第41話 レベッカ・バートン1
「そもそもあの娘、あれから何か言ってきた?」
「いや、全く」
「ディアナに助けられたのに、そのお礼も謝罪も無いわ。おまけに『自分は聖女なのだから』と、授業や訓練も拒否してるらしいわよ」
レベッカに関する噂は、ディアナの耳にも入っていた。それが、どれも気持ちのいい話ではなく、レベッカが周囲から浮いてしまうのも仕方がないかな?と思うような話ばかりなのだ。
「私、ちょっと話してみるよ」
ディアナは、隣のクラスにレベッカを訪ねた。
「ねぇレベッカ、冒険者登録の前に装備品を揃えたいんだけど、どんなのがいい?」
「…いらない。冒険者なんかになる気ないし、私は聖女になるんだから」
「あのね、レベッカ…ここはあなたが思っているような乙女ゲーの世界とは違うのよ?」
「わからないじゃない。ひょっとしたら、何か特別な魔法が使えるようになるかも知れないじゃない?」
「何の努力も無しに得られる力では無いと思うのだけど…」
「うるさい!」
レベッカはディアナを押しのけ教室から出て行ってしまい、全く話にならなかった。周囲の生徒からも「諦めた方がいい」と言われ、ディアナは後を追うのをやめた。
自分の教室に戻るとベアトリーチェが待っていた。
「どうだった?」
「だめね。まるで話にならない。あの娘、前より酷くなってない?」
「鑑定具のデモンストレーションの時は、まだ普通だったと思うけど…」
そこにマリナが話に加わってきた。
「デビュタントかなぁ?」
「デビュタントで何かあった?」
「入場を断られたみたいなんです」
「は?」
その日、介添役として学園から男女合わせて20人程の学生がアルバイトで会場に来ていた。マリナはその一人で、たまたま順番が回ってきた相手がレベッカだったと言う。レベッカは兄のルカをエスコート役に来場したが、近衛兵団が行う招待状チェックの際に入場を断られたのだと。
「その時に、彼女らしいというか、何と言うか…」
「また、騒ぎ立てたのね?」
「ええ…」
押し問答している内に宰相が騒ぎを聞いてかけつけ「王命により、王族主催行事の出入りを一切禁ず」とレベッカに言い放ったらしい。
「知らなかった…そんな事になってたなんて」
「それだけじゃないんですよ?」
どうやら彼女は、「ディアナ様に嫌がらせをされている」と触れ回っているのだとか。
「最低だわ!あんなに陛下とお兄様を怒らせておいて、本当ならば追放されてもおかしくないところを、ディアナに救われたのに!」
ディアナは、レベッカからよく思われていない事には気づいていた。だが、まさかそこまで拗らせているとは思って無かった。
「しばらく、放っておくかな…」
「ずっと、放っといていいですわよ?」
何にしても、皆の前で「彼女を聖女にして返す」と宣言してしまったのだから、関係者には現況を説明しなければならないだろうと判断し、学園長室に向かった。
「学園長、レベッカ・バートンの事でお話が…」
「彼女が、また何か問題を起こしましたか?」
「いえ、一緒に冒険者活動をして『聖女にしてお返しする』と言っておりましたが、彼女に頑なに拒否されてしまい、ちょっと難しくなって来ました」
「彼女の問題行動も話題になってまして、このままだと退学と云うところ迄話が進んでるんですよ」
「そうでしたか…」
「この後、そのことで宰相様と会う約束になっているのですが、一緒に行きますか?」
「いえ、私は用がありまして早退届けを出していますので…」
その後、ディアナはベアトリーチェを伴って帰宅した。




