第17話 ガイウス・オブ・ルーキウス 3
「は!?お前、何をする気だ?」
ゼノンがディアナの肩をつかむ。
「大丈夫。害意有るものからの攻撃を防ぐ結界を張ります」
ディアナの手から発せられた光がパァっと広がり、全員の体に薄い膜を作って消えた。
「転移!」
ディアナが叫ぶと、もうそこは王城の外、王都中心部の噴水広場の前だった。
「陛下、どこに行きます?」
「いやいや、ちょっと待てディアナ!これは、さすがにヤバいだろう?護衛も無しにいきなり」
正論だが、今しかチャンスはない。そう思ったディアナは、ゼノンに背を向け踵を返す。
「いいんじゃないですか?」
そう言ったのは、宰相だった。
「こんな機会滅多にありませんし、それに結界張ってるんでしょ?何かあれば、ディアナ嬢が守ってくれますよ」
「そうそう。その辺の男の人じゃ、私に勝てないって」
「そりゃ、あのステータス見りゃ判るけどさぁ…」
ゼノン達のやり取りを他所に、国王は目の前の花屋に近づいた。
「いらっしゃいませ〜大切な方への贈り物に、いかがですか〜」
売り子は、まだ10歳位の少女だった。
「まだ幼い子供なのに働いているのか?」
「ううん。お母さんのお店なんですけど、お昼ごはんの間だけ交代で私が店に立ってます」
「そうか、安心した。」
「もしかして、王様ですか?」
そう尋ねられて国王は戸惑った。横に並んでいたミレーネ王妃が、しゃがみ込んで子供の目線に合わせて言った。
「しー。内緒ね」
「はい」
二人でくすくす笑いあっている。「あ、そうだ」と言うと、その女の子は手早く白いマーガレットでブーケを作った。
「王様にプレゼントです」
「もらっていいのか?」
「はい、どうぞ」
「売り物だろう?」
「両親がいつも言ってるんです。皆が笑顔で幸せに暮らせてるのは、王様のおかげだって。」
よくよく話を聞いてみると、少女の両親は小国群の中のある国の出身らしい。ある日隣国から兵がなだれ込み、侵略行為が始まったのだとか。確かに、約10年程前にそう云うことがあった。だから、国王は『初代国王の書』の翻訳を急いだのだ。
その時、少女はまだ母親のお腹の中。戦火を逃れ辿り着いたルーキウス王国の南東部で手厚い保護を受け、出産した後に王都にやってきたのだという。
「王様が保護してくれて、皆が幸せになれるようにしてくれたから、私達は生きて来られたんだって。だから、これはそのお礼です!」
「そうか…ならば有り難く頂戴しよう」
そして、国王は王妃を伴ってしばらく市街地の散歩を楽しんだ。街をパトロール中の騎士団長に見つかるまでは…。
「な、な、何やってんですかー!?」
「「あっ!?」」
言い訳は宰相がするだろうと思い放っておいたが、国王が王妃の手を握り走り出した。
「ミレーネ、逃げるぞ!」
ゼノンは驚き過ぎて固まっていた。ディアナと宰相は、笑いが止まらず涙が出た。
「陛下、逃げ切れますかね?」
「いやぁ、王様装備フルセットですよ?無理でしょう」
グラディウス侯爵と宰相の会話に、違和感を感じた。「王様装備フルセット」って、まさか…?ディアナの視線に気づいた宰相が振り返った。
「私も転生者なんですよ。ただし、前世の記憶が全く無いのです。だから、元がどこの国かはわかりませんが、時々思い浮かぶ言葉からこの世界では無いことは確かです。王妃様の『神の目』で見てもらった事もありますが、漠然としていてよくわかりませんでした」
へぇ、そう云うこともあるんだ…記憶に留めておこう。
「あ、捕まった」
「100メートル位行きましたかねぇ?」
「結構、行ったなぁ…」




