第38話 はじめてのおつかい3
「女だと〜!もう嫌なんだよ!年頃の女の子が、冒険者になって傷だらけになるとか、見てらんねえんだよ!!」
奥からドスドスと足音を立てながらやって来たのは、強面でたっぷりの髭で顔を覆われた、紛うことなきドワーフだった。
「ラルフさん、こちらベアトリーチェ様、そしてこちらがディアナ様です。お二人共、武器・防具をお求めです」
「ご紹介に与りました、ベアトリーチェ・オブ・オクタヴィアです」
「はじめまして、ディアナ・グラディウスです」
二人は、丁寧に礼をとった。
「その名前、もしかしてアレか?新しい鑑定の魔道具を作ったって言う…」
「あぁ、ご存知でしたか?そのお二人でございます。では、ラルフさん女将さん、お二人のことをよろしくお願いします」
アルドは二人を託し、店を出て行った。
「あの鑑定具を見させてもらったが、アレは凄いな」
「ありがとうございます」
「どん位かかった?」
「10年かかりました。ホント苦労しました。失敗に失敗を重ねて、途中で宮島鉄工所の存在を知り…」
「何?宮島鉄工所だと!まだあるのか?」
「ご存知ですか?」
「あぁ、70年ほど前に修行させてもらってた」
ラルフが鍛冶修行でルーキウス王国を訪れた際に出会い、宮島鉄工所で5年程働いた。宮島さんの最期を看取って、宮島鉄工所から離れたらしい。
「言葉は不自由だったが、仕事に真摯に向き合う姿に感銘を受けてな。この人と一緒に仕事ができて良かった、と思わせてくれる人だったよ。そうか、工場はまだ稼働してたのか」
「今度、一緒に行きませんか?」
「おうよ!なんとか都合つけて行くよ」
王都の工房と繋がってるから、今からでも行けるんだけどな。と、思いつつ「今は、装備優先」だ。
「ラルフさん、私達来週にも冒険者登録しようと思ってるんです」
「あぁ、装備の事だな」
二人はステータスボードを開示させた。
「す、すごい数字だな…おっ、こっちのお嬢ちゃんは、完全に攻撃魔法専門だな」
「ええ、でも魔法が使えない場所もあると聞いているので、武器をどうしようかと悩んでまして」
「ウィップなんかどうだ?そのままでも使え、属性魔法を纏わせることも出来るモンがあるぞ」
ラルフは、一本の鞭を扉付きの棚から出してきた。
「ミスリルスパイダーの糸を撚って作ったもんだ。奥の部屋で試し打ち出来るから、やってみるか?」
ラルフに付いて奥の部屋に入る。立てられた案山子に向かって、ベアトリーチェは鞭を振るう。ピシッ!と云う音と共に袈裟斬りしたように真っ二つに切れた。
ウィップを勧めるなんて、SMクラブの女王様だったベアトリーチェの前世が、ラルフには見えてるんじゃないかと疑ってしまう。
「属性魔法を纏ってみろ」
ベアトリーチェは頭の中で、雷の属性を思い浮かべ力を引き出した。ウィップに薄く黄色の膜が現れ、鞭を振るうと壁の当たった部分にだけ焦げができ、鞭全体からビリビリと電力を放った。
「相性はいいようだが、どうだ?」
「えぇ、バッチリですわ」
「じゃあ、次は防具だな。防具は、いくつかある中から選んで、サイズを合わせるぞ」
ベアトリーチェが選んだのは、革鎧と革アンクルブーツの2つだった。
「ローブじゃないんだな?」
「ディアナの結界魔法を封入した魔石を持っているので、動きやすさ重視で考えております。」
ベアトリーチェが掌に乗せた魔石を見せた。ラルフは、魔石を手に取りしげしげと眺めた。
「対物理攻撃・対魔法攻撃100%防御結界です」
「これはまた、凄えもん出してきやがったな」




