第31話 鑑定の魔道具7
「あっ?」
空の魔石に炎属性の魔力を注入していたディアナだったが、ついうっかり無属性の魔力が入った魔石に炎属性の魔力を流し込んでしまった。一瞬だが魔石から炎が立ち上がり、すーっと吸い込まれるように炎は消えた。
「今の何?キレイだったけど…」
「あっ!?なんかスキルに変化が…」
空の魔石をベアトリーチェに10個渡し、残りはやってもらいつつ、ディアナはステータスを確認した。
『5:魔石採取・抽出・注入・加工』が加わった。
固有スキル『複写』が錬金術スキルの中に統合され
『1:物体複写 2:コピー印刷』に変わった。
そして、ついに念願の付与スキルを手に入れた。
『1:魔法付与 2:属性付与 3:スキル付与』
「あはは…長かったなぁ…」
ディアナは座り込み、泣き笑いした。もう、脱力して立ち上がることも出来なかった。そこに、炎の魔石を作り終え振替伝票を受け取ったベアトリーチェが手を差し伸べた。
「今日は、もう帰って寝よう」
翌朝、ディアナはクリエ支部に炎の魔石を供出した事を侯爵に報告した。そして、「ギルドに目をつけられない程度で、今後も供出していきたい」と願い出た。理由は至って単純なもので「小遣い稼ぎ」したいのだ。その為に空の魔石を捨てずに貯めて置いて欲しいとも頼んだ。
「わかった。元々、魔石の数は足りてなかったのだ。喜んで買い取らせて貰おう」
学園の食堂でベアトリーチェに、魔石の買い取りの件を話すと「何するにしてもお金は必要だし、それで役に立てるのなら」と賛同してくれた。
「あのさ、鑑定具のことなんだけど」
「ん?」
「ハンディスキャナー型のも作れないかな?」
今作ろうとしている鑑定具は、A4サイズの机上据え置き型だ。鑑定具に乗せられないサイズのアイテム鑑定や、国境での入国審査の人物鑑定に便利じゃないか?とベアトリーチェは言う。
「なるほど。私はあれを考えてたよ、自動改札システム」
「王都なんかの大都市に入る時にいいかも」
どこの国でもそうだが、王都には物も人も集中する。その入口で騎士団が身分証と相違ないかを目視と尋問で判断しているのだが、5列程の長蛇の列が捌けるまでには相当な時間を費やしている。それを改善する為に、身分証となる住民カード・ギルドカードに魔石で作ったICチップを組み込み、自動改札で情報を読み込み鑑定して、相違なければ通過と云う流れを考えていた。「その場に合ったものを選べるように、いくつか試作品を作ってみよう」と云うところで落ち着いた。
そして、試行錯誤を繰り返し1か月後、据え置き型・ハンディスキャナー型・自動改札型の3タイプの試作品が出来上がった。同時に、演算機能とデータ蓄積機能を備えたホストコンピューターもどき「AI」も作製した。
「ホストと言えば『クラブ●』でしょ」
「へっ?いやいや、ベアそれは古いって!」
「『愛』は基本中の基本です。私は譲りませんよ〜。大体、昨今のホストクラブは…」
と、ホストクラブのウンチクを語りだしたベアトリーチェに苦笑いした。だが、その内容には激しく同意できる部分が多かったので、ディアナが時々相槌をうちながら最後まで聞いた結果「AI」と名付けた事は、ここだけの話だ。
宮島鉄工所のアルミニウム工場の場を借りて、新しい鑑定具の試運転をすることにした。
その日、王国内にあるグラディウス商会の支部から支部長全員が試運転見学に訪れた。
そして、試運転開始直後から驚愕の悲鳴や感嘆の声が相次いで巻き起こり、大絶賛の内に試運転は終了した。




