじゃない、鉄の處女。色んな意味で、これ程ピッタリのものは無いと思うわ」
「宰相様、ホストAIだって、ホストクラブ『●』から採った名前なんですよ。酷いと思いません?」
「あはは!老舗中の老舗ですからね」
「え?クレイトス、話の意味わかるの?」
ディアナは本人から聞いていたが、ベアトリーチェにはまだ話してなかったか。宰相クレイトスは前世の記憶を持たない転生者だが、言葉や事柄の理解度からおそらく前世は日本人だったと推測している。と云う説明をした。
「そうなんですのね。なんだか、親近感が湧いてきましたわ」
「それは、光栄にございます」
宰相に連れられ、王城の中のいくつかの門と扉をくぐり抜け、地下に降りた先に十の人影があった。全員頭に布を巻いたほっかむりスタイルだ。
「おっ、来たか」
「へ、陛下!?いったい、何をなさって…」
「いやなに、冒険者となるお前達の役に立つ物が無いかと、宝物の整理がてら探してたのだ」
「色々あるわよ、どれがいい?」
「王妃様まで!?」
どれがいいと言われましても…と思いつつ様子を眺めてみると、鑑定スキル持ち4人に記録係が4人。鑑定したアイテムを種類別にアルファベットと数字の組み合わせで管理、アイテムに札を付けると云う作業も手際がいい。どうやら、国王と王妃が荷を漁る役目らしい。
「あら、これ素敵なネックレス」
王妃が手にした虹色の光を放つ乳白色の石はおそらくオパールだと思われ、「即死級魔法無効化」のスキルが付いていた。
「ぶほっ」
「どうしたのディアナ?急に咽たりして」
「そのペンダントは陛下こそ身につけるべきかと…」
「何がついておる?」
「即死級魔法無効化です」
しばらく、沈黙が続いた。
「わ、私はアクセサリーの類は好まないのでな…ディアナから貰った結界の魔石で充分だ」
言われれば、陛下は普段から装飾品を身に着けて無い。最近、ディアナが贈った結界の魔石を指輪に加工するために、職人を王城に呼んだと聞いた。
「う〜ん…」
王妃が手にしたペンダントを見ながら、ベアトリーチェが首を傾げた。
「ベア?」
「私、アレに似た石を持ってるんだけど、黒色なんだよね。あの白いのは虹色の光が外に向かってるじゃない?でも、私が持ってるのは虹色の光が内側に向かってるの」
「それ、ブラックオパールじゃない?鑑定してみた?」
「ううん。オクタヴィア家に行くときにメラニアお姉様から頂いた縫いぐるみのお腹に入ってたの。最近、気付いたのよね。帰ったら、鑑定してみるわ」
「うわっ、何これ?汚い布」
王妃が蓋を開けた箱の中から迷彩柄が見えた。
「!?」
ディアナとベアトリーチェは駆け寄った。迷彩柄の上下の服に安全靴が入っていた。
「これよ、これ!コレが欲しかったのよ~!」
ベアトリーチェは叫んだ。ディアナは先を越された悔しさで「あ〜」と、地団駄を踏む。
「そんな汚い服がいいの?」
「この色と柄は、森や洞窟なんかだと目眩ましになるんですよ」
宰相が答える側で、いきなりズボンを履きだすベアトリーチェ。
「サイズもピッタリ!」
「はしたない!」
国王は、目を覆った。ディアナは安全靴のサイズを確認した。
「24.5cm」
「ますますピッタリじゃない!ディアナも似た様なサイズでしょ?ほら、クリーンかけて、コピーで増やして!!」
ベアトリーチェの勢いに負け、言う通りに浄化し、コピーで4着と4足ずつ増やした。




