第28話 鑑定の魔道具4
とりあえず、目の前にあるアイテム用の鑑定具に魔力を少し流して起動させてみた。軽くヴンという音をさせ、ウィンドウが開いた。ベアトリーチェはインベントリから魔石を2個取りだし、鑑定具の上に乗せた。
『ベアトリーチェの魔力を流し込んだ魔石。無属性』
『ベアトリーチェの魔力を流し込んだ魔石。雷属性Lv.@*?』
魔力の流れも悪くない。鑑定の結果に若干の文字化けかあったり、詳細な鑑定が出来ていないのは、作製時の宮島の鑑定レベルが低かったせいだろう。
「これ、鑑定のスキルを付与した魔石を入れ替えれば、いけるんじゃない?」
「うん。あとは、付け足したい機能を引き出す回路図を足すだけでなんとかなりそう」
二人は顔を見合わせた。
「じゃあさ、『付与』の事が判明する迄の間に外殻だけでも、作っちゃわない?」
「いやいや、無理だから!アルミニウムの材料って、ボーキサイトだっけ?ルーキウスでは採れないし!」
「でも、宮島さん作ってるわよ?」
「錬金術でゴリ押ししたに決まってる!」
「ディアナもやればいいじゃない」
「うぐぐ…」
そこに、辺境の支部から鑑定具を持ってきた職人見習いの少年エルが割って入った。
「物ならあります!材料も工場も、作り上げたアルミニウム板も!」
エルの話によると、辺境の街クリエの郊外に宮島が建てた工場があるらしく、グラディウス商会の下請けとして金属精製や加工を請け負っていたのだという。宮島が亡くなったあとグラディウス商会の傘下に組み込まれ、現在も一部を残し稼働中だそうだ。
「用途が解からず劇薬も多くある為、アルミニウムの生成工場はほぼ手付かずの状態で残ってます」
放置されているアルミニウム工場が気がかりで、週に一度は掃除の為に工場内に立ち入っていたというエルにベアトリーチェは抱きついた。
「でかしたわ!ディアナ、転移魔法!」
こんなにはしゃぐベアトリーチェの姿は、なかなかお目にかかれないなぁ…と思いながらディアナは二人に手を添え、もう片方の手で工房長スーグの腕を掴んだ。
「転移!」
「「「うわっ!?」」」
職人見習いエルと工房長スーグ、そしてグラディウス商会クリエ支部の支部長ラド・コーエンの声が重なった。ディアナが頭に思い浮かべたのは、支部長室だったようだ。
「ディアナお嬢様!?え、エルにスーグ殿まで?も、もしかしてそちらのお嬢様は…」
「ベアトリーチェ・オブ・オクタヴィアです。突然、お邪魔して申し訳ありません」
ベアトリーチェは、美しい笑みを浮かべつつ礼をとった。相手が大公の娘だとわかると平伏しようとしたエルとコーエンだが、ディアナがそれを止めた。「ベアトリーチェは、そういうの嫌がるから」と。
そして、取り急ぎアルミニウムを入手したい旨とその理由を説明し、5人で馬車に乗り郊外の工場に向かった。
「それはそうと、お嬢様には王都からの外出禁止令が出てませんでしたか?」
「あ〜今も継続中。だから、転移魔法使って来たんじゃない」
「いきなり目の前に現れたら、こっちの心臓が止まりますよ!せめて、ドアから入るようにしてください!」
エルとスーグも、うんうんと激しく同意した。
馬車で20分程かかっただろうか、「宮島鐵工所」と日本語で彫られた木の看板を掲げた工場に辿り着いた。
「看板は、ずっとこのままで?」
「えぇ、この街とグラディウス商会にとって、大きな功績があった所ですので大切にしたいと前の侯爵様が…」
ディアナとベアトリーチェは、その看板の文字を指でなぞる。懐かしくて、せつなくて、涙が出そうになるのをぐっと堪えた。




