第37話 はじめてのおつかい2
「はい、ありがとうございます。銅貨6枚の4個で計銅貨24枚となります」
ディアナは銀貨2枚と銅貨4枚で支払った。店員は代金を受け取ると、手早くラッピングして手渡ししてくれた。
「こんなに安くして、大丈夫なんですか?」
「よく言われます」
その女性は苦笑いした。天然石に少しお金がかかるものの、錬金術スキルで作っているので、対して元手がかかっていないからいいんだと言う。
元は、黒い森を挟んだ隣国サント・アンジェの宝石工房に勤めていたらしい。サント・アンジェは貴族主義の国で階級に厳しい上に、豪奢なものを好む人が多く、特殊な能力を持つ天然石に見向きもしないのだとか。それを寂しく思う彼女にルーキウス王国への移住を勧めたのが、たまたま出会った女性冒険者だったらしい。
「高価なものでなくていい。でもほんのちょっぴり自分のテンションを上げてくれる…そう云うモノを作りたいと思っていた私にぴったりの場所でした。ルーキウス王国は、女性が元気で明るいですね。そんな女性達が輝くのを、ほんの少しですがお手伝いできればと思ってます」
一行は、またの来訪を約束して店を出た。
「アルドさん、いい店をご存知ですのね」
「私が買ったチャームなんだけどさ『邪眼』が絶えず発動してるんだわ…」
「そんな凄い石でも、人気なくて安く買い叩かれたりするんですよね」
鑑定スキル持ちのアルドが初めて「プチ・ビジュー」を訪れた時はビックリしたそうで、家族にも周囲の人にも「アクセサリーを買うなら、あの店!」と言い切っているらしい。
カフェで休憩をとることにした。3人でたっぷり飲める紅茶がポットで銅貨3枚、ハムとチーズにレタスが挟んであるトーストサンドがやはり銅貨3枚。安すぎて逆に心配になる。
「お嬢様方、次は装備のお店に行ってみませんか?」
「アルドさん、帰宅するところだったのでしょう?時間は大丈夫なの?」
「紹介したい店が、実は自宅の隣なのですよ。紹介だけ済ませたら、私はそこでお暇させて下さい。今日は、妻の誕生日でして…」
「あら、そんな大切な日にごめんなさい」
「いえ、大丈夫です。で、その装備の店というのがですね、王都では珍しいドワーフさんのお店なんですよ」
ドワーフ、きたー!!
ディアナの鼻息があまりにも荒く、目の前のアルドの前髪を揺らした。ベアトリーチェは両手でディアナの顔を押さえた。
「人を見て、その人に合うものを選んだり作ってくれるんですが、その反面とても頑固で…ですが、グラディウス商会推薦の最も質実剛健な武器・防具店です」
アルドさんがこれだけ強く推すのだから、間違いは無いだろうと二人は思った。だから、その店に行く事にした。
入口のドアを開けると、カランカランとドアベルが鳴った。
「あら、アルドさん。さっきミートパイが焼き上がったから、後で持って伺うわね」
「はい。お待ちしてますね」
どうやら女将さんらしい小さいおばちゃんは、今日のアルド家のパーティ参加客の一人らしい。ディアナの鼻息が復活しそうな感じがして、ベアトリーチェが脇をコヅいた。
奥の方で何やら声がする。
「今のお前の腕じゃ、これはもったいない!」
「えぇ〜」
「こっちにしとけ。その代わり、腕が上がったら下取りすっからよ」
あぁ、なるほど。これは当たりだ。とディアナは思った。
「ラルフさんは相変わらずですね。今日は、これから冒険者登録をするというお二人を連れて参りました。こちらで装備を揃えさせて頂きたく…」
「こんなに美しいお嬢様方が、冒険者にですか!?」
女将さんの驚く声が店いっぱいに轟いた。




