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第16話 ガイウス・オブ・ルーキウス 2

 グラディウス商会が国王から賜った領地は、王国の南西部に位置する広大な土地だった。小国10個程がすっぽり入ってしまうような領地は、広大なだけでほぼ手付かずの状態。当時の商会長シリウス・グラディウスは茫然とした。おまけに、本拠地となる街イオニアは領主邸こそ立派だがそれだけで、インフラ整備も疎かな状態だった。街の至るところで物乞いをする人の姿が見られ、軒を連ねる商店も強奪が行われた形跡が見られた。


 「前領主は、今まで何をやっていたのだ!?」


 シリウスは、商業ギルドと冒険者ギルド・教会関係者を集め尋ねた。そこで聞いた話によると、徴税率7割の内領民に還元されたのは一時的な施しの食糧が配布されるだけであったと。おまけに、国家からの支援で無料のハズの教会での治療費を一律金貨1枚と定め、そのお金も領主の懐に入れていたという。そして極めつけが、ルーキウス王国からの追放を受けた前領主が、近隣の商店から金目の物をごっそり奪って出て行ったと。これを聞いたシリウスは憤慨して、王城に向けて早馬を走らせた。


 「10年、いや5年で領民に人間らしい生活を取り戻します。多少強引な手段を講じることもありましょうが、しばらくの間お目溢し願いたい」


 領地の惨状を説明した上で、23代目にそう訴えた。


 「相わかった。10年後を楽しみにしている」


 商会の資産の7割を投じ街を整え、産業を興し雇用を促進した。次世代の人材を育てながら、未来の選択肢を増やした。

 その中で義務教育と特許制度が生まれた。

 それに伴い、シリウス・グラディウスは叙爵された。

 5年後、街から孤児や浮浪者がいなくなり、ほぼすべての人がなんらかの仕事に就いていた。

 10年後、イオニアをルーキウス王国随一の大都市と言われるまでに発展させ、領地全体が豊かになったグラディウス領が、シリウスを侯爵位に押し上げた。

 その陞爵式の後、第23代国王は病に倒れ齢30の若さでこの世を去った。

 

 23代目が独身で子供もいなかった為、王弟のアレクサンデル大公が24代目の国王となった。

 だが、23代目の功績が大きすぎてプレッシャーとなり、そのストレスのはけ口を飲酒と女に求めた挙げ句、体を壊し寝たきりの状態になった。次の王を立てなければならないのだが、そのとき第一王子はまだ3歳で、執務など到底できるはずもない。そこで、この第一王子を25代目の王として擁立し、王妃マルグレーテが宰相や官僚達と一緒に「現状維持」を目指して執政を行った。25代目が15歳で執務を行うようになった頃に、24代目が逝去。「やっと逝ってくれたか…」と影で囁く者はいても、悲しむ者はいなかった。


 「あぁ言われる様な王にはなりたくない」


 その気持ちが、25代目自身を厳しい人間にした。現宰相のクレイトスが先代宰相から聞いた25代目は「折り目正しく、そつがない」という人物像だった。だが、実際にクレイトスが見た感想は「厳しすぎて、息苦しい感じ」で、好ましいとは言い難かった。

 25代目は26代目となるアンドレアが誕生するやいなや、王太子に冊封した。そして、賢王となるべく施された教育は「国の繁栄と国民の安寧」だけに重きが置かれ、それ以外のものは極力排除された。



 「私は、王城から出たことが無いんだ…。いや、勿論学園には通わせてもらったが、学園は王城の東側と繋がっているだろう?市井に出たと云う感覚が無くてな。だから、隣国に外遊に出られるゼノンが、ちと羨ましい…。官僚からの報告で民の現状を聞くことはあっても、直接見たことも聞いた事も無いのだ…」


 国王が何がしかの変化を望んでいるように見えた。ならば、同情するだけで、終わらせてはいけない。

 ディアナは立ち上がった。


 「行きましょう。街へ!」

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