第43話 レベッカ・バートン2
侯爵とディアナがグラディウス邸に戻ってしばらくすると、宰相のクレイトスと学園長からの来訪を受けた。
「レベッカ・バートンの事ですが、教育庁並びに学園長と話し合った結果、退学処分となりました」
「え?そんな…だって光魔法と回復魔法を持ち合わせた『聖女候補』の称号持ちなのに…」
ディアナは、まだレベッカを聖女にする事を諦めてはいなかった。
「私達もそこに期待しておりました。ですが、王族にあれ程嫌われた上に素行も悪く、度々問題を起こされては学園には置いておけないのです」
「そんなに酷いのか?」
最近のレベッカの様子を話すと「あの真面目なバートン男爵の娘とは思えん」と、侯爵は呆れた様子を見せた。
また、あの鑑定具のデモンストレーションを行った日も、王城で問題行動があったらしく、女官や近衛兵から報告があがっていたという。
それがあったからこその、デビュタントでの入場拒否だったのか…と、ディアナは腑に落ちた。しかも、その場で暴れたのなら、尚更のことだ。
「本人の『私は聖女よ』を体現して貰う為に、教会に移籍してもらう事になります」
「でも、彼女は『聖女』自体を勘違いしてます」
「だからですよ。回復魔法が使えるなら、他の治癒師達と同じ扱いです。しかも周囲の治癒師達との力の差は歴然。そこで、やる気を起こしてくれれば…と、思うのですが…」
ディアナは心残りを感じるがあれ程拒絶されたら、もうどうしようもなかった。
「どうして、どうしてディアナばかりが!?」
ディアナに連れられて登城したレベッカだったが、いきなり国王に「顔を見たくない」と言われた挙げ句、ゼノン殿下からも「信用できない」と言われ、ショックを受けた。
確かに騒ぎを起こしたのは自分だけれども、ゼノン殿下は「罪には問わない」と言ってくれたじゃない?
あれで、チャラになったんじゃないの?
おまけに、全然レベルが上がってないステータスを比較対象にされて、凄く恥ずかしい思いをさせられた。
それに何?あの鑑定具。
前世にある物を作っただけじゃない!
ちょっと、いい家に生まれただけじゃない!
なのに、あんなにいい気になって、ムカつく!
ディアナが私の立ち位置を奪ったんだ!
私が嫌われるように仕向けたんだ!
全部、ディアナのせいよ!
レベッカは目の前の鏡に、そばにあった花瓶を投げつけた。
ガシャーン!と云う音と共に鏡は粉々に砕け散り、レベッカの頬に一筋の傷を作った。
「バートン令嬢!何かありましたか?」
ドアをドンドンと叩く音と、女官や近衛兵の呼びかける声が聞こえた。
「ヒール」
レベッカは頬の傷を魔法で治し、トイレから通路に出るドアの鍵をカチャリとあけた。
「ごめんなさい、躓いて花瓶を倒してしまい、鏡まで割ってしまいました」
「レベッカ様、危のうございますのでこちらへ。片付けは私共でやりますので」
レベッカは近衛兵に案内され元の小会議室に戻った。
しかしその後、この事はレベッカのディアナに対する暴言を含めて、女官や近衛兵から宰相に報告がなされたのである。
宰相のグラディウス邸訪問の翌日、レベッカは学園に来なかった。同じクラスの生徒の話では、今朝早く寮を引き払ったという。そして、教師の口からレベッカが「退学処分となった」と告げられた。
「昨晩、義父様から聞いたわ。私達が知らない所でも、色々やらかしてたみたいね?」
「らしいね、びっくりだよ」
「まだ、一緒に冒険しようとか思ってる?」
「思ってるが半分。面倒だから関わりたくないが半分かな?…」




