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第20話 ……かも?

 「ディアナよ、とりあえず5年でいいか?」

 「は?」

 「ゼノンの遊学が3年、戻ってから執務の一部を任せるつもりだ。慣れるまで2年位か。都合5年間の猶予を与える。あとは、ゼノン次第だ」

 「ありがとうございます」


 ディアナは、とりあえず5年の自由を手に入れた。


 半月後のデビュタントが、婚約披露となる事を告げられた。普通ならば、この後に妃教育が始まるのだろうが、ディアナに至っては5歳から教育が始まっていたので、免除された。

 1か月後には、殿下の卒業と遊学を控えている。

 それまでにやっておかなければならない事を、頭の中で整理し始めたディアナ。


 「ディアナ…俺でいいのか?」


 突然、ゼノンがそんな事をいいだした。何を今更、と思わなくも無いが、ディアナから自由を奪うきっかけを作った事や、ディアナの規格外なステータスが、ゼノンに負い目や劣等感を抱かせている事をベアトリーチェは知っていた。


 「何をおっしゃいますか!殿下以外に、こんな破天荒な娘をもらってくれる人なんていませんよ!」


 グラディウス侯爵の叫びに、笑いを持っていかれた。ディアナは、鼻の穴を拡げて憤慨した様子を見せつつ答えた。


 「なんか釈然としませんが、そう云う事です」


 曖昧な言い方をしたディアナの頭をベアトリーチェがバコン!と叩いた。


 「はっきり言いなさい、はっきり!」


 周囲の者がニヤニヤし始めた。固唾を飲んで、ディアナの答えを待つゼノン。


 「す、す、す…き……かも?」


 ダァー!とツッコミを入れたくなるような返答だったが、色恋に無関心なディアナにしてはよく頑張った方だと、ベアトリーチェは思った。


 「お兄様、これから大変ですわね。頑張って♪」


 ベアトリーチェの激励にゼノンは苦笑いした。


 ディアナは思う。実際のところどうなのだ?と問われたら「嫌いじゃない」としか答えようがない。ゼノンと会うのは、いつもベアトリーチェか国王絡みだった。そして、ゼノンから気持ちに関する部分を聞いた事が無いのも事実だった。特に「ディアナと結婚する者が王太子、もしくは王となる可能性が高い」事が判明してからは、ゼノンの真意も自分自身の真意も判らなくなってしまっていた。答えが出ない事に拘り続ける暇は、ディアナには無かった。だから、放置した。そのツケが回ってきたのだと諦めた。


 一方、ゼノンも考えていた。ディアナを不自由にした責任は自分にあり、廃嫡されてでもディアナの自由を取り戻そうとした。だが、それが負い目からだけなのか、はたまた愛情からなのか、自分でも答えを出せないでいた。ここで、都合5年間の猶予を与えられたことは、お互いにとって関係を見直す大切な時間なのかも?と感じ始めていた。


 グラディウス侯爵親子が王都のグラディウス邸に戻ったのは、夜遅くなってからの事だった。

 帰宅すると家令が玄関前で待ち受けていた。


 「おかえりなさいませ、旦那様お嬢様。帰宅早々申し訳ありませんが、応接間にてバートン男爵とお嬢様のレベッカ様がお待ちでございます」

 「学園祭で騒ぎを起こした件か?」

 「えぇ、どうしても謝罪したいと、お昼過ぎからずっと…」


 グラディウス侯爵とディアナは、顔を見合わせ苦笑いした。


 「お前に利用されただけなのになぁ」

 「こっちが謝らなきゃですよね〜」


応接間のドアを開けると、やや細身だが精悍な顔立ちのバートン男爵と目が合った。


 「侯爵様、お嬢様、この度は娘がとんでも無い事をしでかしまして、申し訳ございません!」


 ズザザー!と、見事なまでのスライディング土下座を披露した。


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