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第42話 ミスリル

 ディアナとベアトリーチェは学園の制服のまま、侯爵に付いて歩き、資料を見ながら現物を確認した。


 「ここには、上級品、量販品、下級品が並べて置いてある。どれが上級品かわかるか?あ、鑑定スキルは使うなよ?」


 目の前にあるのは、3枚の同じ大きさ同じ絵柄の皿だった。3枚ともやや厚みが違っていた。そして、高台がガタついているのが1枚、絵柄に濃淡がある物が1枚。

 ディアナは、薄く高台が安定した絵柄に濃淡がある物を選んだ。


 「なぜそれを選んだ?」

 「厚みの薄い器は貴族に好まれやすい。また、高台が安定していることからも、丁寧に作られている事がわかります。絵柄の濃淡で、手描きされたものかと…」

 「正解だ」


 あとの2枚は、版画と同じ要領で絵柄をプリントした廉価版で、高台がガタついている方は、粗悪な模倣品と言うことだった。


 「値段を付けてみろ」


 上級品は絵柄が手描きと云う付加価値をつけて、金貨1枚。

 量販品は平民がちょっと見目良いモノをの気分で、銀貨1枚

 下級品は、売る価値も無いかな?位で答えた。


 「いい線いってるな。量販品は銅貨5枚だ。ちなみに…」


 侯爵は、下級品を手に取りゴミ箱に投げ入れた。


 「量販品が安すぎませんか?」

 「卸値だからな。店頭に並ぶ時は、この倍近い値段になる」

 「あ、運送費や保管費、人件費に利益も出さなきゃだし、そうなっちゃうか~」

 「そうだ。上級品は、一点物であると言う付加価値がついて、卸値は金貨2枚」

 「うわっ…割れ物なのに…」


 それから更に、侯爵はあるものを出してきた。

 それは、青白く光る鉱石2つと1本の剣だった。


 「言わなくても、もうわかるだろう?」


 掘り出されたままのミスリル鉱石、精錬後のミスリルの塊、そしてミスリルの剣。


 「ミスリル自体が貴重な鉱石だ。今ここにある鉱石の重量約1.5kg。これから不純物を取り除く作業をし、この塊にしたときは1.3kg程になる。この塊から熱を加えながら錬成された剣は1.0〜1.1kgになる。精錬後のミスリルの塊の相場が1kg金貨2千枚。元値と剣の値段の想像が出来るか?」


 ディアナとベアトリーチェは、アルミニウムを作った過程を思い出して、ハッ!とした。鉱石を洗浄し、不純物を取り除いた。電気分解で物質を変化させ、アルミニウムの塊を作った。そして工作機械に掛け、鑑定具の外殻を作った。そこに至る迄の過程と関わった人達を思い出す。


 「元値が金貨1500枚、剣は金貨4000枚だ。何の機能も付いていない、ただのミスリルの剣だがな」


 ディアナはラルフの装備屋で手に入れた剣を「安く手に入れられてラッキー♡」なんて思った自分を恥じた。


 「私、ラルフさんの所に行ってくる!」


 ディアナはベアトリーチェを残し、走り出した。装備屋に駆け込み、ラルフにミスリルの剣の事を話すと笑いながら返事が返ってきた。


 「俺は先行投資のつもりだったんだがよ、今朝、侯爵閣下がやって来てな『娘の為にならん!』って、金貨を5千枚置いて行ったよ」

 「ラルフさん、本当にごめんなさい」

 「あはは、いい親父さんだなぁ」

 

 グラディウス商会に戻ったディアナは、侯爵に「二度と相場を崩す様な買い物はしない」と誓い、その日の買い取りにずっと付いて回った。

 南西の国から入ってきた色柄が美しいタイル、そこから更に東の国で最近商品化された金色に輝く絹糸、どれも美しいものだった。とりわけ目を惹いたのは、ルーキウス王国と高山を挟んで陸続きの国ベネッツェから持ち込まれたグラスだった。


 「ヴェネツィアングラス…?」


 ベアトリーチェが、そう言った事でベネッツェから入ってくるガラス商品に『ヴェネツィアン・グラス』と名が付けられた。

 そしてその日、二人の鑑定スキルに隠れスキル『相場』の項目が加わった。

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