第25話 鑑定の魔道具1
その時突然、ガガガ、ピー!と音がなり、一斉に皆の目が魔道師団長の方に向けられた。
「す、すみません。いじってたら、何やら…」
「あぁ、ステータスカードが排出されたのですね」
その場にいる者全員の前に、鑑定具を配った。右手を鑑定具の上に乗せるとステータスボードが現れる。そして、開示させたまま鑑定具についた『印刷』のボタンを押すと、開示したステータスがカード状になって排出された。
「ステータスが書面化されたのか!?」
「はい。他の機能も説明致します」
ステータスボードの開示、ステータス情報のカード化、アイテム鑑定、アイテム鑑定証の発行、犯罪の有無などの個人情報の閲覧と開示、現在稼働出来る機能はこれだけである。
だが、現在行っている冒険者登録や商人登録、人の目でなされているアイテム鑑定、入国審査や管理が全てこの鑑定具一台で済んでしまう。
ルーキウス王国では現在、役所と冒険者・商業ギルドを同じ建物内に集約し、割り振られた住民番号で一括管理しようと試みている。そのために、鑑定具から排出されるカードのサイズは、ギルドカードと同じものにした。
いずれは出生時に登録することで、戸籍管理から銀行口座開設、冒険者の報酬支払いや徴税など、丸々全てを鑑定の魔道具と1枚のカードで済ませられるように鑑定具を開発して行くつもりであると、ディアナは語った。
「今ある機能だけでも凄い事なのに、それからまた発展させるというのか…」
「私が生きている内には無理かも知れませんが、いずれ同じ様に考える者が現れます。それまでに、下地作りだけでもやっておきたいのです」
実は、既に銀行口座システムも組み込んでいるが、敢えて口にしなかった。理由は、両ギルド間の連携が完全には確立されてないからだ。
そもそも、あれ程高機能な鑑定具を作るつもりはなかったのだ。全て、失敗を繰り返した結果に出来上がったものだ。
固有スキル『鑑定』を魔石に流し込もうとして失敗し、同じく固有スキルの『複写』で『鑑定』を魔石にコピーしようとして失敗を繰り返した。
鑑定具を作ろうと思い立った6歳から2年近くの月日を費やした挙げ句、『鑑定』のスキルだけがレベルアップする結果となった。
鑑定具の製作に行き詰まったディアナは、グラディウス商会の魔道具製作の工房を訪ねた。そこで職人達の作業工程を見学しながら、あれは何?これは何?と次々と質問した。傍からみれば「なぜなぜ期」の子供が手当たり次第に「なんで?どうして?」と質問しているだけに見えたかも知れない。中には、苦笑いするだけで質問に答えない者もいた。
ふと、あるものがディアナの目に入った。
「これは…電子回路図?」
ディアナの前世の父親は、大手家電メーカーの開発設計部門の技師だった。ある日、自宅の大掃除中に古い冷蔵庫の取扱い説明書が出てきた。その分厚い取説を父親がおもむろに開き「昔は、こんなだったんだよなぁ」と懐かしんでいた。「電気回路図から電子回路図、一部の基盤はICチップに変わり、家電品は徐々に小型化薄型化していき、設計図が取説から消えた。今や取扱い説明書すらPDFファイルでダウンロードだもんなぁ」とごちた。そして図面折りされた設計図を開き、うんうんと頷きながら誰にとも無く説明を始めた父親を笑いながら見ていた。
「おや、お嬢様は『魔導回路図』が、お解りですか?」
後ろから声がかかった。振り返ると、そこにはグラディウス侯爵と魔道具工房長のスーグが立っていた。
「ディアナ!置き手紙1枚で家から抜け出すとは、何かあったらどうするんだ!」
「ごめんなさい。」
「で、どうして工房に?」
「鑑定の魔道具を作ろうと2年位前から取り組んでるんだけど、どうしても上手くいかなくて、何かヒントになるものがないかと…」
「か、鑑定の魔道具だと!?」




