第18話 王の目、王の耳
その後、街の警備兵に囲まれ、王城まで連行された。当然、王城では騒ぎになっており、近衛兵団と魔道師団が国王捜索に乗り出そうとしているところだった。その中に、第2王子シメオンとベアトリーチェの姿もあった。
「陛下!なんでこんな事をなさったんですか!?陛下の御身に何かあったらと、生きた心地がありませんでしたよ!」
「まぁ、そう言うな。楽しかったんだ。報告で市井を聞くことはあっても、やはり直に見るのとはまた随分と違っててな。これから、度々視察に訪れようと思う。」
おっ、陛下がレベルアップしたらしい。ディアナは、頭の中で「テレレレッテッテッテー」とファンファーレを鳴らし、ニヤニヤしていた。国王に説教していたオクタヴィア大公がディアナを振り返る。
「ディ〜ア〜ナ〜!!」
今度は、ディアナへの説教が始まった。その最中、ベアトリーチェと目があった。ベアトリーチェが口をパクパクさせ、ディアナに「バーカ、バーカ」と言ってきた。
再び、国王の執務室に集められた面々は、その机の上に飾られたマーガレットの花を見て、顔をほころばせる。そこにオクタヴィア大公とベアトリーチェ、シメオンも加わった。
「ディアナの願いを聞き入れようと思う」
「では、婚約破棄の手続きを…」
「ちょっと、待ってください」
ディアナは、国王と宰相を引き止めた。
「婚約は継続で、殿下が遊学の間だけ自由をいただければ結構です」
「いいのか?」
「はい。私は、自由が欲しかっただけ」
「自由になって、何がしたい?」
「冒険者になりたいです!」
この世界に転生した時からの夢であった『冒険者』。だが、国王の執務を手伝う内に、新たな理由が生まれた。それは、やはり現場を直接見て肌で感じて、その場所にあった施政を行うべきだと。今日初めて市井に出た国王は、その事に賛同した。
そして、最大の理由は「近隣諸国の動向を探ること」である。特に小競り合いが続いている小国群は、領土の奪い合いで日毎に国境線が変化していると言っても過言ではない。同盟を組んでいる小国がある日別の国になることもあれば、逆に手の平を返される事があるかも知れない。
現国王は、国力増強の為の内政に力を入れているが、それとは別に防衛の為にも近隣諸国の内情を深く知るべきだとディアナは主張した。
「冒険者は、基本的にどこの国にも出入りが自由です。陛下、どうぞ私を『王の目、王の耳』としてお使いください」
一同、ハッとした。宰相は「なんてことを考えるんだ、このディアナと云う少女は」と思い、身が震えた。
「年頃の女の子が、危険すぎると」ミレーネ王妃は反対した。
だが、ディアナの意思は固まっていた。
「護衛をつけよう」
国王は言ったが、ディアナは笑って辞退した。
「護衛を護衛する未来しか見えませんから」
その言葉に、周囲は納得した。おそらく、並の相手ではディアナに傷ひとつつけられないだろう。それこそ、ドラゴンでも連れて来ない限り無理だろうことは、誰の目から見ても明らかだ。
「私が、付き添いますわ」
ベアトリーチェが声をあげた。
「ベアトリーチェ、お前がか?」
「いつか、ディアナがそう言い出すだろう事は予想してました。その時に協力できるよう、訓練を重ねてきましたもの。」
「足手まといにはならぬと?」
「はい」
ベアトリーチェは約10年ぶりに、父親を正面切って見つめた。
「ベアトリーチェの成長も中々のもんですよ?まるで、賢者の様に…」
「あぁっ!!」
ディアナの話の途中でベアトリーチェが叫びだした。
「ちょっとディアナ、あんた何てことすんのよ!!」
ベアトリーチェは、ディアナの胸ぐらをつかんだ。
「なんだ?何があったのだ?」
慌てる国王に、ベアトリーチェが首から上だけを向け答えた。
「私のステータスに、称号がつきました。たった今。」




